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イベリス

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第四十一話 〆切を意識してその四

「部活もアルバイトもね」
「やっていくことですね」
「それぞれに熱中してね」
 そうしてというのだ。
「やっていってね」
「わかりました」
「そのうえで」
 部長はさらに言った。
「漫画もね」
「〆切までに脱稿ですね」
「そう、ただ〆切は意識することは」 
 ここで部長はこうも言った。
「あまりしないでね」
「そうなんですか」
「そう、僕はそう思うよ」
「〆切は意識しないことですか」
「そうしたらプレッシャーで駄目になるから」
 だからだというのだ。
「それでね」
「あまり、ですか」
「気にしないでね」
「それがいいですか」
「〆切が怖くなって描けなく人もいるから」 
 このことも言うのだった。
「中には逃げる人もいたよ」
「〆切からですか」
「手塚治虫さんも凄い逃げ方したし」
 昭和ひいては日本の漫画を代表するこの人物もというのだ、数多くの連載を持っていたことも有名である。
「東京から熊本の方までね」
「逃げたんですか」
「〆切から逃げたくてね」
「それまた凄いですね」
「結構隠れたそうだし」
 そうもしていたというのだ。
「〆切からね」
「そうだったんですか」
「実際に原稿落としたことはないか殆どないみたいだけれど」
 それでもというのだ。
「逃げたり隠れたりね」
「そうしたことは多かったんですね」
「だから霧隠才蔵ともね」
「ああ、隠れるからですか」
「そう言われていたんだよ」
「あの人もそうだったんですね」
「そこまでプレッシャーを感じるのって辛いから」
 だからだというのだ。
「もう意識しないで」
「そうしてですか」
「描いていってね」
「それがいいですね」
「僕はそう思うよ」
「そうですか」
「意識していいこととよくないことがあるから」
 それでというのだ。
「自分が追い詰められる様なことはね」
「意識しないことですか」
「追い込まれると駄目な人もいるし」
「あっ、かえってですね」
「そうした人もいるから」
 だからだというのだ。
「それはよくないよ、小山さん〆切を意識してるなら」
「実際そうです」
「じゃああまりね」
「意識しないことですか」
「そうしてね」
 こう言うのだった。
「いいね」
「わかりました」
 咲もそれならと答えた。 
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