| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Fate/WizarDragonknight

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

邪神 ガタノゾーア

 ガタノゾーアの触手が、石像となった煉獄に迫る。

「そうは……させない!」
『ウォーター プリーズ』

 ウィザードは、サファイアの指輪とともに駆け出す。
 水の魔力を内包した宝石を全身に備え付けたそれは、魔力に特化した姿。さらに、ウィザードはすぐさま他の指輪を使用。

『コピー プリーズ』

 ガタノゾーアの触手がウィザードを叩きつける寸前、その姿は二つに分裂する。
 空振りとなった触手へ、二人のウィザードは同時にソードガンを振り下ろす。

『『ウォーター スラッシュストライク』』

 二重の刃は、とてつもなく太いガタノゾーアの触手を切り落とす。

「煉獄さんには、手を出させない!」
「へえ……ハルト君。君も大変だねえ」

 そんなウィザードへ、トレギアがクスクスと笑む。

「セイバーも君も……本当に」
「何が言いたい?」
「絆って不便だねえって思っただけさ。セイバーも君なんか庇わなければこんな目に遭わずにすんだのに。君だって、さっさとセイバーを見捨てればいいのに」

 ウィザードは、そんなトレギアの言葉は全て無視することにした。何しろやっと破壊したその触手は、まだまだ無数にある。
 一瞬気絶しそうになる感覚に襲われながらも、ウィザードはさらに指輪を切り替える。

『チョーイイネ ブリザード サイコー』

 水のウィザードが操る最強魔法。ガタノゾーアの触手、そのうちウィザードに面する部分が瞬時に凍り付いていく。

『ビッグ プリーズ』

 さらに、巨大化した蹴りで触手を氷ごと踏み砕く。

「____________!」

 ガタノゾーアは悲鳴を上げる。
 それにより、ウィザードを完全な敵とみなした。
 その逆転した眼差しをウィザードへ向け、その触手を差し向けてくる。

「っ!」

 ウィザードは体を回転させながら回避。そのままウィザーソードガンを発砲した。
 銀の弾丸がガタノゾーアの巨体を狙うが、その巨大な触手が素早く弾き飛ばしていく。
 さらに、背後より回り込んだガタノゾーアの部位……甲殻類の鋏が、ウィザードの首を挟み込む。

「ぐあっ!」

 その凄まじい力に、ウィザードの体が持ち上がっていく。
 だが。

『リキッド プリーズ』

 水のウィザードの特徴の一つ。専用魔法である液状化は、ウィザードの体を液体にし、ガタノゾーアの鋏より逃れた。
 だが、それに対するガタノゾーアの対応は素早い。
 その口より吐かれた、闇の霧。
 それは、液体の体を持つウィザードであっても回避はできない。
 液状のまま、体が爆発、ウィザードは地面を転がった。

「まずい……!」

 だが、ガタノゾーアの攻撃は終わらない。
 闇霧はとどまることを知らず、そのまま収束していき、ウィザードを穿かんと迫って来る。
 一瞬だけウィザードの足が回避のために踏み込むが。

「避けられない!」

 背後のいる煉獄の石像。
 ウィザードは、サファイアからエメラルドの指輪へ入れ替える。

『ハリケーン プリーズ』

 闇霧を吹き飛ばすように、風のウィザードが竜巻を巻き起こす。
 さらに、ウィザーソードガンを銃の形態にする。

『ハリケーン シューティングストライク』

 魔力を風の形として集約させた銃弾。
 それは、闇霧を掃いながら、ガタノゾーアへ命中。その硬い甲殻に、爆発を与えた。
 だが。

「何て頑丈な奴だ……!」

 ガタノゾーアは、ほとんど怯まない。またしても咆哮とともに、ウィザードへ触手を放ってくる。

『ランド プリーズ』

 ウィザードの姿が土のものになったと同時に、その四肢を縛り付ける触手。さらに、体への締め上げが、ウィザードの体を破壊していく。

「ぐあっ……!」

 魔力が維持できなくなり、崩壊していくウィザードの体。頑丈さが自慢のトパーズの部位に、メキメキとヒビが走っていく。

「まずい……っ!」

 その闇霧。
 体に走る痛みから考えれば、その危険性は察せられる。
 このまま浴び続けては危険だと理解、体を無理矢理動かす。
 力強いガタノゾーアの肉体に対し、ウィザードは何とか、ホルスターの指輪を引っ張り出した。

『ドリル プリーズ』

 体に宿る、回転の魔法。
 それは、ガタノゾーアの拘束を振りほどき、そのままウィザーソードガンで銃撃。
 ガタノゾーアの甲羅から火花が散るものの、明確なダメージにはなっていない。
 さらに、触手がウィザードの首を絞めつける。

