| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

DOREAM BASEBALL ~夢見る乙女の物語~ 

作者:山神
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

分析

 
前書き
長い文がかけなくなりつつある今日この頃。 

 
初戦からの一日空いて三回戦。今日の相手は昨年の夏の大会でベスト8に進出した都立白川高校。この高校は二人の投手の継投で一回戦、二回戦を僅差で勝ち抜いてきているらしい。

「この三番に入ってる西川(ニシカワ)には警戒しろよ。パワーもあるけど盗塁も仕掛けてくるからな」
「苦手なコースとかあるんですか?」
「内角が詰まってる印象があるかな」
「ほぇぇ」

三番DHと記載されている西川さん。女子野球は男子とは異なり指名打者制を採用している。昔はほとんどの高校が採用していたらしいけど、今はそれを使用する高校とそうじゃない高校が半々に別れている。

特に東京都の四強と称されている高校の中では日帝大付属と翼星学園は毎試合DHを使ってくるけど、うちと東英はそうじゃない。うちはほとんどDHは使っていないけど、東英学園に投手によって使い分けるというやり方をしているようだ。

「お前なんか優愛に似てきたよな」
「え!?ホントですか!?」
「あぁ、主にしゃべり方がだけどな」

どうやら先程の返事が莉子さんの怒りに触れたらしく頭を握られる。次第に強く握られていくそれに恐怖心が芽生えてきた。

「莉子、試合前だからね」
「わかってるよ」
「絶対ウソじゃん」

そこに割って入ってくれたのは栞里さんと伊織さん。二人は素振りをしていたところを切り上げてこちらへと来てくれたらしい。

「一年生バッテリーで不安だからっていじめてやるなよ」
「いじめてない。キャッチャーとして当たり前のことを指導してるだけだ」

同じく素振りをしていた陽香さんが莉子さんの横へと腰掛ける。そう、この日の試合は瑞姫と私のバッテリーになっているのだ。
そして、瑞姫にはピッチングに専念してもらうために陽香さんをDHとして起用している。

「大丈夫だよ、多少点数なんて取られても取り返せるし」
「それじゃあ先の戦いが不安になるって言ってるんだよ……」

伊織さんの言葉に頭を抱えタメ息をつく莉子さん。彼女の言いたいことがわかってきただけに、それを気にしようともしない先輩たちを見て彼女が可哀想になってきた。

















第三者side

最初に打席に入る金髪の少女。右打席に入った彼女はゆったりとした構えで投手を見据える。

「明宝が指名打者使うなんて珍しいね」

スタンドで試合を見ていた茶髪のロングヘアの少女が隣にいる紫髪の少女に話しかける。

「今日の先発の子、一年生みたいだからね」
「キャッチャーも一年生みたいですよ」

黒髪のパーマがかった髪をクルクルといじりながらその会話に割って入る少女。それを聞いて二人はへぇ、とわずかながらな反応を見せていた。

「今日のスタメンには一年生を三人も入れてるのね……そんなに粒ぞろいな子たちなのかしら?」

メガネをかけた大人っぽさを見せている女性は選手名鑑を見ながらこの日のオーダーを確認している。それを後ろから数人の少女たちが覗き込んでいた。

「これだと春とほとんど変わりないんですけどね」
真田監督(あのひと)がブラフ使うなんて珍しいですよね」

口々に思ったことを声に出す少女たち。彼女たちの意見交換が収まってきたところで話し始める。

「ほら、注目の一年生が打席に入ったわよ」

いつの間にかランナーに出ている栞里。打席にいるのは今話題になっていた紗枝がおり、彼女はバントの構えをしている。

「相変わらず手堅いわね」
「なんか野球が古いんだよねぇ」

一昔までは一番が出て二番が送り、三番が返すという流れが主流だった。しかし、近年ではウエイトトレーニングの効果による飛距離の増加や多種多様な戦術の登場によりこのセオリーは崩れつつあった。

