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怖い上司の意外な顔

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第一章

                怖い上司の意外な顔
 柴田佳正は八条百貨店の新入社員だ、勤務先は京都店である。百貨店にいても営業担当であり店に出ることはほぼない。
 背は一七八位ですらりとしていて面長で大人しい顔立ちだ、黒髪をショートにしていていつもスーツである。
 いつも真面目に働いている、だが。
「こら、柴田君」
「何ですか主任」
「何ですかじゃないわよ」
 上司で五歳年上の平手涼香によく叱られていた、涼香は茶色の波がかった髪の毛を腰まで伸ばしていて大きなあどけない感じの目で赤い唇で童顔である。眉は奇麗なカーブを描いている。
 背は一五五位であり小柄と言っていい、だが胸はスーツの上からでも目立ち短いタイトスカートから見える脚も奇麗だ。
 その彼女にだ、いつも叱られていた。
「また書類にミスがあったわよ」
「すいません、すぐになおします」
「そうしなさい、あとね」
「あと?何ですか?」
「明日は北海道フェアの準備があるでしょ」 
 佳正に別の仕事の話をしてきた。
「だから残業してね。私もするから」
「そうですね、明日ですね」
「他の皆もよ。だから頑張ってね」
「わかりました」
「残業代も出るからね」
 こうしたことを話してだった。
 涼香はミスのあった箇所を佳正に話して訂正させた、兎角厳しく細かいところまで言う上司で彼にとっては怖い上司だった、そして。
 残業となった日二人は最後まで仕事をした、残業が終わった時に涼香は佳正に対して言った。
「もうお店に残ってるのは私達だけね」
「皆終わって帰りましたね」
「ええ、思ったより遅くなったわね」
「ですね、幸いアパート近いんで」
 それでとだ、佳正は涼香に話した。
「帰られます」
「ご飯どうするの?」
「途中のコンビニで何か買って」
「それだと身体によくないでしょ、だからね」
 それでとだ、涼香は佳正の話を聞いてこう返した。
「私の部屋も近くだし」
「そうなんですか」
「寄っていきなさい、何か作るから」
「作るって」
「晩ご飯よ、いつもコンビニ弁当とかじゃ身体に悪いわよ」
「別にいいですの」
「いいの、私が言ってるんだから聞きなさい」
 涼香はむっとした顔で告げた、童顔がそうなった顔は見れば可愛いものだった。佳正はその顔に一瞬どきりとなったが涼香はその彼にさらに言った。
「いいわね」
「そうですか」
「そうよ、いいわね」
「それじゃあ」
 佳正は頷いてそうしてだった。
 涼香の言う通りに彼女の部屋に行った、そこは彼のアパートのすぐ近くにあるマンションの二階にあった。そこに入ると。
 涼香は彼をリビングに案内すると一旦自室に入ってシャツと半ズボンの部屋着になって即座にだった。
 夕食を作った、スパゲティカルボナーラだったがそれがだった。
「美味しいです」
「気に入ってくれた?」
「はい、まさか主任」
「大学からずっと一人暮らしだったからね」 
 涼香は自分の向かい側に座る佳正に笑顔で答えた。
「だからね」
「お料理出来るんですか」
「基本自炊してるの」
「そうなんですか」
「その方が栄養バランスいいし安いから」
「だからですか」
「それでお昼もお弁当なの」
 そうしているというのだ。
「自分で作ったね」
「そうですか」
「明日はサンドイッチのつもりだけれど」
「サンドイッチですか、実は俺好きなんです」
 佳正はサンドイッチと聞いて笑顔で言った。 
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