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タイトル案は第一話に記載しています。

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勇者の休息

ーガイネス戦役 対四天王戦ー

「来たか......」

薄明るい黄金色の長髪の女性、ローゼマリー中佐が立ち向かうのは、巨大な集合体、「魔弾」である。

それは蛇行を繰り返し、徐々に速度を上げながら接近してきている。

「お前らを焼き尽くすのに、大袈裟な炎は必要ないぜ」

近距離となった魔弾に向かって、炎を纏った右手を前に出す。

「火炎、縫火花(ヌイヒバナ)ッ!」

そして発現するは炎の鞭。細長く圧縮した炎を自由自在に振り回し、最終的には網状になって魔弾を封じ込めた。

「止めだ、『火鴉(ヒガラス)』。」

横一体に広がった炎は鳥のような形状となって突き進む。
そして、灼熱の鴉は魔弾を貫いた。

「うーん、ちょっとやり過ぎたか?」


(炎魔法を繊細かつ大胆に操るローゼマリー中佐か。あーあ、やってくれたな。)

勇者は遠くからその様子を、苦い顔で眺めていた。


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戦いが終わり、帝都へと帰還する。
軍本部へと戻った僕は、幼少期から使っていた訓練室に入る。
ここは勇者の教育施設であるが、僕の自室としても使用できる。
疲れていたのか、座学をしていた場所の床へと座り込んだ。

「はぁ....」

思わず溜息をつく。
状況はあまり良いとは言えない。
今回、兵の損耗は前回よりも大きくなったが、まだ致命的じゃない。
魔王討伐戦まで残るはあと三戦。その間にもっと戦力を削らなければならない。

「それでも、やるしかないんだ。」

そう自分に言い聞かせて気合を入れる。
戦争から帰ってきたばかりとは言っても手は抜けない。
素早くこの部屋から庭へ出て剣を持つ。
そしてひたすら剣を振り続ける。

僕には前回の経験がある。今は少佐程度の実力しかないが、前回の魔王討伐時点では中佐程の実力はあったと思う。肉体の強さは時間ごと巻き戻っていているが、技術は別だ。前回で培った戦闘経験を上手く生かせれば、より早く成長できるかもしれない。それに、魔法に大切なのはイメージだ。魔法には生成と放出の二つのステップがある。生成は魔法を体から生み出すことで、魔法が発現して最初にできる。
そして放出は、生成した魔法を様々な用途に合わせて放つことだ。この放出の段階でイメージを必要とする。複雑な技を出すには、頭の中でまず思い描く必要があるからだ。そのために、自分で固定したイメージに名前を与え、戦闘時に口に出すことで力を扱いやすくすることもある。

ー感覚を研ぎ澄ませ。もっと深くだ。

深く集中して剣を振り抜く。
前回の最盛期よりも肉体が弱く、上手くイメージ通りの技が使えない。
そんなまどろっこしさを抱えながら素振りを続けていたとき、

「こんなとこで何やってんだ?」

部屋の入り口のあたりから声が聞こえた。
誰かと思い振り向けば、そこにいたのはローゼマリー中佐だった。
(どうしてここに...?まさか僕の画策がバレたのか?まずいな、警戒しないと。)
 
「何って、もちろん特訓さ。人類のために強くなりたいんだよ。」

「へえ、そいつは立派だな。ま、適当に頑張れよ。」

(一応僕の計画には気づいていない?なら、少し探ってみるか。)

「そっちこそ、どうしてこんなところに?」

「そりゃあ、お前を探してたからだよ。」

(どうして僕を探す必要なんてあるんだ?これは良くない事態かもしれない。慎重にいこう。)

「いや、一体なんで僕を探すんだよ。」

「だってお前、面白そうだし。そう、私は君に興味があるんだよ!」

と、僅かに微笑んで言った。

「...そうか。まぁ、見ての通り僕は忙しいんだ。用がないなら立ち去ってくれないか?」

「別に用がないってわけじゃないさ。一言労いをしに来てやったんだよ。お前、こんなところにいるんだし、誰とも会ってないんだろ?」

余計なお世話だな。誰かに同情される謂れはない。

「...別に大したことはしてないよ。」

「じゃ、私はこれで。また会おうぜ。」

そう言って中佐は立ち去ろうとした。

(どうやら疑われてはいないらしいな。なら問題はない。)

「あ、そうそう」

中佐が立ち止まって振り返り、

「期待してるぜ、勇者君」

と、最後に一つ、言い残して去って行った。

悪いな、誰かの期待に応えてやるつもりはないんだよ。



次の大戦まであまり日は残されていない。手を休めるわけにはいかないな。

そうして僕はまた剣を握り直した。





This is a short rest... 
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