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ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~

作者:setuna
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第36話

 
前書き
ブウ編は一気に駆け抜けます。

悟飯とダーブラって持久戦に持ち込まれれば確実に悟飯負けてましたよね、戦闘力はともかく、バビディの魔術でスタミナが上昇してるわけだし。 

 
ビーデルの小さかった気が元に戻ったのを感じ、どうやら無事に仙豆は届けられたようだ。

そして悟飯の試合になったのだが、頭のバンダナが取れたことで正体が観戦に来ていたクラスメイトにバレた上に中々試合が行われないことで観客から野次が飛んでいる。

「悟飯の奴…人には超サイヤ人になるなって言っておいて自分はなるのか…」

しばらくして超サイヤ人を超えた超サイヤ人もとい超サイヤ人2へと変身した悟飯だが、超サイヤ人2であるにも関わらず迫力があまりない。

どうやら悟飯は悟林が思っていたよりも力が落ちているようだ。

そして悟飯はスポポビッチとヤムーからの奇襲でやられてしまう。

「おかしいな、いくら弱っててもあんな奴らにやられそうにないんだけど…ちょっとお父さん達のとこに行ってこようか」

「「はーい」」

チビッ子2人を連れて大人達の所に向かい、話を聞いてみる。

何でもピッコロの対戦相手は界王よりも高位の神である界王神であり、ある目的のためにこの大会に潜り込んで悟飯を利用したとのことで、どおりでピッコロがあっさりと棄権したわけだ。

ピッコロは地球の神と同化したので神の上下関係に敏感になってしまっていたようだ。

「これってもしかして私達も行くの?」

「勿論だ。どうしてこうなったのか知りてえしな」

「…ねえ、私が何のために下界に戻ってきたか忘れた?せめて、私と勝負してからにしてくれない?」

自分が下界に戻ってきたのはこの7年間の修行の成果を下界の強者である父親とそのライバルにぶつけるためだ。

なのに大会では享年9歳であることを理由に子供の部で闘わされ、そして界王神とか言う会ったこともない人物に時間を取られることには流石に焦りを覚える。

「え?いや、でもよ…」

「俺も同じ意見だ。俺はこの大会で貴様や悟林と闘うために来たんだぞ。」

悟林を援護してくれたのは私情もあるだろうがベジータだった。

この日のために鍛えてきた力を振るう機会を無にされそうになっているためか、どことなく苛立っているように見える。

「界王神様のことは悟飯に任せようよ。ピッコロさんもいるんだし…終わったら手伝いに行くからお願い。私と闘ってよ」

悟空は娘の欲求不満に満ちた目を見た。

昔の娘はもっと我慢出来ていたはずなのだが、やはりあの世でのあらゆる束縛のない7年間の生活でやはり娘の性格に変化が起きているようだ。

「うーん…しょうがねえな。オラ達は悟林と手合わせしてから行くからおめえ達は先に行っててくれ」

「やった!じゃあみんなは後でね!」

この場を離れていく悟林。

その目にはやっとここまで鍛え上げてきた自分の全開の力を解き放てることへの興奮が宿っていた。

「悟飯!」

「父さん?」

「怒れ悟飯、セルと闘った時のことを思い出して全ての力を出し切るんだ。そうすりゃあおめえは悟林にもオラ達にだって負けねえ。頑張れよ」

界王神と共に向かうであろう息子にアドバイスをするとベジータと共に悟林を追いかける悟空。

「なあ、悟天。パパ達と悟林さんの闘いだってよ!」

「うん!凄そうだね!」

「俺達も見に行こうぜ!」

チビッ子2人も父親と憧れになりつつある人の勝負に興味を惹かれて追い掛ける。

そしてしばらくして着いた場所は、この3人からすれば懐かしい場所だ。

「良い趣味してやがる」

ベジータが周囲を見渡しながら吐き捨てる。

それは地球に来るまで自身の実力に絶対の自身を持っていたベジータが初めて敗北した荒野であった。

そして当時のベジータの相手であった2人にとっても特別な場所でもあった。

「あの時の私は弱かったからベジータさんには最初の闘いは勝てなかった。2回目の時もお互い調整中だったとは言え完敗した。だけど、今はどうかな?お父さんも手加減なんかしないでよね?」

