イベリス
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第四十二話 完成その六
「悪い部分は捨てるの」
「そうしていけばいいのね」
「それも難しいけれどね」
「幼稚でなくして」
「童心を持つことはね」
実際に母は難しい顔で話していた。
「どうしてもね」
「難しいのね」
「けれどね」
それでもというのだ。
「それが出来たら凄いことになるわ」
「親としても」
「童心を持っていたら子供のことがわかって」
「わかるの」
「それで馬鹿にしないの、けれど幼稚だと」
この場合はというと。
「子供のままで子供のことがわからないで」
「子供を馬鹿にするのね」
「そうなるのよ」
「ううん、難しいわね」
咲はここまで聞いて首を傾げさせた、口もへの字になっている。
「どうも」
「そうよ、お母さんも言ってもね」
「わかってない?」
「わかっていても出来てるかは」
このことはというのだ。
「どうかしらね」
「童心を持って幼稚でなくする」
「それはね、脳梗塞になった奥さん捨てたアーチストいたわね」
「あれ最低ね」
咲はまた口をへの字にさせた、眉も顰めている。
「人間として」
「あの人逮捕されたしね」
「昔そうよね」
「それでも支えてくれた奥さんをね」
「ああしたのね」
「昔からああしたことばかりして」
そうしてというのだ。
「周りの人を切り捨てたり厄介ごとから逃げてきたのよ」
「音楽の才能はあっても」
「わかるでしょ」
「幼稚な人ね」
「ああした人こそね」
まさにというのだ。
「幼稚よ」
「心は成長しなかった人ね」
「ええ、お母さんはとっくにあの人に冷めてたけれどね」
「昔はファンだったの」
「グループ組んでいた時はね」
その時はというのだ。
「そうだったわ、けれどね」
「冷めたの」
「次第にね」
「私奥さん捨てた時点で思ったけれど」
「最低ってよね」
「あの人悪い噂多いし」
それでというのだ。
「最初からいい印象なかったけれど」
「あのことでなの」
「大嫌いになったわ」
「そうなのね、まあ嫌って当然よ」
「やっぱりそうよね」
「ああした人はね」
まさにというのだ。
「幼稚っていうの、もう誰からも見捨てられるわ」
「ああした人はね」
「何があっても支えてくれた奥さんが倒れたら捨てるのよ」
「そんな人だと」
「何しても無駄だから」
「才能以前よね」
「才能ってモーツァルト位ないでしょ」
この音楽家程はというのだ。
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