イベリス
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第三十七話 完成させることの大切さその十三
「描けばいいのよ、真理は難しくないのよ」
「そうなの」
「真理は実は簡単なのよ」
「難しくないの」
「わかりやすく書かれていてね」
そうしてというのだ。
「読んですぐわかるものよ」
「そうなの」
「むしろ小難しい言葉なんてね」
「真理じゃないの」
「偽物よ」
それになるというのだ。
「むしろね」
「小難しい言葉は」
「何を書いてるかわからない文章なんて」
「偽物なのね」
「難しい言葉理解出来て私頭いいとかね」
そうしたことはというのだ。
「錯覚よ」
「そうなの」
「真理は本当にね」
それはというのだ。
「単純明快よ」
「それ前に誰かに言われた気もするけれど」
「私かしら」
「そうだったかしら」
「ううん、どうだったかしら。けれど兎に角ね」
愛は自分の記憶を辿ったがそんな気もする様なしない様な感じだったのでそれは置いておいてそのうえで咲に話した。
「真理っていうのはね」
「簡単なのね」
「そう、わかりやすい言葉で書かれていてね」
そうしてというのだ。
「言われているものよ」
「そうなのね」
「小林秀雄さんの文章も」
戦前戦後に活躍したこの思想家のそれもというのだ。
「それなりの教養が備わって読むとね」
「わかるの」
「わかりやすいの、ただクラシックとか古典の教養が必要よ」
「そうなの」
「けれどそうした教養を備えてね」
そのうえでというのだ。
「読むとね」
「わかりやすいの」
「私もそうした本を読んでわかったわ」
「お姉ちゃんも勉強してるのね」
「いや、本も読まないとね」
愛は笑って話した。
「人間駄目だしね、本を読んで世の中を見て回ってね」
「旅行もして」
「学校に行ってアルバイトもしてね」
そうしてというのだ。
「人間は成長するから」
「本も読むことね」
「そうよ、それで小林秀雄もね」
「わかりやすいの」
「小難しい言葉の羅列で何を言っているのかわからない文章なんてね」
それこそというのだ。
「まやかしなのよ」
「真理はわかりやすいのね」
「そう、難しいのは実はまやかしよ」
「難しい文章理解出来て真理じゃないのね」
「難しい文章なんて適当に漢字と片仮名使えば書けるわよ」
「そうなの」
「言葉尻を取られない言葉もね」
そうしたものもというのだ。
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