東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.
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招かれし者(西村早苗)
ありふれた日常
鳥取県鳥取市《とっとりけんとっとりし》。
真冬の冷たい風が吹きつけ、雪がしんしんと降り積もる。すでに20cmは積もっているだろうか。そのなかを如何《いか》にも寒そうにして歩く女子大生がいた。
?「うう、寒かー!まさか今日ここまで降るとは思わんやったばい」
彼女ーーー西村早苗《にしむら‐さなえ》は博多弁《はかたべん》で独り言を呟いた。
早苗「まあ良《よ》かたい。今日で学校も終わりやし、はよ帰って休もうっと」
早苗は両手に持ったレジ袋を軽く揺らしながら小走りで家に帰った。
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スーパーからほど近い学生専用アパートの2階の角部屋が早苗の家だった。
早苗が通っている大学からも近く、アパートから道路を挟んで目の前が大学という立地の良さが売りらしいが、何よりも早苗が一番嬉しかったのは大家さんがとても親切に接して下さることだった。
帰宅した早苗は買ってきた食料品を冷蔵庫に入れてからあらかじめ沸かしておいた風呂に入った。
早苗「ふぅ…。やっぱり冬に入るお風呂が一番やねー♪」
早苗は風呂が大好きである。「肩までしっかり浸かる」が彼女のポリシーだ。
風呂からあがると部屋着に着替え、すぐさま夕飯の支度にとりかかる。今日のメニューはご飯に味噌汁、煮魚、野菜炒めだ。
早苗は料理が上手で、家に遊びに来た友人に昼食を振る舞った際に『早苗の将来は料理人で決まりだね』と言われたほどの才能の持ち主である。料理は40分とかからぬうちにできた。
早苗「いただきます」
早苗はよほど空腹だったのか、10分ほどで食事を終えた。
早苗「ごちそうさまでした」
後片付けを終えた早苗はベランダに出て、およそ3キロ離れた山の上に3基並んで建つ風力発電用の風車から発せられる航空障害灯の光を眺めた。
赤い光が明滅するさまは蛍火のようでどこか幻想的だった。
音に例えるなら、目の前に見える介護施設に併設された自動販売機の眩しい灯りが都会の喧騒で、風車の赤い光は田舎ーーーそれも山深い場所にひっそりとあるような人里ーーーに木霊する子供の笑い声といったところだろうか。
その対照的な光景に早苗は感動すら覚えた。
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ーーー
しばらくすると疲労感が早苗の体を支配した。
早苗は大学祭実行委員会の副委員長としてずっと仕事をしてきた。徹夜で仕事にあたったことも何度かある。その疲れが今になってきたのだろう。
早苗「だいぶ眠とうなってきた…。今日は早めに寝ようかね」
家に入って窓に鍵を掛け、カーテンを閉める。
続いて布団を敷き、部屋の灯りを消してその中に潜り込んだ。
早苗「おやすみなさい」
ーーー枕元に置いた目覚まし時計は22時44分を指している。
早苗はよほど疲れていたのか、すぐ深い眠りについた。
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