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ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~

作者:setuna
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第55話

 
前書き
未来と現代の成長事情

未来悟飯と未来トランクスがいると書きたいことが多すぎる。 

 
激しい修行の後は食事を摂るのだが、精神と時の部屋の食料は粉と水だけなのだ。

しかしこの粉は美味くはないが生きるための栄養バランスが優れており、このような過酷な環境でも保存出来る優れ物ではあるのだが、男女問わず大食漢であるサイヤ人にとっては環境以上に辛い物がある。

「ほら、みんな。ちゃんと食べて…あんまり美味しくないけどこれも修行だよ」

何時でも美味しい物が満腹まで食べられるとは限らない。

どんな状況でも力を出し切るための修行として悟林は粉を水で練って食べる。

この修行による恩恵を特に受けたのは恐らく未来悟飯と未来トランクスだ。

未来に戻ってブラックと闘い続けていた時はまともな食事は愚か、下手すれば動物の餌も食べて生き繋いでおり、ただの缶詰でさえご馳走と言う酷い食料難となっているのだ。

ほとんど味がしない粉を食べ続けてきたことで酷い物を食べていた時でも力を出して闘うことが出来たのだ。

「「頂きます」」

未来悟飯も未来トランクスも栄養バランスが優れているのは分かっているが、毎日食するのはキツいと思っていても食べなければ体が保たないため、修行の一環として口に運んだ。

「それにしても酷え場所だよな相変わらず…食料だって粉と水だけだし」

「もっと美味しい物が食べたいよね」

だが、温かい家庭で生まれ育ったトランクスと悟天はブウとの闘いの時に入った際にここの粉を食べたのだが、美味しい手料理に慣れていた2人には相当にキツかったようだ。

「はは、そうだな。俺もピッコロさんと初めての修行の時に他に食べ物がなくて不味い林檎を食べたんだけど、その時は母さんの中華饅が食べたいって思ったもんだよ」

サイヤ人襲撃前の師匠であるピッコロとの初めての修行の時、高い所に登って降りられなくなったのだが、ピッコロが差し入れしてくれた林檎が全く熟しておらず酸っぱい林檎だったのだが、他に食べ物が無かったので泣く泣くその林檎を食べたのだ。

その後の記憶は曖昧なのだが。

「あれ、あそこって恐竜とか狼とか魚とか沢山食べ物あったのに何でそんな物食べてんの?私なんか最初の日は豪勢に恐竜を焼いて食べてたのに」

「…考えてみると姉さんが妙にあの頃から逞しかったのはサイヤ人の血が濃いからなのかもね」

酸っぱい林檎を食べていた自分と焼きたての恐竜の肉を食べていた姉…サイヤ人は自立心の強い種族なのだろうか…いや、弱いとは言え赤ん坊を星に送り込んでいたのだから今更か。

「はは、俺もその話は俺の世界の悟林さんから聞いてました。最初の間は悟飯さんはちょっとしたことで大泣きしてばっかりだって」

「そうそう、ちょーっと小さな川にだってビビってお父さんについてもらわないと近付けなかったからねー。」

「えー?そうなの悟飯さん?」

「僕は平気だったのになー」

悟林の言葉にトランクスと悟天が笑った。

「そ、それは4歳かそこらの頃だったからな、仕方ないさ」

トランクスと悟天からの視線に恥ずかしそうにしながら水を飲む未来悟飯。

「いや、あの川は悟天やトランクス君より小さかった私でも余裕で足が着く浅さだったからね」

「「悟飯さん…」」

「兄ちゃん…」

「こ、子供の頃の話なんだからもう良いだろ!?」

「「「「ははははは!!」」」」

未来悟飯が怒ると全員が吹き出して笑ってしまう。

何もない白い空間で本来は辛い場所なのに、ブラックに襲われる心配もなく弟分やこの世界の姉、弟分、弟と過ごせている今の状況は未来悟飯にとっては天国のように思える。

未来トランクスもこの世界の悟林達との交流で心の余裕を取り戻したように見える。

「でも味気ないのは同意見だよね」

「そうそう!ここを作ったデンデさんよりずーっと前の神様ももっと考えれば良かったのにさ!!」

トランクスの愚痴には誰もが…未来悟飯や未来トランクスさえ同意しながら再び食事を再開して再び粉を水で練って食べる。

やはり美味くはないが栄養があるためか力が出るような…気がする。

「でも、こうやって毎日食事が摂れるだけでもいいさ」

未来トランクスは自分の世界の食料難を思い返す。

かつて人造人間に地球が荒らされていた時でも自分達は各地に飛び回れる事も出来たし、未来トランクスの祖父であるブリーフ博士が立ち上げたカプセルコーポレーションの会社のおかげで充分な金があった。

