イベリス

「だから潰れたのかもね」
「馬鹿な店員がいるお店は潰れるんですね」
「大抵は接客が悪い店員さんがいたら」
　それならというのだ。
「そうなるけれど」
「そこまで馬鹿な人を採用しても」
「同じだろうね」
「そういうことですね」
「正直そこまで馬鹿だと生きてる意味ないよ」
　部長はこれ以上はないまでに憮然として述べた。
「人の痛みや苦しみ、悲しみが全くわからないのなら」
「テロも認めていますしね」
「僕の親がそんなのの親だったら泣くよ」
「どうしてですか？」
「自分の子供はこんなに馬鹿かってね」
　そう思ってというのだ。
「こんな馬鹿を育ててしまったのかって」
「泣きますか」
「そうなるよ、最悪の親不孝者でもあるよ」
「そしてその親不孝もですね」
「自覚しないよ」
　そうした輩はというのだ。
「だからもうね」
「生きている意味ないですか」
「冗談抜きに被害者か遺族の人達の前に突き出すべきだよ」
「どうされてもいいですか」
「そう思うよ、そしてそんな馬鹿が伊藤博文さんのことを言っても」
「気にしないことですね」
「マイナス百点の奴に百点の人のことはわからないからね」
　だからだというのだ。
「伊藤博文は人たらしであったけれど」
「それはどうしてか」
「その人のことを理解して受け入れるから」
「その人もついてきたんですね」
「そうだったからね」　
「ちゃんと人の痛みとかもわかる人でしたね」
　咲もこのことはわかった。
「その店員さんとは全く違いますね」
「うん、伊藤さんは日本に必要な人だったけれど」
「その店員さんはですね」
「生きている価値がないから」
「問題外ですね」
「そう、そんな人が何を言っても」
　それでもというのだ。
「聞かなくてね」
「いいですね」
「全くね、じゃあ漫画の方は」
「描きます」
「そうしてね」
　咲も頷きそうしてプロットも整えそこから描くことにした、はじめて描く漫画はまさに手探りだったが楽しみを感じていた。


第三十九話　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２１・１１・１５