「おめえ相手に手加減なんか出来ねえさ…どっちからやる?」

「当然俺からだ。」

生前で散々組み手をしてきた悟空よりも機会が少なかった自分の方が優先されると言わんばかりのベジータの態度だ。

「おいおい、待てよベジータ。悟林はオラの子だぞ、だからオラが最初にやる!」

悟空からすれば久しぶりの娘との手合わせなのだから横取りされるなど堪ったものではない。

「ふざけるな!貴様はあいつが生きている時に散々やっただろうが!ここは俺からだ!」

「いやオラだ!」

順番で揉める2人に悟林は一瞬だけ微笑むと超化して一気に超サイヤ人2へと変身する。

「「!!」」

「どっちでもいいよ?…私が2人同時に相手すればいいんだからさ!!」

足に力を入れて地を蹴り、一気に距離を縮めると口喧嘩している2人に拳を突き出した。

即座にそれを避ける2人。

そして2人もまた超サイヤ人2へと変身する。

「チッ!じゃじゃ馬が!」

「しょうがねえな、久しぶりに…思いっきりやっか!!」

「そらっ!!」

悟林がベジータに向かって回し蹴りを繰り出し、ベジータはそれを左腕で受け止める。

「ふん!こんなものか!?」

腕に痺れが走るが、構わずに反撃とばかりに殴りかかるベジータの拳を掴み止めた瞬間。

「後ろだ!」

瞬間移動で背後を取った悟空が悟林を蹴り飛ばし、近くの岩に叩き付けた。

「カカロット!余計なことをするな!」

「そう固えこと言うなよベジータ。そんなことより来るぞ!」

岩を吹き飛ばしながら2人に突撃する悟林に対して悟空とベジータは構える。

「よーし!行くぞベジータ!」

「俺に指図するなカカロット!」

「楽しい勝負の始まりだー!」

3人が再び激突し、チビッ子2人が目を輝かせながら観戦している一方で、悟飯達は界王神と共に悟飯を襲ったスポポビッチとヤムーを追い、海や山を越えながら界王神から彼らの目的を聞いていた。

魔導師ビビディが作り出した魔人ブウの恐ろしさと、ビビディの息子のバビディが地球に封印されたブウの復活を目論んでおり、スポポビッチとヤムーは魔術で操られてその尖兵にさせられていること。

そして魔人ブウを蘇らせる為に必要なエネルギーを得る為に天下一武道会を狙うと予測し、悟飯のエネルギーを手に入れさせ、それを追って居場所を突き止めることであった。

しかし、話を聞いたピッコロは悟林達を無理にでも引き摺って来るべきだったと考えていた。

何しろここにいるのは自分も含めてサイヤ人に大きく実力に差を付けられている。

この中で最も強いであろう悟飯は7年間もの間、勉学に傾倒していたので実力がセルとの闘いの時よりも大分落ちている。

もしバビディの仲間にセルと同等かそれ以上の手下がいた場合は最悪の事態となるだろう。

そしてピッコロの不安は的中することとなる。

何とバビディの手下には暗黒魔界の王であるダーブラがいたのだ。

スポポビッチとヤムーは用済みとばかりに殺され、バビディ達が宇宙船に戻っていくのと同時にダーブラが突然こちらに襲い掛かり、キビトを瞬殺し、ダーブラの唾によってクリリンとピッコロが石化してしまう。

