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自分そっくりなので

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第一章

               自分そっくりなので
 洋介は百田家の夫がいた会社での彼の同僚から受け取ったふわりそっくりのトイプードルのぬいぐるみを家に持って帰った、そして。
 晩ご飯を出す母と先に仕事から帰っていた父にだった。
 そのぬいぐるみを見せた、するとまずは母が言った。
「あら、これはまた」
「ふわりそっくりだろ」
「ええ」 
 息子にそのぬいぐるみを見つつ話した。
「見れば見る程ね」
「そうだよな、だからな」
「貰ったのね」
「旦那がいた会社の同僚の人からな」
「最初はあの二人に嫌がらせでよね」
「出したものでな」
 それでというのだ。
「今はな」
「私達への贈りもので」
「それでな」
 そのうえでというのだ。
「出る声も変えてくれたんだよ」
「あの二人への嫌がらせの声じゃなかったわね」
「あの二人に相応しいな」 
 そうしたというのだ。
「そうした声だったけれどな」
「それを変えたのね」
「そうしてな」
「あんたにくれたのね」
「そうだったんだよ」
「成程ね」
「それでなんだよ」
 息子は母にさらに話した。
「今日からこのぬいぐるみもな」
「一緒ね」
「俺達とな」
「面白いわね、また」
「あいつ等にはいい報いだ」
 父は冷たい声で話した、三人で今から夕食を食べるところでちゃぶ台を囲んでいる。食事は今から運ぶところだ。
「本当にな」
「そうだよな」
「そうだ、ああした奴等にはな」
「そうしたことをしてもか」
「いいんだ、心底腐った屑にはな」
 それこそというのだ。
「俺はそう考えている」
「そうしたことをしてもか」
「家のものを全部売って家の中を空にしてもな」
 そうしてもというのだ。
「それでいいんだ」
「そこまでしてとか思ってるけれどな、俺は」
「好意や愛情を向けるに値しない奴もいるんだ」
 父は息子に真剣な顔で話した。
「それがだ」
「あの夫婦なんだな」
「そうだ、愛情や好意を向けても何とも思わないでな」
「ああしたことをする連中はか」
「自分の子供でさえ捨ててほったらかしにするんだ」
 彼等の過去のその行いを話した。
「そんな連中にはな」
「そうしたことをしてもか」
「いいんだ、徹底的にやってもな」
「そういうことなんだな」
「ああ、俺の考えではそうだ」
「屑には容赦するなか」
「そういうことだ」
 こう息子に話した。
「それでだ、あの連中への仕打ちはな」
「親父達も会社の人達もか」
「当然だ、まだそうしたことはあるだろうがな」
「報いは受け続けるんだな」
「どうせ反省しない連中だ」
 彼等のこのこともわかって話した。
「だからな」
「また報い受けるか」
「そうなる、それでだけれどな」
 父はこれまでは厳しい顔で話していた、だが。
 一転して穏やかな顔になって今度はこう言った。
「このぬいぐるみふわりに見せるか」
「ふわりにか」
「面白そうだからな、飯の後でな」
「ふわりに見せるか」
「そうするか」
「そうね、自分そっくりのぬいぐるみ見てどう思うかしら」
 母は自分の夫の言葉を受けて微笑んで賛成の言葉を出した。
「見たいわね」
「そうだな、じゃあな」
「ご飯の後でね」
 こう話してだった。
 一かは鰯の丸煮と菊菜のひたしそれに浅利の味噌汁といった献立の夕食を楽しんだ、その後でだった。
 ケージの中でいておもちゃで遊んでいたふわりに洋介が声をかけた。 
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