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癖になる魚

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第三章

「解いたのよ」
「そうなんだ」
「まさにそのお店なのよ」
「そうだったんだ」
「そしてそのお店でね」
「今から河豚を食べるんだね」
「そう、だからね」
 料亭の個室の中で座布団の上に座って卓を挟んで向かい合って話をしている、見ればワカコの座り方は様になっているがミシマのそれは胡座だがかなりぎこちない。日系人でもアメリカで生まれ育ち座布団の上で座ることに慣れていないのだ。
「歴史も感じながらね」
「食べるんだね」
「そうしましょう、お刺身に」
 まずはこの料理にというのだ。
「お鍋、唐揚げ、白子もね」
「あるんだ」
「あと皮も酢のもので出るから」
「豪勢だね」
「コースだから」
 それでというのだ。
「色々出るわ、それでどれもね」
「美味しいんだね」
「凄くね、じゃあ食べましょう」
「今からね」
 こう言ってだった。
 二人は河豚料理が運ばれて来るのを待った、するとだった。 
 ミシマはまず万歴赤絵を思わせる見事な皿の上に花びらの様に並べられた透き通った刺身達を見て驚きの声をあげた。
「お刺身だね」
「そうよ」
 ワカコはミシマに笑顔で答えた。
「これはね」
「いや、凄いね」
「そうかしら」
「お花みたいに並べられていて」
 そしてというのだ。
「透き通っていて」
「これが河豚のお刺身なのよ」
「そうなんだね、奇麗だね」
「ただ奇麗なだけじゃなくて」 
 それに加えてというのだ。
「味もね」
「いいんだね」
「そうよ、だからね」
「これからだね」
「食べるわよ」
「それではね」
「あとで酢のものに白子に唐揚げもきて」
 そしてというのだ。
「お鍋も来るけれど」
「まずはお刺身だね」
「それを食べましょう」
「それではね」
 夫も頷いてだった。
 箸を手に河豚の刺身関西で言うてっさを食べた、この時も彼は毒があることを気にしていたが勇気を出してだった。
 彼曰くテキサスの荒野に身一つで出る勇気で食べた、そのうえで妻に言った。
「こんな美味しいお魚はじめてだよ」
「そう、これがね」
「河豚なんだね」
「そうなの」
「こんなに美味しいなんて」
 その見事な味と食感を食べつつ言うのだった。
「最高だよ」
「そうでしょ、けれどね」
「けれど?」
「まだ終わりじゃないわよ」
「唐揚げとかもだね」
「そしてメインはお鍋だから」
 だからだというのだ。
「お楽しみはこれからよ」
「そうなのね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。 
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