それでもサイヤ人であることを抜きにしても満足いく程の食料は手に入らなかった。

自分達でこれなら人造人間に怯えて暮らす一般市民はきっとまともな食料など手に入らなかっただろう。

餓死した人も少なくないはずだ。

そして今回のブラックの件は人造人間の時よりも悲惨なことになっており、まるでゲームを楽しむようにじわじわと追い詰めるような人造人間と違ってブラックは一気に人々を追い詰めている。

そのため、食料の入手は人造人間の時とは比べ物にならないくらいに難しくなっており、恐らく餓死した人も人造人間の時の比ではない。

正直、今の未来の世界ではこの不味い粉でさえ金銀財宝よりも遥かに価値のある物だ。

餓死した人々のことを考えると未来トランクスの手が無意識に止まった。

「…食べられる時は食べておいて、常に闘いに備える事を忘れないでね」

「はい…」

悟林に言われたことで止まっていた手を再び動かす未来トランクス。

トランクスは自分の言葉が空気を重くしてしまったことに気付いて気まずそうにする。

黙々と口に運び満腹になると食べた皿を片付けた。

「そう言えば未来のトランクス君っておじさんよりおっきいよね」

「まあ、ベジータさんは小柄だからね」

未来トランクスは女性にしては背が高いブルマの母方の血が濃いのか、それともベジータの両親のどちらかに似たのか背が高い。

しかし、骨格や筋肉の付き方が似ていることからやはりベジータの要素も確実に受け継がれているのが分かる。

「…ねえ、お兄ちゃんってさ、どれくらいででかくなったの?」

「え?お、俺…?」

トランクスが未来トランクスを下から上を見ながら尋ね、尋ねられた未来トランクスはトランクスの羨ましげな表情に困惑する。

「だって、俺…8歳の頃から全然背が伸びないんだよ…悟林さんは普通に伸びてるし悟飯さんも普通に伸びてたのに…俺12歳なのに…」

「お、俺は普通に背が伸びてたけど…」

「そうだな、トランクスが今のトランクス君くらいの時は普通に背が伸びて、クリリンさんくらいの背丈だったな」

未来悟飯が未来トランクスが今のトランクスくらいの年齢の時の姿を思い出しながら言うとトランクスは思わず叫んだ。

「な、何でそんなに違うんだよ!同じ俺なのに!?」

「そ、そんなことを言われても…」

同じトランクスなのにこの違いは何なのか?