悟飯はクリリンとピッコロを助けようとして宇宙船に乗り込み、界王神も仕方なく宇宙船に乗り込んだ。

最初に立ちはだかったのはプイプイと言う惑星ズンと言う星の戦士だった。

流石に鈍っていてもこの程度の敵ならば超サイヤ人に変身せずとも倒せた。

途中で惑星ズンへと移動させられたものの、精神と時の部屋での修行経験がある悟飯は突然の重力変化に驚きはしたものの、難なくプイプイを倒した。

悟飯は優しさからかプイプイを見逃そうとしたが、バビディによって役立たずと判断されたか、スポポビッチのように破裂された。

次のステージの相手はヤコンと呼ばれる怪物。

見た目によらずかなりのスピードで悟飯を攻撃するものの、それらをかわし、ヤコンの得意な暗黒星に飛ばされ、真っ暗で視界を閉ざされてもギリギリでかわしながら反撃する。

超サイヤ人へと変身して視界を確保するが、ヤコンによって超サイヤ人のエネルギーを喰われて通常の状態に戻ってしまう。

界王神の神通力でサポートしてもらい、少々手こずりながらもヤコンを倒す。

そして次のステージでダーブラと戦うことになるのだが、セルと同等の実力を持つダーブラとの闘いは久しぶりの気の抜けない実戦である。

プイプイ、ヤコンの連戦の後であることもあり、悟飯は徐々に追い詰められていく。

7年間もの修行をサボっていたツケは想像以上に大きかった。

ダーブラの魔術を絡めた戦法に翻弄され、バビディの魔術によってタフネスを大きく向上させたダーブラにあらゆる面で劣っている悟飯はスタミナ切れを切欠に不利になっていく。

