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ドリトル先生とめでたい幽霊

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第五幕その十一

 そうしたお話をしてでした、先生は。
 たこ焼きも食べて次はいか焼きもでした、生地のそちらを道頓堀で食べて満喫してそうしてからでした。
 神戸への帰路に着きました、すると。
 今度は王子がです、先生に言いました。
「帽子にマントの男の人がいたよ」
「そうなんだ」
「さっき擦れ違ったよ」
 そうだったというのです。
「それで着流しだったよ」
「その人は」
 先生はその人のお話を聞いて王子に言いました。
「生圀魂神社の織田作さんの銅像だね」
「そのままだね」
「うん、戦前のファッションでね」
「そのファッションでだね」
「織田作さんは実際に大阪を歩いていたけれど」
「昭和の前期だよね」
「大体十年から二十一年だね」 
 この頃だというのです。
「織田作さんは昭和二十二年一月十日にお亡くなりになってるから」
「二十一年までだね」
「その頃までは日本は着物の人も多くて」
 それでというのです。
「洋服も入っていてね」
「帽子もあったね」
「着流しに帽子とか」
「マントを羽織ることも」
「あったよ、そうした和洋折衷のファッションがね」
 それがというのです。
「日本はね」
「あってだね」
「大阪にもね」
 この街にもというのです。
「いたんだ」
「そして織田作さんもなんだ」
「そうしたファッションでね」
「銅像にも活かされているんだ」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「実際に着ていて」
「銅像に再現されているんだ」
「今じゃああした素敵なファッションも時代遅れでね」
「着ている人はいないね」
「そうなっているけれど」
 それでもというのです。
「どうして今いるのかな」
「実際にそのファッションだったよ」
 王子は先生に答えました。
「擦れ違っただけだけれどはっきり見たよ」
「あれっ、それじゃあ」
「僕達がハイハイタウンで見た人?」
「擦れ違ったけれど」
「その人かな」
「まさか」
「そうかも知れないね、しかしね」
 王子は首を傾げさせていいました。
「僕もそんなファッションしてみようかな」
「織田作さんみたいにだね」
「和洋折衷のね」 
 そうしたというのです。
「着物にマントと帽子とか」
「王子もなんだ」
「どうかな」
「面白いね、僕はいつもスーツだけれどね」
 外出の時はです、本当に先生はいつもスーツです。ただしお部屋の中で作務衣を着たり旅館で浴衣を着たりもします。
「王子がそうしたいなら」
「いいんだ」
「日本では裸にならない限り」
 そうでもないと、というのです。
「批判されないよ」
「どんなファッションでもだね」
「もっと言えば誰かを侮辱する様なものでなかったら」
 裸以外にです。 
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