「ぐっ」

 太くて丈夫な触手。
 だが、物理に秀でた土のウィザードになっていることが幸いした。

「うおおおおおおおおおおおおおっ!」

 声を荒げるウィザード。
 すると、太い触手が音を立てて千切れた。
 ガタノゾーアの悲鳴。
 その隙に土のウィザードはガタノゾーアへ接近。
 組んだ両手の振り下ろし。所謂ダブルスレッジハンマーで、ガタノゾーアの顎を叩く。
 だが、ガタノゾーアの攻撃手段は触手だけではない。
 甲殻類の鋏らしき部位が背後から襲ってくる。

『ランド シューティングストライク』

 ウィザードは背後からの気配を察し、即座にトパーズの銃弾で応戦。
 ファントムさえも爆発させる技だが、ガタノゾーアの部位には一時撤退以上の成果にはならなかった。

「やっぱり硬い……!」

 さらに、振り向いたウィザードへ、触手のパンチ。それにより、大きく転がった。

「っ……!」

 痛みながら、ウィザードは立ち上がる。
 ソードガンを用いて、何度も何度もガタノゾーアへ打ち付ける。
 だが、圧倒的な防御力を誇るガタノゾーアへは効果がないどころか、むしろその足元から溢れ出てくる闇により、ウィザードへのダメージが大きくなっていく。

「やばい……!」

 さらに、逃げようとしてもまたしても無数の触手がウィザードの動きを阻んでいく。
 そして。
 紫の光が、ガタノゾーアの口元に収束していく。
 また、あの石化光線が来ると、ウィザードが危惧した時。

「よもやよもやだ」

 その声は、どこからか。
 それは、ウィザードの背後に聳える石像から。
 だが、その全てが硬質化しているはずのその口元が動いている。
 目を凝らしてみれば、石像には赤い炎がオーラのようにその身を包んでいる。

「こんな状態で動けないとは……」

 頭頂部から、石の表皮が剥がれていく。
 燃え盛るような赤を纏う煉獄の姿が、徐々に露わになっていく。

「柱として不甲斐なし……!」

 石像のままの四肢が、動きだす。
 煉獄とともに石化している日輪刀を、目の前に深々と突き刺す。
 すると、そこを中心として、煉獄の石像の周囲を炎の円が走っていく。

「穴があったら入りたい!」

 剥がれていく石化。
 そして振るわれる日輪刀の炎は、ガタノゾーアを吹き飛ばし、ウィザードの動きを封じる触手を切り飛ばした、
 やがてそこには。
 元に戻った、煉獄の姿があった。

「何っ!?」

 流石のトレギアも、煉獄のその状態には言葉を失うほかない。
 明らかに、目を疑っていた。

「ただの人間が、石化から逃れられるはずがない……!?」
「そうか? これ程度、造作もない」
「何だと……!?」

 煉獄は、見開いた目を少しも細めることなく宣言した。

「呼吸法を極めれば、あらゆる状況に対応できる! この石化程度、人間の力で打ち破れる!」
「戯言を……!」
「だが! これが呼吸! 俺たち鬼殺隊の! 力の源だ!」
「苛立たせてくれる……! ガタノゾーア!」

 トレギアは首を掻きながら、ガタノゾーアに命令する。
 すると、ガタノゾーアは唸り声とともに動き出す。

「行くぞ! 松菜青年! 君に助けてもらった借りは、しっかり返さないとな!」
「いや、こっちこそ。煉獄さんに助けてもらったし」

 ウィザードは、ルビーの指輪を取り出しながら言った。

「だから、今回のことはおあいこだよ」
『フレイム プリーズ』

 ウィザードの姿が、土から火に代わっていく。
 その時、煉獄の剣から漏れ出す炎もまた、魔法陣に吸収されていく。

「なるほど! では、これから貸し借りなしで行こうか!」
「名案。行くよ!」

 ウィザードと煉獄は、同時に駆け出す。
 ガタノゾーアは闇の霧を槍状にまとめ上げ、連発して放つ。
 それは、ウィザードたちに弾き返され、周囲を爆発させるにとどまる。
 さらに、鞭のようにしなるガタノゾーアの触手。
 だが、すでにウィザードと煉獄、二人の炎の前には、すでにそれは役に立たなかった。

『フレイム スラッシュストライク』
「炎の呼吸 壱の型 不知火!」

 二重(ふたえ)の赤い刃が、ガタノゾーアの触手、そして本体を切り裂く。
 すると、ガタノゾーアが吠える。
 その巨体よりあふれ出した闇の霧が、ウィザードと煉獄の体を暴発させていく。

