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ドリトル先生とめでたい幽霊

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第一幕その九

「やっぱりね」
「それに森鴎外ですね」
「芥川龍之介もね」
「特に川端康成は」
「ノーベル文学賞を獲得しているしね」
「そして三島由紀夫ですね」
「三島由紀夫は素晴らしいね」
 先生もこう言います。
「あの人の文章も構成もね」
「素晴らしいですよね」
「英語訳でよりも原文で読むと」
 日本語のそれで、です。
「別格だよ」
「そうですよね」
「僕としてはね」
「それで今回はですね」
「織田作之助についてね」
「論文を書かれているんですね」
「そうなんだ」
 こうトミーにお話します。
「今はね」
「そうですね」
「それで作品も読んでいるよ」
「どんな作品ですか?」
 トミーは鰹のたたきを食べながら先生に尋ねました。
「それで」
「夫婦善哉や世相、六白金星や競馬、勧善懲悪もね」
「読まれていますか」
「そうだよ、あとね」
 先生はさらに言いました。
「ニコ狆先生や猿飛佐助もね」
「猿飛佐助っていうと」
「あの真田十勇士のね」
「あの人ですよね」
「あの人の作品もね」
「読まれてますか」
「思えば夫婦善哉で出たお店は何度か行ってるね」
 ここでこのこともお話する先生でした。
「カレーの自由軒も鰻のいづも屋も善哉の夫婦善哉もね」
「そうでしたね」
「それで今回も行かせてもらうけれど」
「作品もですね」
「読んでいるんだ、ニコ狆先生なんか面白いよ」
「何か」
 トミーはその作品のタイトルから言いました。
「煙草のニコチンと」
「犬の狆だね」
「日本の」
「そうだよ、当時の日本の市井を舞台にした忍者ものでね」
「当時のですか」
「主人公が忍者の師匠に弟子入りするけれど」
 それでもというのです。
「その先生が狆そっくりの顔なんだ」
「それで狆ですね」
「そして姿を消す術を身に着けるのに煙草を吸ってその煙でね」
「姿を消すんですね」
「そうしたお話なんだ」
 これがというのです。
「このお話はね」
「何か変わった作品ですね」
「娯楽小説だよ」
「そちらのジャンルですか」
「うん、それでね」
 先生はもずくを食べつつお話します。
「その作品も読んで」
「そうしてですか」
「論文を書いているよ」
「そうですか」
「大阪の文学は井原西鶴や上田秋成がいてね」
「谷崎潤一郎も一時いましたね」 
 明治、大正、昭和に活躍した文豪です。
「そうでしたね」
「あの人は長い間関西にいたからね」
「それで大阪にもですね」
「いた時期があったよ、あと川端康成もね」 
 そのノーベル文学賞を獲得した人です。 
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