界王神も加勢してくれているが焼け石に水。

時間が経過するごとに悟飯のダメージは蓄積していき、焦りが募っていく。

修行をサボるのではなかったと、改めて後悔する。

界王神はいっそフルパワーで復活させてしまうよりはと思ったのか、下の階に繋がる入り口を破壊しようとするものの、ダーブラの気弾で吹き飛ばされて重傷を負ってしまう。

気絶している界王神を見て駆け寄ろうとするも、ダーブラに妨害されて弾き飛ばされてしまう。

ダーブラも決して無傷ではないが、まだまだ体力的に余裕がある。

闘いは一方的になり、最後に悟飯が見たのはダーブラが放った禍々しい気弾であった。

『フルパワーになったー!魔人ブウがフルパワーになったぞー!!』

意識が遠退く直前にバビディの歓喜の声が聞こえた。

そして場所は戻り、荒野で行われている戦闘も佳境に入っていた。

「ふんっ!」

「ぐうっ!?」

悟林の拳が悟空の腹に突き刺さり、動きを止めた悟空を蹴り飛ばす。

「つあっ!!」

しかしベジータはその隙を突いて悟林の顔面に肘打ちを叩き込んで吹き飛ばす。

「痛…っ…へへ…やっぱりお父さん達と闘うのは楽しいや…」

満足そうに鼻血を拭うと、深く深呼吸をした。

「凄く楽しい時間をありがとう…少しだけ見せてあげるよ…私の7年間の修行の成果…超サイヤ人を超えた超サイヤ人を…更に超えた力をね!!」

「超サイヤ人2を…超えただと!?」

「へ…へへ…凄えな…見せてくれよ!」

ベジータは驚愕し、悟空は超サイヤ人2を超えた…自分が目指した領域に悟林が到達していたことに悔しさと同時に誇らしさが混じった笑みでそれを促す。

「これが…超サイヤ人2を超えた変身…超サイヤ人3の変身だーーー!!」

悟林が膨大な気を放出し、放出した気が地球全体を揺らし始めた。

「くそったれ…超サイヤ人3だと…?人が苦労して変身した超サイヤ人2をあっさり乗り越えやがって…超えてやる…必ずな…!」

ベジータも凄まじい勢いで上昇していく戦闘力に震えながらも、まだまだ超サイヤ人の力には先があるのだと理解して笑みを浮かべて変身を待つ。

「す、すっげー…!」

「姉ちゃん…凄いや…!」

チビッ子達も未知の領域の変身に体と心を震わせながら変身を待つ。

「はああああ…!」

髪が更に逆立ったかと思えば髪がどんどん伸びていく。

そして一気に気合いを入れて戦闘力を超サイヤ人2とは別次元の戦闘力へと上昇させ…ようとした直後に別の場所から凄まじい気が爆発して全員の気が逸れてしまうのであった。

悟飯はダーブラの攻撃で意識を失ったものの、魔人ブウ復活による気の放出の影響で意識をすぐに取り戻すことが出来た。

「くっ…」

現れたブウは太っちょで、桃色の肌の魔人。

見た目はどこかコミカルだが、ブウの放つ気の強さに体が強張る。

悟飯が感じるブウの戦闘力はどうしようもないと言うほどのレベルではない。

悟飯が万全の状態で超サイヤ人2に変身さえ出来れば充分対処出来るレベルであった。

変身出来ればであるが。

今の悟飯はダーブラの攻撃でボロボロであり、修行不足による鈍りで超サイヤ人2への変身が出来ないのだ。

万全の状態でもある程度の怒りがなければ超サイヤ人2にはなれないのでこの状況は絶望的である。

そしてブウの怒りを買ったダーブラは更に気を上げたブウによって瞬殺され、それを見た悟飯は驚愕する。

自分では勝てない。

それを感じた悟飯は自分よりも強い3人がいる場所に界王神を連れて逃走しようとしたが、ボロボロの悟飯ではブウにあっさり追い抜かれてしまい、蝿を払うかのように叩き落とされた。