「環境の違いじゃない?サイヤ人って戦闘民族だから過酷な環境だと普通に成長するんじゃないの?」

同じトランクスでこの違いが出るのは恐らく環境によるものだろう。

こっちのトランクスが平和な世界で生まれ育ったのに対して未来トランクスは過酷な世界で生まれ育った。

恐らく過酷な環境に適応するために未来トランクスの成長がこちらのトランクスと比べて早まったのかもしれない。

こっちの悟林と悟飯に関しては人造人間やらの脅威があった上に精神と時の部屋と言う過酷な環境で過ごしたために適応するために背が伸びたのだろう。

そして未来悟飯に関しては最早説明不要だろう。

「そ、そんな…じゃあもうしばらく俺はこのまんま…!?」

「うーん、でもこの部屋にもうしばらくいれば背が伸びるんじゃないの?」

悟林達が平然としているので忘れられがちだが、この精神と時の部屋は気温変化が激しく、常に気で防御しなければ命に関わる修行場なのだ。

だからしばらくここにいれば2人がこの環境に適応するために背が伸びる可能性は0ではない。

「そ、そうか…よーし!絶対に悟林さんよりでかくなってやる!!」

口直しの水を一気飲みするトランクス。

未来トランクスはトランクスの心境を理解して苦笑し、取り敢えず今日は修行を終わりにしてゆっくり休むことにした。

妙に眠れなかった悟天は何もない部屋をジッと見つめており、それを見た未来悟飯が歩み寄る。

「眠れないのか?」

未来悟飯が悟天の隣に座る。

悟天は改めて未来からやってきた兄を見上げる。

こっちの時代の兄と比べて父の悟空と同じく頼りになりそうな、どんなことがあっても何とかしてくれそうな不思議な雰囲気を持っていた。

「ねえ、兄ちゃん。兄ちゃん達が未来から来てくれたから僕が生まれたんだよね?」

「うーん、そうだな。でも正直俺に弟が出来るなんて思ってなかったよ。」

あの時は父や仲間を助けるためだったので、正直弟が生まれるなど思ってもいなかったのだ。

「へへ、でも兄ちゃん達のおかげで僕が生まれたんだよ。だから僕、兄ちゃんにいっぱいありがとうって言いたいんだ」

「そうか…俺の方こそ生まれてきてくれてありがとう…君が生まれてくれて…幸せに生きててくれただけでも闘ってきた意味があった」

自分のしてきたことは決して無駄ではなかったことを目の前の弟が教えてくれた気がして未来悟飯は優しく微笑む。

「明日も修行に付き合ってくれる?」

「ああ、勿論。」

「やった!兄ちゃんいつも勉強ばかりだから…」

悟天とて悟飯が夢のために頑張ってきたのは分かっている。

しかし、やはり子供心ではもっと兄と修行したかったのが本音だろう。

「はは、集中すると周りが見えなくなるのは俺の悪い癖だからなあ…代わりになるかは分からないけど、俺も悟天と修行したい…俺の方こそよろしくな」

「うん!」

本来の歴史ならば決して会うことが出来なかった兄弟が絆を深めていた。

そして2人のトランクスも悟林のいないところで会話をしていた。

「ねえ、お兄ちゃんの世界の悟林さんってどんな人だったの?」

「え?俺の世界の悟林さん?」

「うん、やっぱり強いの?」

「そうだな、悟林さんは俺の世界じゃ俺の初めての師匠だったんだよ」

「え!?悟林さんの弟子!?」

まさか2人が師弟関係だったことに驚くトランクス。

「ああ、修行では凄く厳しかったよ。何度も海に叩き落とされたり岩に叩き付けられたりしてさ」

「は…ははは…」

どちらも身に覚えがありすぎるトランクスは苦笑した。

「厳しかったけど、同時に凄く優しかったよ。魔閃光を初めて覚えた時、自分のことのように喜んでくれて…そんな厳しくて優しい悟林さんが…俺は好きだった」

「そっか…そっちの悟林さんは殺されたんだっけ……18号さんに…」

今でも信じられない。

こっちの世界ではクリリンの妻であり、マーロンの母親である18号は確かに怖い雰囲気はあるものの、それでも優しい人物だからだ。

「ああ、この時代では良い人なのかもしれないけど、俺のいた世界の18号…さんは本当に酷い奴だった。楽しみながら人々を追い詰めながら殺し、俺のいた世界は地獄だった。そんな人造人間と闘っていたのが悟林さんだったんだ。俺はそんな悟林さんの格好良い姿に憧れて弟子入りしたんだよ」

「そっかー、でも分かる気がするな。こっちの悟林さんが超サイヤ人3になった時、凄く格好良いって思ったもん」

魔人ブウとの闘いで超サイヤ人3へと変身した悟林の姿を今でも鮮明に思い出せる。

「でも弟子入りしたばかりの俺は君と同じくらいの歳で本当に弱くてな…悟林さんを助けたいのに足を引っ張ってしまって俺を庇って大怪我をしてしまったんだ。」

そのせいで片腕を失ってしまって一時は会いにくくなってしまったが、本人は全く気にしていなかった。

“無くなった物はしょうがない、ほらトランクス。落ち込む暇があるならさっさと修行…は無理か。なら飯の調達を手伝ってくれるか?”

