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イベリス

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第三十六話 恐ろしい強さその三

「打撃指導には定評があるんだ」
「そんな人もいるのね」
「兎に角強かったんだ」
「それで獅子の時代ね」
「野村さん率いるヤクルトと二年越しの死闘を演じたり」 
 彼はこのことも話した。
「日本シリーズでね」
「それ私も聞いたわ、ヤクルトファンだしね」
「だったら知ってるよね」
「ええ、杉浦さんが代打満塁サヨナラアーチ打って」
 九十二年の第一試合のことだ。
「そこからね」
「そのシリーズ七戦まで両チーム必死で戦って」
「翌年もね」
「七戦まで必死に戦ってね」
「九十二年は西武が勝って」
 そうしてというのだ。
「翌年はね」
「ヤクルトが勝ったんだよね」
「最後は野村さんが勝ったのよね」
「九十二年なんか西武圧倒的有利って言われてたんだよ」
 下馬評ではそうであった。
「もうヤクルトはね」
「敵じゃないってね」
「四戦全勝もあるとか言われていて」
「それが七戦まで続いて」
「翌年も同じカードで」
「野村さんと森さんも必死で」
「化かし合いで」
「知略をぶつけ合って」
「そんな勝負を演じたんだよね」
 その獅子の時代はというのだ。
「それで翌年長嶋さんの巨人に負けてね」
「ああ、長嶋さんの勘が閃いて」
「カンピューターがね」
 有名なこれがというのだ。
「あの時はよくて」
「よかったら凄かったのよね」
「もう外れる時は酷かったけれど」
「長嶋さんはそうだったのよね」
「当たったらいいけれど」
 その時はというのだ。
「外れるとね」
「もう目も当てられないって」
「そんな風だったけれど」
 それでもというのだ。
「あの時はね」
「当たって」
「それで負けたんだよ」
 その年のシリーズもというのだ。
「それで終わったけれどね」
「長嶋さんの勘が当たって」
「その前後から主力がどんどん移籍して」
 そうなってというのだ。
「指導者になる人も大勢だったから」
「弱くなったのね」
「それで終わったんだよ、獅子の時代も」
「そうなったのね」
「うん、けれどその強さは」
「無茶苦茶なものだったのね」
「何でも毎年西武が優勝するから」
 それでだったというのだ。
「もう西武の優勝は見飽きたってね」
「そう言う人いたの」
「それ位だったんだ」
「ヤクルトファンからしたら羨ましいわ」
「昔のことだから」
 この話はとだ、彼は咲に話した。
「羨ましいと言われても」
「困るの?」
「今じゃないからね」
 今の西武の話でないからだというのだ。
「だからね」
「そう言われても」
「今の西武はあそこまで強くないから」
「優勝する時もあるでしょ」
「あの頃とは違うよ、というかね」
 ここで彼はこう言った。 
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