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マスコットから見た日本シリーズ

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第六章

 神戸に入ると皆練習をした、準本拠地とはいえ敵地でしかも寒い、周りはここでまたオリックス有利だの騒いだ。
 けれどそれが何だ、僕はそう思った。それは今明るい顔で神戸で練習をしている選手の皆と寒い晩秋の神戸に集うファンの人達そして選手の人達もファンの人達も温かい目で見守ってくれている監督さんを見て言って欲しいと。三勝二敗でも実質互角とか相手のエースは絶対に勝つとかオリックス有利とか言う声はもう何でもなかった。
 勝つのはヤクルトだ、僕はつば美に言うとつば美もその通りだと答えてくれた。そうしてだった。
 一日、移動日だけれど練習に励んだその日を終えた。この練習が身体と気持ちをほぐして敵地を知ることが出来た。この一日を経てナインの皆は最高のコンディションを整えることが出来た。
 いよいよ第六戦となった、第六戦では高梨さんがマウンドに上がった、高梨さんは僕にあいつ、あちらのエースには絶対に負けないよあいつには勝たせないとよ満面の笑顔で語ってくれた。ヤクルトは六試合全部先発の人が違うけれどどの人達も悲壮感はなくて明るい爽やかな笑顔でマウンドに上がってくれる。ナインの人達も同じだ。こうした人達だから僕は大好きなんだ。その大好きな人達と一刻も早く日本一を喜びたかった。
 神戸は本当に寒い、晩秋のうえに夜でしかも神戸の風は強い、甲子園で僕もよく知っている六甲おろしが今は特に堪えた。けれどそれは少しだけのことだった。
 冷えている僕はベンチの皆と球場に来てくれたファンの人達の熱気が温めてくれた、そして僕自身も熱気を持っていた。寒いのは一瞬だった。試合がはじまると寒いなんて微塵も感じなくなっていた。高梨さんはその中で投げはじめた。
 高梨さんは毎回ランナーを出しながらも粘ってくれた、その高梨さんに五回表皆が応えてくれた。ここでもオスナさんがまず口火を切ってくれた。
 センター前ヒットで出塁してそのうえで宮本さんがバントで送ってくれた。そこから塩見さんがレフト前に打ってくれて一点を先制してくれた。
 今回のシリーズ皆よく先制してくれてそこから流れを作ってくれる、この試合もそうだった。同点に追い付かれても流れはヤクルトになってスアレスさんがピンチを抑えて高梨さんを助けてくれた。 
 試合はそのまま延長戦に入った、九回のピンチも凌いでくれた。勝利の女神はまだヤクルトに微笑んでくれない。けれど神様は必死に頑張ってくれているしかも謙虚で奢らない人達に微笑んでくれる。今のヤクルトの人達こそがそうだ。
 オリックス有利とずっと言われる中でも誠実に野球をしていき前を向いて希望を捨てていなかった、そんな人達にこそ勝利の女神は微笑んでくれる。僕がこれまでヤクルトのマスコットをしていてわかっていることだ。このチームはいつも必死で謙虚だ。しかも奢ることがない。自称球界の盟主とふんぞり返って傲慢そのものの巨人とは全く違うのだ。あんな風だからシリーズで二年連続で無様に負けるんだと思う。
 このシリーズはじめての延長戦監督さんは十回裏ツーアウトからマクガフさんをマウンドに送った。マクガフさんはマウンドに行く前に僕の目を見て言った。
「任せてくれ、何があっても抑えるよ」
「そして胴上げ投手になりますね」
「俺は最初負けて第五戦でも負けた、そして皆に迷惑をかけた」
 マクガフさんはこのことを僕に言った。 
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