イベリス
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第四十一話 〆切を意識してその六
部長の言う通りメリハリはつけていた、授業はしっかりと受けてアルバイトでもそちらに専念した。そこでだった。
速水にだ、咲はこう言われた。
「充実していますね、最近」
「占われました?」
「いえ、お顔を見てです」
そうしてというのだ。
「わかりました」
「そうなんですか」
「人はその現状がお顔や姿勢に出ますので」
「占わなくてもわかるんですか」
「はい、そして」
そのうえでというのだ。
「特に目です」
「目に出るんですか」
「そうです、目が死んでいるといいますね」
速水は咲にこの言葉も出して話した。
「時として」
「あっ、言われますね」
咲もそれはと頷いた。
「漫画や小説でも言われます」
「これはもう完全に心が折れていたり絶望したり」
「そうした時にですか」
「言われるもので」
それでというのだ。
「好調な時はです」
「目が輝いていますか」
「特に何かを成し遂げようとする時は」
そう考えている時はというのだ。
「尚更です」
「そうなんですね、そうしたことは」
咲は愛に言われたことをここで思い出した、そして速水や母もそうしたことを言ったと思い出しながら応えた。
「店長さんもですね」
「以前お話しましたね」
「確か」
「そうですね、そして今の貴女はです」
「目が輝いていますか」
「いい目です、そのされていることをやり遂げて下さい」
咲に微笑んで話した。
「是非」
「そうします、漫画描いていますが」
「完成させますね」
「絶対に、漫画も何でも終わらせてこそですね」
「創作はそうですね、最後まで描くか書くかして」
そうしてこそとだ、速水は答えた。
「その作品は完成しますから」
「だからですね」
「一旦はじめたなら」
それならというのだ。
「完成させるべきです」
「未完では駄目ですね」
「未完の作品を読んでどう思われますか」
速水は咲に問うた。
「その時は」
「残念に思います」
咲はすぐに答えた。
「漫画でも小説でもありますけれど」
「様々な理由で」
「作者さんがお亡くなりになって」
「それが一番残念ですね」
「それで終わるなら」
咲は速水に自分の考えを話した。
「もう誰かにです」
「続きを書いて欲しいですね」
「描いても欲しいです」
「左様ですね」
「途中まで読んでこれで終わりなんて」
そうしたことはというのだ。
「本当に残念です」
「作者さんも人間なので何が起こるかわからないですからね」
「急にお亡くなりになって」
「それで終わりでは」
「物凄く嫌です」
「私も同感です、手塚治虫さんは多くの作品を描かれましたが」
そして完結させてきている。
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