東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.
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招かれし者(松上敏久)
「イエス」か「はい」でお答えください
紫「霊夢、覚えておきなさい。私は“永遠の美少女・八雲ゆかりん”なのよん♡」
腰に手を当てポーズを決める紫。
敏久は思わず「気持ち悪い」と言いかけたが先ほど霊夢に向けられた凍りつくような笑顔を思いだし、辛うじてその言葉を飲み込んだ。
紫「ーーーというのは冗談だけど、これでも妖怪としてはまだ若いほうよ?」
霊夢「あんたの言いたいことは分かった。人間で換算するとだいたい二十歳前後なんだと言いたいんでしょ?」
紫「ご名答。今は2100歳くらいかしら。種族としての妖怪はだいたい10000年くらい生きるから、2100歳といえばまだ若造もいいところよね」
霊夢の問いに紫はそう答えた。
敏久「ところで紫。お前だろ?俺を幻想郷に連れてきたのは」
紫「そうですわ。貴方が『幻想郷に行きたいなあ』と言っていたのを聞きつけてね。そうしたら貴方が偶々《たまたま》フタが開いたままのマンホールに落ちたからそのまま連れてきてあげたのよ」
紫は「感謝しろ」と言わんばかりのどや顔で答えた。
敏久「そりゃまあ感謝はしているさ。それで今日は何のーーー」
紫「スキマ、オープン!」
なぜかいきなりスキマに落とされる敏久。
ほどなくして天井にスキマが開いてそこから敏久が降ってきた。
敏久「痛えなあ…なにしやがんだコラ!」
霊夢「敏久…。その服、凄く似合ってるわよ//」
霊夢が少し頬を紅く染めて言う。
敏久「なんだと!?」
敏久が自分の服装を見ると、それはついさっきまで着ていた私服ではなく学生服だった。
制服の襟にはどこかの高校の校章が光っており、ボタンにも校章らしき模様があった。少なくとも敏久が卒業した学校のものではない。
敏久「おい紫、これはどこの学校の制服だ?」
紫「作者の母校のものですわ。作者が高校時代、教頭から“佐々木は学生服がよく似合うなあ!”と言われていたのをヒントにしたとかで、“敏久にはこれを着せてくれ”と頼まれていたのよ。それにしても本当によく似合っているわね…」
紫までもがうっとりした表情で敏久を見ている。怒った敏久が学ランを脱ごうとボタンに手をかけたその時だった。
紫「ゆかりんマジック!」
紫が指をパチンと鳴らすとボタンからバチッと電流が流れ、敏久の手を一瞬で萎えさせた。
紫「松上敏久に命令します。これから夏になるまでの期間中、入浴時と就寝時以外はその服を着ていなさい。さもなくば私は貴方をスキマ送りの刑に処します」
敏久はハッとして紫を見た。その表情は「大妖怪」そのもの。
いつになく威厳に満ちており、もし逆らえばどうなるか分かったものではない。
敏久「くっ…。分かったよ!着てりゃいいんだろ着てりゃあよう‼︎」
敏久はやけくそ気味に叫んだ。
すると紫は笑顔になり、敏久の頭を優しく撫でた。
紫「いいこ、いいこ。素直な子はお姉さん大好きよー?」
敏久「子供扱いは止してくれ…orz」
『まさしくカリスマの無駄遣いだ…。』
敏久はそう思った。
紫「ちなみにだけどセーラー服も用意しているわ」
敏久「何がしたいんだ!言っとくが俺にそんな趣味はないからな⁉︎」
紫「そうじゃないわ。セーラー服は霊夢が着るの。つまり『その気になればいつでも高校時代に戻った気分で霊夢と色んな“お勉強”ができる』ということよ」
紫はニヤニヤしながら言った。二人ははじめ何を言っているのか分からないという表情だったが、やがてその意味を理解したのか顔が真っ赤になった。
霊夢「アンタねぇ…///」
敏久「な、何考えてんだお前は……///」
紫「あらあら、真っ赤になっちゃって…。いやらしい子ねえ、もう♪」
敏久「どっちがじゃあぁぁぁ!」
この日一番の大声が博麗神社に響き渡った。
ー
ーー
ーーー
紫「さて、用事も済んだことだし私はそろそろお暇しますわね」
紫はそう言って立ち上がってスキマを展開した。スキマの内部は真っ暗で、相変わらず沢山の目玉がこちらを覗いている。『いつ見ても不気味だ』と敏久は思った。
スキマに足を一歩踏み出したところで紫がこちらを振り返る。
紫「そうそう。その学生服は大切に取り扱うこと。いいわね?」
敏久「もし捨てたりしたら…どうなるんだ?」
紫「この小説から貴方の存在が消されるわ。それは作者の宝物みたいなものですからね。くれぐれも破かないよう気をつけるのよ?」
敏久「ずいぶんと厄介なものを着せられたもんだ…。ありがとう、気をつけるよ」
紫「それじゃあ私は冬眠に入るわね。あ、私が寝ていても藍《らん》に制服を着ているか監視させるから冬眠中に私服を着ようったって無駄よ?……それじゃあお休みー♪」
スキマに紫が入ったと同時にスキマが閉じ、やがて裂け目すら見えなくなった。
あとに残されたのは紫が置いていったセーラー服、そして静寂と僅かな疲労感のみ。
敏久&霊夢「はぁ・・・。」
ーーー2人は長く深いため息をついたのだった。
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