あの時の自分の精神状態を考えて、修行ではなく一緒に食料調達のために釣りをしたりした。

武道家にとって大事な腕の損失は決して軽いものではないし、闘い方だって今までのように出来ないのに怪我なんて感じさせないくらいに力強くて闘い方だって新しく変えた。

片腕が使えないなら足で補えば良いと言って足技主体で闘い始め、慣れない闘い方でも当時の自分や未来悟飯よりずっと強かったのだ。

「だから俺は悟林さんに無理をして欲しくなくて厳しい修行を望んだ。でも…人造人間が西の都を襲った時、悟林さんは1人で向かった。俺と悟飯さんを気絶させてね」

“トランクス!悟飯!お前達はここにいろ!良いな!?”

“でも悟林さん!その体じゃ…”

“そうだ姉さん!そんな体で1人で闘うなんて無茶だ!俺達も一緒に…”

“トランクス、悟飯、言うことを聞け。今の私じゃお前達を庇いながら闘う余裕はない”

“嫌だ!悟林さんが行くなら僕も行く!僕も充分強くなったはずだ!”

“トランクス、良いから言うことを…”

“もう足手まといにはなりません!僕、悟林さんと一緒に闘いたいんです!”

“俺もトランクスと同じ気持ちだ!今の俺達ならきっと!”

“…しょうがない、行くかお前ら”

直後に油断していた未来悟飯を気絶させ、その次に未来トランクスを気絶させて目を覚ました時には既に西の都の外れで大爆発が起きた。

「目を覚まして急いで駆け付けた時には遅すぎた…俺の最初の師匠は人造人間に殺されたんだ」

急いでそこに向かうと宙に浮いていた灰となった師匠。 

落下して受け止めた時に崩れ落ちた師匠の体。

師匠が死んだことを理解してしまい、怒りと悲しみで気が狂いそうになった夜だった。

「お兄ちゃん…」

「トランクス、伝えたい気持ちがあるのなら機会がある時に言っておいた方が良い。大切な人がいつまでもいてくれるとは限らない…俺はあの人に気持ちを伝えられなかった…後悔だけはしないでくれ」

「分かったよ…」

別次元の同一人物同士の会話はここで終わるが、トランクスの表情は次の日には少し変わっていたのだった。

半年間の精神と時の部屋での修行は一応順調と言えた。

未来トランクスは相変わらず超サイヤ人ブルーにはなれないものの、超サイヤ人ゴッドを完全に物にした。

未来悟飯もまた超サイヤ人ゴッドを超える力を万全に扱えるようになり、悟天とトランクスもまた大きく成長している。

「(悟天とトランクス君は未来に連れていくつもりはないけど、万が一のために鍛えておいて良かった)」

修行の最中にゴテンクスは少しだけ超サイヤ人3の限界を超えて超サイヤ人ゴッドに肉薄する強さを見せた。

尤もフュージョンで基本戦闘力が大幅に向上しているのが大きいのかもしれないが、もし何かあってもこれなら何とか自分達が来るまで持ちこたえられるかもしれない。

そう思っていたところに悟天が声を上げた。

「そうだ、兄ちゃん達フュージョンしてみない!?」

「フュージョン?ああ、君達が合体する時のポーズか……(出来れば遠慮したいけど、この目は…)」

「お兄ちゃんや悟飯さんなら絶対凄いと思う!」

強い兄達のフュージョンが見たいと言う気持ちが込められた視線に未来トランクスは断れない。

最後の希望として未来悟飯を振り返ると、何やら真剣に悩んでいた。

「俺とトランクスがフュージョンするとなると名前はゴハンクスか?それともトランハンか?フュージョンした後のポーズを考えるべきか…」

「(乗り気だ…!)」

「(やっぱりどこの世界でも悟飯は悟飯だ)よし、カプセルコーポレーションに行こう」

性格は違えど、微妙なセンスは同じなのだと理解した悟林は取り敢えずさっさと部屋を出てカプセルコーポレーションに向かおうとしたのだが。

「…と、その前に姉さん。こっちの俺に会ってきて良いかい?」

「別に構わないよ」

カプセルコーポレーションに向かう前に悟飯一家が暮らす豪邸に向かうのであった。 
 

 
後書き
未来悟飯と悟天はそれなり兄弟みたいな空気になったけど、トランクス同士は異様に重くなった気がする。 
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