そしてブウの更なる気の上昇を感じ取った残ったサイヤ人達。

「何なのこの馬鹿でかい気は…?」

「とんでもねえ気だ…悟飯の気も小さくなってやがる…」

「チッ…悟飯め…怠けていやがるからそうなるんだ…」

ただ事ではないと判断した3人は戦闘を中断する。

「お父さん、仙豆は?」

「後2粒だけだ。」

布袋から取り出した仙豆の数は2粒だけだが、これくらいのダメージの回復には充分だろう。

「じゃあ、半分に出来るね…お父さん。瞬間移動お願い、トランクス君と悟天は…」

「俺も行くよ!」

「僕も!」

悟林が言い終わる前にトランクスと悟天が立候補した。

「えーっと、2人にはお母さん達の所に戻って欲しいんだけど」

「えー、俺達の強さは悟林さんも分かるよね」

「うんうん、絶対に姉ちゃん達の邪魔にはならないよ」

「いや、でも……危ないしなあ…でも置いていっても来そうだし……気を消して隠れてるなら良いよ」

このチビッ子達の性格を理解した悟林は隠れてるのなら連れていくと条件付きで承諾した。

「よし、みんなオラに捕まれ!」

2粒の仙豆を半分にして飲み込み、残りの半分のみを持って全員が悟空に触れるのと同時にブウの元に瞬間移動する。

そこにはブウとボロボロの界王神と悟飯がいた。

「悟飯!」

「ね、姉さん…!」

悟林が駆け寄って声をかけ、悟飯は目を開けると悟林がいることに安堵した。

「頑張ったじゃない。ほら仙豆」

「ぼ、僕より界王神様を…!僕より酷い怪我なんです…!」

「あ、本当だ」

死にかけの界王神に仙豆を与えて悟飯を任せると、チビッ子が隠れたのを確認して気を高める。

「何だ?お前達…ブウと遊びたいのか?」

「そうだよ、私達が君の遊び相手だ」

油断せずに構える3人。

遊び相手が出来たブウは嬉しそうに笑って…駆け出した。

「「「!?」」」

「どーん!!」

「「「がっ!?」」」

ブウの突進をまともに喰らった3人は勢い吹き飛ばされながらも空中で体勢を整えて更に目付きが鋭くなる。

先程の一撃でブウの底知れぬ何かを感じた3人は更に気を高めてブウに突撃する。

「だあああ!!」

「うおりゃあああ!!」

「はああああ!!」

3人がかりでの猛攻。

流石のブウも3人がかりでの攻撃には手も足も出ないのか一方的に攻撃を受けている。

攻撃からベジータが抜け、悟空と悟林が絶え間なく攻め続けると、少しの間を置いてベジータの怒声が飛んだ。

「退け、貴様ら!ファイナルフラーッシュッ!!!」

その声に応えるように2人が距離を取った次の瞬間、ブウの体を金色の気功波が飲み込んだ。

ベジータの最大出力のファイナルフラッシュがブウに直撃したのだ。

「やった!相変わらずベジータさんの技は凄い威力だなー」

「まともに喰らったぞ!」

悟林と悟空も笑みを浮かべながら様子を見る。

チビッ子達もブウを倒したと思ったのだろうが、別の離れた場所にいる界王神と悟飯の表情は険しい。

下半身が吹っ飛んだブウは顔だけ動かすと笑いながら下半身を再生した。

「いっ!?元に戻っちまったぞ!?」

「再生…まるでセルみたいだね…」

「不死身か…奴は…」

再生を終えたブウは体を動かすとピタリと止まってこちらを見た。

ブウが笑みを浮かべた次の瞬間に悪寒が走る。

「ちょっと…痛かったぞ…へへへ…お前らなんか…」

怒りが籠った低い声とどんどん膨れ上がっていく気に全員の体が硬直する。

「あ、あいつ…どこまで気を上げやがんだ…!?」

「化け物め…!」

「や、やばい!みんな、逃げ…」

「嫌いだーーーっ!!!」

ブウの気が広範囲に放出された。

強烈な気爆破に咄嗟に防御体勢に入ったものの、抗うことも出来ずに3人は吹き飛ばされる。

ブウの強烈な気爆破をまともに受けた3人は死は免れたものの、かなりの深手を負ってしまう。

ダーブラの石化から解放されたピッコロも超サイヤ人2の3人が雑魚扱いされていると言う悪夢のような光景に絶句する。

「(ご、悟空達が3人でかかってもまるで相手になっていない…このままでは全滅だ…!)」

しかもあれだけの攻撃をしたと言うのにブウは息が全く乱れてはいないため、誰がどう見ても悟空達の不利であった。

「う…く…」

3人の中でダメージが浅かった悟空が何とか立ち上がろうとするが、自分にかかる影に目を見開いて顔を上げると、ブウがニヤリと笑いながら悟空に手のひらを向けていた。

「消えちゃえ~」

直後にブウが悟空に気弾を放った。

「うわあああああ!!」

まともに喰らった悟空は絶叫しながら気弾に飲まれて吹き飛ばされていき、ここから大分離れた場所で小規模な爆発が起きた。

「お…お父さん…」

悟林を含め、その光景を見ていた者が誰もが絶句する。

地球最強の男があっさりとやられてしまったことに。

「あ…ああ…」

「お父…さん」

悟天は父親がやられたショックで座り込んでしまい、悟飯もあまりのショックに呆けていた。

しかし、界王神が悟飯を担ぎながら悟林に向かって叫ぶ。

「孫悟林さん!孫悟空さんは私が助けます!」

悟飯を連れて悟空が吹き飛ばされた場所に向かう界王神。

それを見逃さないブウが界王神を攻撃しようとした時、ベジータと悟林がそれを気功波を放つことで妨害する。

体に風穴が空いてもすぐに損傷箇所を再生するブウに流石のベジータも苦笑を浮かべる。

「ちくしょう…強い上に不死身じゃ話にもならねえ…」

「あはは…本当にどうしよう…」

ダメージによって大分気が落ちている悟林とベジータ。

かつて闘ったセルの再生能力にも苦しめられたが、セルの再生能力はピッコロの再生能力と同じで体力と引き換えの物であり、ダメージは蓄積するからどうしようもない程ではなかったが、ブウの再生能力はセルの再生能力を鼻で笑える程に強力であった。

