ハッピークローバー

「やっぱりな」
「私としたいとか」
「思ってないと思うかよ」
「そうよね」
「そういうことだよ」
「じゃあ私を想像してとか」
　かな恵がこう言うとだった。
　成海は怒ってだ、そのかな恵に言った。
「言うなよ、そこから先は」
「みなまで言うな？」
「ああ、言うとな」
　どうしてもというのだ。
「言葉ってのは言ったら返らないだろ」
「そうよね」
「野球のエラーでの失点と同じでな」
「エラーなのは同じね」
「だからな」
　それでというのだ。
「言葉、失言もな」
「返らないのね」
「一旦言ったらな」　
　その時はというのだ。
「だからな」
「言わないことね」
「それにわかるだろ」
「まあね」
　かな恵もそれはと答えた。
「私の水着姿や下着姿とか」
「だから言うなよ」
「これまでね」
「ああ、もっと凄いことだってな」
「そういうことね」
「けれど想像してるだけだぞ」
　成海はこのことは強調した。
「言っておくけれどな」
「そうした時に」
「それだけだからな」
「そうなのね」
「そりゃ実際にそうしたいと思ってるさ」
　成海もそれは否定しなかった。
「だからな」
「想像するのね」
「ああ、けれどな」
「実際にはしないの」
「かな恵がいいって言わないとな」
「いいって言ったら？」
「だから言うなよ」
　それはというのだ。
「そういうことでな」
「言ったら返らないから」
「そうだよ、しかしな」
　それでもというのだ。
「俺も他の奴もな」
「十代の男の子は」
「皆そうしたものだよ」
「それでそのことはなのね」
「覚えておいてくれよ」
「わかったわ、まあこっちもね」
　かな恵はかな恵で女子のことを話した。
「そうしたこと想像して」
「だから言うなって言ってるだろ」
　成海はかな恵が言う前に言った。
「いいな」
「じゃあね」
「ああ、まあ兎に角な」
「うん、じゃあ合コンはね」
「そうしたことも頭に入れてな」
「皆連れて行くわね」
「そうしてくれよ、俺もそうするしな」
「それじゃあね」
　こうした話をしてだった。
　かな恵はスマートフォンを切った、それで話を終えてそれからはこの日は休んだ。だが合コンの日は徐々に近付いていた。


第九話　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２１・１０・８