「これは……」
「こちらの攻撃はあまり利いてないようだ! 松菜青年!」

 ウィザーソードガンには、まだ炎のスラッシュストライクが残っている。
 ウィザードはその武器を回転させながら、ウィザーソードガンを投影する。
 炎を刀身に走らせたままの銀の武器は、そのまま真っすぐとガタノゾーアの甲殻に突き刺さった。

「あそこは……」

 ウィザーソードガンが運よく突き刺さった箇所。
 そこは前もって、煉獄が集中して切り刻んだ傷口だった。
 そして、二度の刃が傷をつけたということは、そこは他と比べて……。

「煉獄さん! あそこ! ウィザーソードガンが刺さったところ、多分ほかのところよりも少し薄くなってる!」
「ならば! あそこに、俺たちの全力をぶつけよう!」

 さらに、ガタノゾーアは攻撃の手を緩めない。全身より溢れた闇の霧より、無数の翼をもつ怪獣たちが現れた。
 蛾を思わせる、小型の鳥型の生命体。
 その名を、ゾイガー。

「足止めのつもりか!」

 ウィザードは足に力を込める。
 炎の魔力が足に集中し、やがてその蹴り技には、炎が宿っていく。

「だああっ!」

 蹴りの一発一発が、小さなキックストライクとなる。
 それは、ゾイガーを片っ端から爆発させていく。

『炎の呼吸 伍ノ型 炎虎!』

 さらに、煉獄の炎。
 虎の形をした炎の斬撃が、ゾイガーを瞬時に灰として、ガタノゾーアの表皮さえも焼き焦がす。
 そして、ガタノゾーアへの道が拓いた。
 ウィザードと煉獄は、ともに接近。それぞれ蹴りと剣で、ダメージを重ねていく。

「松菜青年! 飛べ!」

 その言葉の真意は知らない。
 だが、ウィザードは迷わず足裏を合わせ、跳び上がった。

「昇り炎天!」

 下から盾へ流れていく炎の刃。
 それは、ガタノゾーアとともに、ウィザードの足元を上昇させていく。

「ありがとう! よし……」

 ウィザードはさらに、上空からベルトを操作。

『ルパッチマジックタッチ ゴー ルパッチマジックタッチ ゴー』

 ウィザードはすさかず、ベルトを操作。
 必殺の指輪を探り当て、右手に付けた。

『チョーイイネ キックストライク サイコー』
「だあああああああああああああああっ!」

 赤い魔力を込めた蹴り。通常の威力に加え、煉獄よりバトンタッチされた炎によりさらに威力が上がったものだった。
 それは、空中に浮かび上がったガタノゾーアの甲羅へ命中、そのまま工場の機材ごと押しつぶしていく。
 だが。

「命中が甘かった……!」

 ウィザードの自己分析を証明するように、爆炎よりまだピンピンしているガタノゾーアがその姿を現す。

「ならば、もう一度! 今度は、俺も力を貸そう!」

 煉獄もまた、これで討伐しようと、日輪刀に力を込める。
 ウィザードは頷き、再びウィザードライバーを操作した。

『ルパッチマジックタッチ ゴー ルパッチマジックタッチ ゴー』
「全集中 炎の呼吸 奥義」

 煉獄もまた、自らの日輪刀に全ての力を込める。
 構えとともに、彼の周囲には炎が満ち溢れ、ガタノゾーアの闇の霧さえも立ち消えていく。
 そして。

『チョーイイネ キックストライク サイコー』

 二度目のキックストライク。
 魔力を操作し、引力以上の力を体にかける。
 そして、煉獄が動いた。

「玖の型」

 空中にウィザードが飛ぶと同時に、煉獄の体が炎の竜巻に包まれる。
 竜巻はあたかも龍のように吠え、そのままガタノゾーアへ迫った。

「煉獄!」

 煉獄自身と同じ名前を冠する、煉獄の奥義。それは、際立った威力とともにガタノゾーアの甲羅を破壊せんとする。
 逆巻く二つの炎。それは、ウィザードの蹴りと煉獄の爆発という形となり、互いの威力を引き上げていく。

「「だあああああああああああああああああああっ!」」

 ウィザードと煉獄は、互いに声を張り上げる。
 やがて、ガタノゾーアの固い甲殻。それは、圧倒的な防御力を誇り、ウィザードと煉獄の炎さえも遮断する。
 だが、ただ一か所。ウィザーソードガンが付けた傷跡だけは、ガタノゾーアの内部まで入口を開いていた。
 ウィザードと煉獄の炎は、そこからガタノゾーアの内部に入り込む。
 そしてその瞬間、ガタノゾーアの堅牢な甲殻は、ガタノゾーアを閉じ込める棺桶となる。

「______________」

 そして。
 煉獄と、変身解除したハルトが着地すると同時に。
 世界を闇に包み込む闇は。
 二つの炎により、永遠の光の中へ突き上げられるのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