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イベリス

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第四十話 〆切りその八

「これといって」
「そこはお父さんと同じね」
「お母さんもでしょ」
「ええ、パリーグにはね」
「私もだしね」
 咲は自分のことも話した。
「それは」
「一家全員ヤクルトファンでね」
「セリーグ派で」
「パリーグについてはね」
「これといってなのよね」
「だからね」 
 それでというのだ。
「お母さんもよ」
「そうよね」
「まあうちでパリーグに興味があるとしたら」
 母はここでケージの中にいるモコを見て話した。
「モコ位ね」
「モコ?」
「そう、この娘位かしら」
「モコは野球知らないでしょ」
 咲は母の今の言葉に笑って返した。
「流石に」
「わからないわよ、犬だって感情あるし」
「それは知ってるけれど」
「それに好き嫌いもあるから」
「だからなの」
「それに頭いい生きものだし」
 犬はというのだ。
「特にトイプードルはね」
「それ言われてるわね」
「その中でもモコはね」
「かなり賢い方ね」
 咲もそれはと頷いた。
「一緒にいてもね」
「それがわかるでしょ」
「ええ」
 咲はその通りだと頷いた。
「それはね」
「だったらよ」
「モコもなの」
「若しかしたら野球が好きで」
 それでというのだ。
「パリーグにもね」
「興味あるの」
「そうかも知れないわよ」 
 こう言うのだった。
「ひょっとしたらね」
「まさかと思うけれど」
「それでもモコは賢いでしょ」
「名犬よ」
 咲はそれはと言い切った。
「モコはね」
「人間の言葉もわかってるでしょ」
「私もそう思うわ」
「だったらね」
 それならというのだ。
「モコもね」
「野球を理解して」
「何処かのチームを応援していても不思議じゃないわ」
「それでパリーグもなのね」
「ええ、試しにモコに聞いてみる?」
 母は娘に笑ってこう提案した。
「そうしてみる?」
「わかったわ、ねえモコ」
 母の言葉に頷いて実際に彼女に聞いてみた。
「貴女ヤクルトファン?」
「ワンワン」
 モコは先に顔を向けて鳴いた、ケージの中でもそれが見られた。咲はその彼女を見た後であらためて尋ねた。 
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