そんな中でバントの構えをした紗枝は揺さぶる素振りも見せず初球からこれをキッチリ決め1アウト二塁のチャンスを演出すると打席にはこの大会から三番に入った莉子。

「水島さんってショートもできるんですね」
「何言ってんの?去年もショートだったじゃん」
「あれ?そうでしたっけ?」

首を傾げながら昨年のことを思い出そうとしている後輩。しかし、彼女はほんの数秒考えたかと思うと、諦めたように思考するのをやめていた。

カキーンッ

「綺麗なセンター前ヒット」
「さっきの送りバントが生きたわね」

投手の左側を抜けていく強い打球。これにはセカンドも追い付けず、二塁にいた栞里も三塁を蹴りホームを陥れていた。

「好打者の水島の次がこの長距離砲二人か」
「しかもこの後に坂本が入ってるんだもんね」

打席に入る小柄な少女。前の打者から見れば大したことないように見えるが、実際はそうではない。

「やぁ!!」

スイングと共に声を張り上げると高々と打球が舞い上がる。それはあらかじめ深めに守っていたはずのライトの頭を軽々と越えていく。

「あの身体のどこにあんなパワーがあるんですかね?」
「ミートがうまいんだろうね。自分が打球を飛ばせるポイントをしっかり把握してるんだよ」

一塁走者をホームまで還し、自らも三塁まで陥れている少女に感心せずにはいられない。そしてここで打線が切れないのがこのチームの怖いところ。

キンッ

「うわっ!!」

前進守備を敷いていたファーストが後方に倒れ込むように打球をキャッチする。正面に来た上に反応するのも困難なほどの速い打球であったためか、捕球した少女は自身のグローブを見て驚きながらガッツポーズしていた。

「あれが取れたのはラッキーだったな」
「これで2アウトか」
「でも次は……」

打席に入るのはこの日は指名打者での出場になっている陽香。春まではクリンナップを務めていたこともあり、警戒度は高い。

それがわかっているからか、マウンドにいる背番号1のサウスポーもストライクが入らない。2ボールとボール先行になったところで……

「「「「「あ!!」」」」」

試合を見ていた少女たちが思わず声を出した。低めを突こうとしたがあまり、ワンバウンドになった投球を捕手が止めることができずにバックネットへ転々と転がるボール。その間に優愛がホームへ還り追加点。

「警戒しすぎ」
「ゾーンで勝負すればなんとかなったかもしれないのに……」

その言葉通り、3ボールからストライクを二つ入れフルカウントにしたあとの6球目、外角のストレートを流し打った陽香だったが、セカンドが飛び込みこれを捕球。一塁へと送球しアウトにしていた。

「打線は相変わらずだね」
「いや、葉月をクリンナップに上げれるだけの厚みが出てきたからね。春よりも強力になってるよ」

春は守備力があるものの打力がない選手を下位に固めていたため、高い打力のある葉月を七番に置き、そこまでに得点を奪わなければならなかった。そのためエースでありキャプテンである陽香が三番打者として打撃でもチームを引っ張らなければならなかった。

しかし、新戦力の台頭により葉月をクリンナップにあげ、陽香の打順を下げても高い得点力を維持することができる。それどころか長距離砲が固まった上に要所に好打者が配置されたため、手が付けられない打線になったと言えた。

「この守備見たらアップに行くからね。集中して見るように!!」
「「「「「はい!!」」」」」

次の試合に出場となっている彼女たちはアップの関係から試合をずっと見ていることができない。そのため、この明宝の守備までしか見ることができない。だが、それでも十分であることを彼女たちはわかっていた。

「今日の先発の子は中学で全国に出てるらしいわよ。状況次第では次の試合にも出てくると思うからしっかり見ておかないとね」

この試合が初登板となっている瑞姫。前評判はあるもののデータがない彼女の投球が気になっているようで、これまでの雰囲気から一転し、ピリッとした空気になっている。

美紅(ミク)先生すごい集中してるね」コソッ
「こんなに順当な試合を見せられたら気合いも入るでしょ」コソッ

妙に気合いの入っている監督に何かあったことを察した面々。特にパーマがかった髪の少女はその理由を全て察していた。

(あのピッチャーにフラれたってことかな?美紅先生、ピッチャーにはこだわり強いからなぁ)

ライバル校の好調ぶりに気持ちが前のめりになっているのかと思っている少女たちが多い中、彼女だけは冷静だった。なぜなら明宝学園が守備に着いた途端、気合いを入れさせるような発言をしたのだから。

「球種は何があるんですか?」
「ストレートにスライダー、そして決め球のフォークよ」
「MAXは?」
「120kmくらいは出てたはずよ」

次々に出される問いに間髪入れずに答える女性。それにより、他の選手たちも彼女がピりついている理由を察した。

「もしかしてあれが取れなかったうちの一人?」コソッ
「かもね」コソッ

聞こえないように話していたつもりだったがこういう時だけ人は耳が良く聞こえるようになる。コソコソとはなしていた二人の後ろから緑髪の少女が肩をつつきそちらを指さすと、鋭い眼光になっている監督と目があった。

「ヤバッ!!絶対聞こえてたじゃん!!」コソッ
「見なかったことにしよ!!そうしよ!!」コソッ

何事もなかったかのように無言になる二人。そのあまりの慌てように他の少女たちはクスクスと笑いを堪えていた。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
短く行くといいましたが、少しだけ遊びたいと思い気持ち長めになると思います。
準々決勝以降から比べれば短くなると思うのでご了承くださいm(__)m 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