イベリス
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第三十七話 完成させることの大切さその六
「もうすぐ終わりかっていう時にね」
「漱石さんが亡くなって」
「それでね」
「未完でしたね」
「ええ、完結していれば」
その明暗もというのだ。
「よかったけれどね」
「漱石さんが亡くなったので」
「残念なことになっているのよ」
「そうなんですね」
「一番大事なのは本当にね」
「終わらせることですね」
「完結させることよ」
まさにというのだ。
「永井豪先生もね」
「終わらせているからいいですか」
「滅茶苦茶な終わり方ばかりでも」
そうであってもというのだ。
「けれどね」
「いいんですね」
「そう、だからね」
「永井豪先生もですか」
「いいのよ」
その終わり方が納得いくかどうかは別として、というのだ。
「まだね」
「そうですか」
「終わらせることが一番難しいから」
作品はというのだ。
「うちの部でもね」
「終わらせることがですか」
「一番大事だとしているのよ」
「だから私もですね」
「終わらせてね」
その作品をというのだ。
「いいわね」
「そうします」
咲はここでも自分自身にも誓った。
「絶対に」
「お願いするわね」
「そうします、じゃあこれから何を描くか考えます」
「そうしてね」
「はい」
咲も頷いて答えた、そうしてだった。
この日は部活を終えて学校から帰ってもだった、何を描くか考えていった。それは電車の中でも夕食の時も入浴の時もだった。
考えていた、それで予習復習の後で。
リビングで雑誌を読みながら考えた、そして。
そこでお茶を飲んでいたが母に言われた。
「漫画読んでるの」
「ええ、ちょっとね」
そうしているというのだ。
「今度漫画描くけれど」
「そうするの」
「ええ、はじめて描くから」
母にもこう話した。
「何を描こうか考えていて」
「今読んでるのね」
「そうなの、何を描こうか」
このことがというのだ。
「決まってないの」
「そうなのね」
「だからね」
それ故にというのだ。
「困ってるの」
「全く思いつかないのね」
「そうなの」
実際にというのだ。
「これがね」
「それは困ったわね」
「考えようとしても」
それでもというのだ。
「何もね、真っ白で」
「じゃあもうここはね」
それならとだ、母は娘に言った。
「徹底的に読んで考えてね」
「そうしてなの」
「もうふと頭の中に浮かんだらね」
「その浮かんだものをなの」
「描いたらいいんじゃないかしら」
「そうしたらいいの」
「お母さんも漫画描いたことないから確かに言えないけれど」
それでもというのだ。
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