ブウは弱っている2人に襲い掛かろうとした時。

「「止めろーーー!!」」

ショックから復帰した悟天とトランクスが超化と同時にブウを蹴り飛ばした。

「ふ、2人共!?」

「大丈夫姉ちゃん!?」

「パパ、大丈夫!?」

怪我をした2人を心配する幼い子供達。

「ば、馬鹿が!何で出てきたんだ!」

助けられたものの、想像以上の怪物であるブウの前で2人の参戦はベジータとして望ましい物ではない。

「2人共、危ないから逃げて」

「嫌だよ!僕達だって闘えるよ!」

「そうだよ!このままだと2人共殺されちゃうよ!!」

悟林が逃げるように言っても幼い2人は聞き入れようとはしない。

そんな頑固な子供達にベジータは深く息を吐くと悟林に1つ尋ねた。

「おい、悟林…超サイヤ人3とやらで奴を倒せるか?」

変身直前だったので詳しい力は分からないが、あれはブウにも劣らない力だった。

超サイヤ人3ならブウを倒せるのかと尋ねる。

「…多分…倒せると思う…」

答える悟林は少々自信が無さそうであった。

「超サイヤ人3ってのはね?あの世でしか使えない変身なの…時間の概念がある現世じゃ使うエネルギーが多くて一気に疲れちゃうの…一撃で倒せるなら良いけどあいつの回復力を考えると…」

単純な戦闘力なら上回れるが、不死身のブウを一撃で倒せる自信がないと言う。

強大なパワーと引き換えに燃費が恐ろしく悪い短期決戦に特化した超サイヤ人3はブウとの相性がどこまでも悪い。

「そうか…」

それを聞いたベジータは覚悟を決めた。

命を捨てる覚悟を。

「お前達はどこか遠くへ避難しろ。魔人ブウとは俺1人で闘う」

その言葉に3人は目を見開く。

「そ、そんな!ベジータさん!私も残って…」

「馬鹿が、貴様は一度死んでいるんだぞ。そんな状態で死ねばどうなるか分からんだろうが」

ベジータは知らないが、一度死んだ状態で死ねば完全に消滅して現世とあの世から存在が消えてしまう。

それでも死んでいる状態で死ねば取り返しのつかないことになるくらいは想像出来る。

「い、嫌だ!俺達も闘う!パパ1人じゃ殺されちゃうよ!」

「無理だ…あいつには何人で掛かっても…普通の闘い方をしていては…」

「ベジータさん…まさか…」

「悟林…トランクスを任せたぞ…トランクス…ブルマを…ママを大切にしろよ」

ベジータのしようとしていること理解した悟林は目を見開く。

「トランクス、お前は人造人間との闘いの時以外で一度も抱いてやったことがなかったな…」

「パパ?」

「……抱かせてくれ」

ベジータはトランクスを引き寄せ、片手で抱き締めた。

ぎこちない抱き方だが、それはベジータの息子への精一杯の愛情表現。

「姉ちゃん…」

不安そうに悟林を見上げる悟天。

少ししてベジータがトランクスを放し、悟林に押し付けた。

「ベジータさん」

「こいつらを連れていけ。分かっているな、お前のやるべきことは…」

「分かってる………ごめんね、2人共…」

ブウの気が少しずつ近付いているのに気付いた悟林はトランクスと悟天を抱え、2人は必死に抵抗するが実力差によって離れることは出来ない。

「ベジータさん…ごめんね。そしてありがとう」

謝罪と礼を言いながら悟林はこの場を離脱した。

「パパーーーっ!!」

離れていく息子の声を聞きながらベジータは過去にドラゴンボールで不老不死になろうと地球に立ち寄り、初めて悟林と出会った時のことを思い出した。

「頼んだぞ、悟林……初めて会った時は弱かったガキがあそこまで強くなるとはな……俺ともあろう者が奴ら親子や仲間の影響を受けて穏やかになっていき、家族を持って居心地のいい地球を好きになっていくなど昔の俺を思えば考えられなかった。」

