鎖から解き放たれた犬
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第一章
鎖から解き放たれた犬
その話を聞いてだった。
ルゼライン=スタインパーラーある動物保護団体のスタッフで長い金髪を後ろで束ねグレーの瞳と面長な顔を持つすらりとした三十代間近の女性である彼女はすぐに眉を顰めさせた。
「三年ですか」
「話を聞くとね」
同僚がルゼラインに答えた。
「そうらしいよ」
「飼って三年の間ですか」
「ずっと鎖につないでね」
そうしてというのだ。
「ほったらかしなんだよ」
「飼育放棄ですね」
「そうだよ、それでね」
「この度ですね」
「我々が引き取って」
そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「保護してですね」
「新しいいい飼い主をね」
「見付けてあげるんですね」
「そうすることになったよ」
こうルゼラインに話した。
「これからはね」
「そうですか」
「だからね」
それでというのだ。
「これからね」
「そのお家に行ってですね」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「保護しよう」
「わかりました」
「三年間裏庭にいてそこの壁が壊れて近所の人がその犬を見るまでだよ」
その人はさらに話した。
「誰もその犬のことを知らなかったんだ」
「三年間ずっと鎖につないだままだったので」
「それでだよ」
まさにそのせいでというのだ。
「誰も知らなくてボロボロの小屋にいて」
「そうしてですね」
「水はけの悪い場所でトイレもね」
「その場で、ですね」
「ご飯と水だけあげてるけれど」
それでもというのだ。
「他のことはね」
「一切ですね」
「していないね」
そうしたというのだ。
「酷い飼育だよ、生きものは飼ってるだけでいい」
「他は何をしなくていい」
「まだそんな飼い方をしている人がね」
「今もいるんですね」
「そうだよ、もう飼い主もいなくてもいいそうだから」
「引き取って」
「これから保護しよう」
こう話してだった。
ルゼテインは同僚達と一緒にだった、ペンシルバニア州にあるその家に向かった。そこは豪邸であったが。
飼い主の老婆の人相は悪く童話の悪い魔女の様だった、犬を引き取ると言っても何でもない顔でいた。
そして犬の裏庭にいる白い毛でやや垂れた黒い耳を持っている中型の雄犬は話の通り水はけの悪い場所でボロボロの小屋の中に鎖につながれていた、周りはかなり汚く草も汚物もそのままでありご飯を入れる皿も酷いものだった。
同僚はその犬を見てルゼラインに話した。
「ピーナッツっていうんだ」
「名前はあるんですね」
「けれどの名前もね」
「飼い主さんはですね」
「呼んでなかったみたいだよ」
「一体何の為に飼ってるんでしょうか」
「愛情を注がないで見向きもしないでね」
「はい、本当に」
「僕もわからないよ」
同僚、アジア系の背の高い彼リー=チュウも首を傾げさせた。
「本当にね、けれどね」
「それでもですね」
「今からね」
「保護してですね」
「そしてね」
それでというのだ。
「ちゃんと愛情を注いで」
「そのうえで幸せを知ってもらって」
「確かな人に家族になってもらおう」
こう話してだった。
ルゼライン達はピーナッツを保護した、そうしてから。
彼の名を呼んで優しく接してだった。
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