| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語

作者:マルバ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

SAO編 主人公:マルバ
四人で紡ぐ物語◆レッドギルド
  第二十五話 ブラッディスクウェア

 
前書き
テストがあったのでかなり久しぶりの更新になります。
忘れられていそうで怖い…… 

 
「うーん、このへんも物騒だねえ……」
マルバは二週間貸切という長期契約でギルドホーム代わりに借りた貸家に自分で持ち込んだお気に入りのソファにくつろぎながら新聞を読んでいた。
ここは最前線より二層下の層の主街区の小川のほとり。なかなかいい家が見つかったので《リトル・エネミーズ》はしばらくここを拠点として活動している。

「なにか気になる記事がありましたか?」
「ほら、ここ。」
マルバは横から覗きこんできたシリカに新聞を手渡した。所有権情報が書き換わり、マルバはその羊皮紙に書かれている情報が読み取れなくなる。代わりにシリカがそれを読み上げた。
「新たに確認されたレッドギルド、《ブラッディスクウェア》、ですか?……って、最近探索してるサブダンジョンですよね、ここ。」
「そうなんだよ。レッドギルドがいた場所で探索するのは危険だし、この前あらかた探索し終わっちゃったからまた前線の迷宮区に戻ることにしない?」
「そうですね。まだマッピング済んでないところがありますし、今度の攻略会議までにできるだけ踏破しておきませんか?」

《リトル・エネミーズ》の行き先は正副ギルドマスターであるマルバとシリカの話し合いによって決まる。マルバもシリカも全員で話し合った方がいいと主張したのだが、アイリアとミズキがマルバとシリカの二人に決めて欲しいと言ったのだ。ミズキ曰く、「俺はそんな細々したこと考えると気が狂いそうになる」とのこと。また、アイリア曰く、「誰かに付いてったほうが気楽でいい」らしい。なんとも適当なギルドである。
おかげでシリカとマルバが危惧した『二人だけの時間が少なくなる』ことはほとんどなかった。むしろ、『ギルド全体の目標を決める責任』が二人の絆をより堅固なものとしたと言ってもいいだろう。ギルドの生存の一端は間違いなくシリカとマルバの二人にある。それは怖くもあったが仲間に信頼されている証拠でもあるため、シリカもマルバもそう嫌な気持ちにはならなかった。
更に言えば、ギルドはシステム上はひとつのパーティーであるが、戦術的にみれば二つの小さなパーティーが束ねられたようなものであった。アイリアとミズキが敵のタゲを取り、シリカとマルバが遊撃する。二人ずつの連携が特に重要となり、シリカとマルバは戦いにおいても絆を深めることになった。

シリカとマルバの仲が深まるにつれ、アイリアとミズキの仲も深まっていった。もともと盾使いと長物使いは戦術的に相性がいい。二人の戦闘での声の掛け合いは戦闘を重ねるにつれてどんどん簡略化され、たった一声かけるだけでほとんどの意思疎通が可能な状態にまでになっていた。
戦闘以外の面でも、どこまでもテキトーなアイリアとミズキは相性が良かった。シリカとマルバが額をつき合わせて戦術や行き先を決めている間も、二人はマルバの作ったおやつをつまみながらだらだらとくっちゃべっているのだから、二人の仲が良くなるのは当然ではあった。

そして使い魔の方はというと、こちらも何故かピナとユキが特に仲が良く、フウカとクロも一緒にいることが多かった。主人たちの仲が影響しているのかは定かではないが。飛行型同士、地上型同士が仲良くするのではないかというマルバたちの予想は見事に裏切られることになった。
ピナは素早く飛ぶフウカに憧れ、逆にフウカは遅くても自由自在に飛べるピナを羨んだ。ユキは身のこなしが優雅で足場があればどこにでも行けるクロを尊敬したし、クロは自分もユキのように速く走れるようになりたがった。彼らは互いを認め、尊敬し合ったからこそ一定の距離をおいてしまったのかもしれない。その代わりに自分とは全く違う移動手段を持つ使い魔同士が仲良くするようになったのだろう。――まあ、これはマルバの勝手な推測に過ぎないのだが。


結局、マルバとシリカの二人だけの会議で、《リトル・エネミーズ》の次の行き先は最前線の迷宮と決まった。これから先の冒険はしばらくマッピングが主体となるということも同時に決定した。




……そして、マルバとシリカはすぐにその決定を後悔することになる。


「ヒャーーーーーッハーーーーーッ!!!」
軽装備の四人組が奇妙な叫び声を上げ、襲い掛かってきた。その攻撃を必死に避けながら逃げる《リトル・エネミーズ》。
まさか最前線の迷宮区でレッドギルドが活動しているとはだれも思わなかった。彼らはMPKにひっかかり、なんとか敵の群れを倒しきったところに現れたレッドギルドの急襲を受けたのだ。

レッドギルド――《ブラッディスクウェア》。
主に投剣でプレイヤーに状態異常を付与することによって消耗戦に持ち込む戦闘を得意とする。メンバーのレベルは低いものの、攻略組すら屠り続ける恐るべきレッドギルドである。

先頭を走るのはシリカ、その斜め後ろにマルバ。時間あたりの攻撃力が最大である彼女らが眼前にポップした敵を一瞬で倒し、退路を確保し続ける。
その後ろを走るのがアイリア。頭上で槍を振り回し、頭上を狙った投剣攻撃がシリカとマルバに当たるのを防いでいる。しんがりはミズキ。背負った盾が攻撃を全て跳ね返すため、《リトル・エネミーズ》はなんとか逃げ続けられる。

彼らは未だマッピングされていない地域を、眼前に安全地帯が現れることを一心に祈りながら走った。安全地帯さえあれば、そこに駆け込んで転移結晶を使って逃げ出すことができる。


しかし、そんな期待は淡く砕け散った。

「……ッ!?行き止まりです!!」
シリカの悲痛な叫び声に全員が絶望の表情になった。

「総員、迎撃準備!奴らを追い返すぞ、状態異常に気をつけるんだ!!」
マルバは指示を出すと同時に二つの武器を同時に構える。シリカもそれにならい、短剣を抜き放った。アイリアは槍を振り回すのをやめて敵の武器を見据え、ミズキは盾を敵に向けたまま器用に身体を反転させ、盾を構えなおす。


彼らにとって最も行いたくない戦闘行為……圏外での対プレイヤー戦が始まる。 
 

 
後書き
殺人者ギルド、ブラッディスクウェアとの戦闘です。
なかなか厳しい戦いになることが予想されますね……。

裏設定です。
棍の基本スキルである『舞花棍(ブカコン)』は対投剣で真価を発揮する技で、飛来する軽い物体ならほとんどを弾き飛ばすことができます。
アイリアの武器の片手用槍は槍と棍の複合属性武器なので棍の技も使うことができます。ただし、武器自体が軽いので棍としての攻撃力は乏しいですが。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