サイヤ人の王子として星を滅ぼしてきたベジータ。

当時の自分なら地球で暮らし、妻子を得て、そして守るために命を懸けるなど考えられなかっただろう。

「ピッコロ、さっさと貴様も逃げろ。巻き添えを喰らうぞ」

バビディを始末したピッコロに逃げるように促すと、ピッコロは複雑そうにベジータを見つめる。

「貴様…死ぬ気だな…」

「…最後に1つだけ教えてくれ。俺が死んだらあの世ではどうなる?」

「……善行を積んだ者は肉体を与えられるが、お前は罪もない人々を殺しすぎた…死ねば肉体は無となり、魂も悟林とは違う世界に運ばれる…そこで魂は洗われ、記憶もなくし、新しい生命体に変えられる…」

「…そうか…残念だ…」

どれだけベジータが地球の生活で穏やかになろうが生前の罪は消えない。

生前に善行を積んだ悟林とは違うのだ。

それを聞いたベジータは少々残念そうに呟いた。

ピッコロとクリリンが去っていくのを見たベジータはブウを見据える。

思い返せば、闘いばかりの人生だった。

サイヤ人の王子として力を求め、フリーザによって惑星ベジータが破壊されてもフリーザの下で働いた日々。

ドラゴンボールを求めて地球にやってきた時に悟空達と闘い、ナメック星での共闘。

そしてフリーザに殺されたことは昨日のように思い出せる。

帰って来た悟空と悟林と未来のトランクスの超サイヤ人に奮起し、超サイヤ人に目覚めた時のことは決して忘れることはないだろう。

そして人造人間との闘いでセルを完全体にしてしまい、結果的に悟林を死なせる遠因になったことは本人は気にしておらずともベジータの心の奥に残り続けた。

「さらばだ…ブルマ…トランクス…悟林…カカロット……」

心に強く刻まれた存在の名を呟きながらベジータは限界以上の力を振り絞った。

遠く離れた場所でトランクスと悟天を抱えながら飛んでいた悟林だが、抱えられている2人は必死に抵抗する。

「放して!放してよ悟林さん!パパが…パパが!」

「駄目だよ。2人を天界に連れていく」

「そんな!おじさん死んじゃうよ!」

「いい加減にしなさい!!!」

抜け出そうともがく2人だが、悟林の怒声によって硬直する。

「ベジータさんがどれだけの覚悟で私達を逃がしてくれたと思う?ベジータさんの気持ちを無駄にする気?」

「でも…でも…!」

悟林の言葉は理解出来ても納得は出来ない。

トランクスにとってベジータは大好きな父親なのだ。

直後に背後で大爆発が起き、ベジータの気が消えたのを知ったトランクスは泣いた。

悟林は怒りで目の前が真っ赤になるのを感じながら天界へと向かった。

天界に行くとデンデが沈痛な表情で3人を出迎え、悟林の治療をしてくれた。

後にピッコロとクリリンが来てブウがベジータの捨て身の自爆でも生きていたと知らされ、絶望的な状況に頭を悩ませることになる。

「姉ちゃん…これからどうすればいいの?」

悟天とトランクスが不安そうに悟林を見つめる。

悟空と悟飯はおらず、ベジータは死んでしまった。

頼りになる大人が一気にいなくなってしまったことに幼い2人は不安で押し潰されそうになる。

「どうする?情けない話だが、俺には何も策が思い付かん」

超サイヤ人2すら一蹴するブウの強さには流石のピッコロも希望を見出だせずにいた。

「でも悟林ちゃんが生きてるのが不幸中の幸いだ。魔人ブウを倒せるのは悟林ちゃんだけだよ。悟林ちゃんがこの世にいられるのは1日だろ?…まだ少し時間が残ってる…」

「クリリンさん…確かに倒せる可能性はあるよ…2つだけ…まず、1つは私が超サイヤ人2を超えた変身…超サイヤ人3で挑むこと」

「ス、超サイヤ人3だと…!?まだ上の変身があるのか!?」

