僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結
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15-⑵
次の日の朝、3人でお稲荷さんに出掛けた。私は、昨日お母さんから貰った小紋の着物を何とか独りで着付けした。
参道は混んでいて、私は、お父さんと腕を組んで歩いた。蒼のほうを見ると、頷いていたように思えたからだ。私達は、お詣りを終えた後
「なんか、食べて行く?」って、私が聞いたら、お父さんは
「いや 清音が来るから、早く帰ろう」と、言ったので、早々に帰ってきた。清音には、帰る時間を知らせたので、私達が家に着くと間もなくやってきた。
「あけましておめでとうございます」と、やってきた清音は振袖姿だった。
「清音 きれいね びっくりしたわ」
「えへー おばぁちやんがね 買ってくれたの 昨日も、明璃と一緒に着物着て八坂さんに行ったんだよー これお土産」と、ベビーカステラを差し出した。
「そう 田中さんがー 清音のことが可愛いんだねー」
「うん ウチの孫だからお正月くらいは着飾ってほしいんだって きれい でしょ」
「清音ちゃん きれいだよ さすがだね」と、蒼も出てきて言って居た。
「お父さん あけましておめでとうございます」と、清音が挨拶すると
「なにを 他人行儀なこと言ってんだよ ほおー 京友禅か 立派なもんだわー 良かった 清音」と、私には、お父さんがどういう心境なのか解らなかった。
そして、私は、角煮を温めて、出して
「これ お父さんが、清音に食べさせたいって、作ったのよ」
「お父さんが・・ おいしそう いい匂いするね」と、清音が言って食べだした。
「ウー とろとろ お父さん、おいしいー」と、言ったかと思うと、少し涙ぐんでいた。お父さんは、ニコニコしながら、コップに冷酒を注いでいた。
「清音 田中さんはお元気なの?」
「ウン 朝ね 近くを、二人で歩いてきたんだ。用も無いんだけど、コンビニに寄ったりして、あの人、私を近所の人に見せたかったみたい。会う人には、自慢げにしていたものー」
「そう 嬉しいのよね 田中さん 清音が居てくれて・・今まで、寂しいお正月だったから」
「去年は、お姉ちゃん達が来てくれて、楽しかったって言ってたわよ お姉ちゃんと仲良くしなさいねって、説教されたわ」
「うふっ 本当のおばぁちゃんみたい」
「昨日ね 明璃ったら ひどいのよー お詣り済んで帰るときね、ベビーカステラ 売っている露店あったの 割と、夫婦らしき年取った人がふたりでやっていたの あんまり、売れていないみたいだったんだけど、うさぎとカメとかニャンコとか色んな動物の顔の形していたのね だから、明璃たら おもしろいー とか言っちゃって・・ その人達に話掛け始めてね そしたらさー 急に わぁー ニャンちゃんだ 可愛い― おいしそう とか大きな声で、言い始めて・・ ウチにも、声を出せと言ってね そうしたらさー 何人かの子供達が寄ってきてね 売れ出したのー 急に忙しくなったのよ」
「そう らしいと言えばね 明璃ちゃんのやりそうなことだよね」
「あいつ それだけじゃぁないんだよ 襷借りてさー 自分でも、焼きたいって、やり出したんだよね ウチには、呼び込みをしっかりしろよって・・なんか、ひどくない?」
「うふふー 振袖のままねぇー」
「でもね ウチも声を張り上げていたから、いつも、2.3人並んでいてさー とんでもないよー 帰る時に、そのおじいさんに、えらいことお礼を言われちゃってさー いっぱい、カステラ持たされちゃったー」
「それが さっきの カステラなのね」
「うん 形がくずれたやつだって だけど、明璃ってすごいね なんか あいつと、やった後、スカーっとするんだ」
「うん 不思議な娘ね でも、あんた達 仲良くしてて、安心したわ いつも、なんだかんだ言って楽しそうだもの」
「そうだね 明璃には感謝している それからね、京極の天満宮に行って、仲好しお守り買ってね、あいつは青、ウチは赤を分けて持っているんだぁー」
「ねぇ 清音 あいつって呼び方 良くないんじゃぁない?」
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