レーヴァティン
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第二百三十六話 熊鍋その一
第二百三十六話 熊鍋
退治された羆の躯が術により送られてきた、何とそれは。
「二体か」
「はい」
届けてきた侍の職業にある者が答えた、その者がパーティーのリーダーでありその後ろには魔術師や僧侶、戦士、盗賊といった職業の者達もいる。
「おりまして」
「そのどちらも倒したか」
「我等が」
「そうか、どちらも大きいな」
英雄は大坂城の中に横たえられたその羆達を見て言った、どちらの羆も目を見開き口を開けたままだった。
「これでは巣ごもりなぞだ」
「出来ないっちゃ」
愛実が応えた。
「到底」
「そうだな」
「それでっちゃな」
「巣ごもり、冬眠が出来ずな」
「狂暴になるっちゃ」
「羆嵐になる」
「そうっちゃ、しかしっちゃ」
「目撃されてな」
その話が幕府にも届いてというのだ。
「そしてだ」
「退治したからっちゃ」
「蝦夷の民に犠牲が出ないうちにな」
「だからよかったっちゃ」
「それがだ」
まさにというのだ。
「よかった」
「まことにっちゃな」
「では羆達を弔い」
「その後でっちゃな」
「食おう」
そうしようというのだ。
「折角だからな」
「そうするっちゃな」
「そしてだ」
英雄は今度は退治した者達に告げた。
「他の者達も間もなく帰って来る」
「はい、仕事は終わりました」
「だからですね」
「他の者達もですね」
「食う」
そうするというのだ。
「熊鍋をな」
「それをですか」
「俺達十三人とだ」
今も共にいる十二人の仲間達もというのだ。
「そしてお前達もだ」
「我等もですか」
「熊退治に出た者もな」
その彼等もというのだ。
「皆だ」
「熊鍋をですか」
「食うのだ、そしてだ」
英雄は侍にさら言った。
「実際に退治したお前達には特別に褒美を出す」
「それもですか」
「出た者達全員に銭を与え」
そうしてというのだ。
「お前達にはな」
「羆を倒したからですか」
「その褒美をな」
それをというのだ。
「与える」
「そうして下さいますか」
「そうする、ではな」
「これよりですか」
「皆が戻ったらだ」
そうなればというのだ。
「鍋だ」
「わかりました」
侍も他の者も応えてだった。
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