「うん」

超サイヤ人2でも想像絶する力だと言うのに更に上の段階が存在することにピッコロは驚愕する。

「でもね、超サイヤ人3は凄く変身にエネルギーを使うの。使ったらこっちにいられる時間が極端に短くなる…だから倒しきれなかったらアウト」

「そ、そうなのか…2つ目の可能性は?」

「…フュージョンだよ」

「「フュージョン?」」

クリリンの問いの答えに悟天とトランクスの声が被る。

ピッコロもクリリンも2人と同じ気持ちなのか疑問の表情を浮かべている。

「フュージョン…!融合ですね!メタモル星人の得意な術だ!」

「知ってるの神様?そうだよ、あの世で会ったメタモル星人に教えてもらったんだ。気と体格が近い場合だけに出来る術。2人の力を合わせただけじゃなくて大幅にパワーアップするんだ。本当に凄かったんだ…メタモル星人の2人は弱くて大人しかったんだけど、フュージョンを使ったら相当な戦士に変身したんだ。だからお父さん達の3人のうち誰かがフュージョンしてくれれば…」

「な…なるほど…悟空、悟飯にベジータのうち2人がいればフュージョンをして…とてつもない戦士となり魔人ブウと闘えたわけだな!」

「そういうこと、でも術は教えてもらえたけど試したことないんだ。あの世で私と同じくらいの人はいなかったし…おまけに術を覚えるのにかなり時間がかかったから…無理だったね…お父さんがどうなったのか分からないし、悟飯はいつ戻れるか分からないし…ベジータさんは………最悪の事態だよ」

空気が重くなり、ピッコロとクリリンが何も言えなくなる。

「だったら俺達がやるよ!」

「うん!」

しかし、そこに2人の声が響き渡る。

全員の視線が向けられ、トランクスと悟天が悟林を見上げる。

「俺と悟天なら体も気の大きさも同じだよ。俺達ならそのフュージョンが出来るよね!?」

「2人共…」

「お願いだよ悟林さん!俺達にフュージョン教えてよ!パパの仇を取るんだ!!」

トランクスの決意に満ちた表情にベジータの面影を見た悟林は少し目を閉じると頷いた。

「…分かった。でも時間がないから厳しく行くよ!クリリンさんはお母さん達をここに連れてきて!ここなら少しの間は安全なはず。良いよね神様?」

「…どうでしょう…」

「神はお前だ。自分の考えで判断しろ…」

ピッコロの言葉にデンデは少し沈黙した後に口を開いた。

「…僕は構わないと思います。今この地球があるのは皆さん達のおかげなのですからそれぐらいは…」

「ありがとう神様!ピッコロさん、ギリギリまで私が教えるけどそれだけじゃ時間が足りないから、私があの世に帰ったらピッコロさんが引き継いで教えてあげて」

「よし、分かった!」

「良いぞ良いぞ!希望が出てきた!」

クリリンが見えてきた希望に喜ぶが、ブウのことを考えると不安も覚えるピッコロである。

「ただし…トランクスと悟天がフュージョンとやらを完成させるまでかなり時間がかかりそうだ…それまでには相当な数の人間が魔人ブウの犠牲になるだろう…もしかしたら絶滅…いや、地球そのものが消滅させられるかもしれん…これは賭けだ…堪えねばならんぞ…」

「もし絶滅させられてもピッコロさん達が生き残ってドラゴンボールさえあれば元に戻せる…悟天、トランクス君…頑張ろうね」

「「はい!先生!!」」

幼さ故の真っ直ぐさを秘めた声に悟林は微笑むと目付きを鋭くしてブウの気を感じる場所を見据えた。 
 

 
後書き
力を見せたためにチビッ子達も素直にフュージョンを学んでくれます。 
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