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イベリス

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第四十話 〆切りその十一

「ここは山口の言葉としては少しおかしいから」
「訂正ですか」
「そう、あと伊藤さんの言葉が少し堅苦しい場面あるから」
「ざっくばらんで陽気な人でしたね」
「気さくなね。公の場離れたら凄く人懐っこい人だったから」
 それでというのだ。
「そこもね」
「もっと気さくな感じで、ですか」
「そうしていった方がいいわ」
「そうですか」
「そこが伊藤さんの魅力だからね」 
 副部長は笑って話した。
「そうしていきましょう」
「わかりました」
「それとね」
 副部長は咲にさらに話した。
「河豚に毒があることはね」
「念頭に置いて書きました」
「それはいいわ、あと当時の武士はね」
「伊藤さんも武士になってますね」
「お百姓さんから養子に入ってね」
「そうでしたね」
「武士は河豚食べなかったから」
 このこともというのだ。
「わかる様な文章をね」
「書いておくことですね」
「伊藤さんもずっと河豚食べてなかったから」
「それは調べている中でわかりました」
「その一文も入れてね」
「そうします」
「後はいいわ、よく勉強してるししっかりしてるわ」
 こう言うのだった。
「プロット全体がね」
「そうなんですね」
「後はコマ割りに気をつけて」
 そうしてというのだ。
「描いていって、小山さん絵はいいから」
「それはですか」
「後はね」
「コマ割りですか」
「このことに注意して」
「描いていくことですね」
「そうして、漫画はもう下積みばかりよ」
 副部長はこうも言った。
「兎に角ね」
「プロットにコマ割りですね」
「そうしたことばかりして」
「描いていくんですね」
「地道な作業ばかりよ」
「それをやってですね」
「描くものよ。読まれる時は一瞬だけれど」
 それでもというのだ。
「描くのはね」
「一瞬ですね」
「そうよ」
 こう咲に話した。
「だからね、小山さんもね」
「このことはですね」
「覚えておいてね、そしてね」 
 それでというのだ。
「完成させた時は本当に嬉しいから」
「やっと出来たって」
「だからそうなれるから」
「その時を迎える為にも」
「頑張ってね」
「わかりました」 
 咲は副部長の言葉に確かな声で答えた。
「完成させます、絶対に」
「そうしてね。しかしね」
「しかし?」
「実は私明治の人では乃木大将好きなのよ」
「あの日露戦争の」
「惚れるわ」 
 笑いながら真剣な目で述べた。 
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