代々ローマに
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第一章
代々ローマに
画家のマリオ=カヴァラドゥッシは紆余曲折あり今はアメリカのニューヨークで暮らしている。そこで共にアメリカに渡った恋人である歌手のフローリア=トスカと近いうちに結婚する予定となっている。
細面で顔には顎鬚と口髭それに頬髯があり黒髪は短くしている、端正で気品のある顔であり物腰もそうである。
その彼が家に来た仕事を依頼しに来た者に話していた。
「私の英語ですが」
「閣下のそれはですか」
「やはりです」
閣下と言われたのは彼が子爵だからだがそれは置いておいて述べた。
「ローマに生まれてです」
「そちらで暮らしておられましたね」
「そうでした、ナポレオンが来るまでは」
「あの時に何かとあったのでしたね」
「そうでした、命を落とすことも」
この危険もというのだ。
「危うく処刑されそうになり」
「その中で、ですね」
「妻の助けもあり」
トスカのというのだ、まだ式は挙げていないがそれでも既に共に暮らして長いのでこう呼んでいるのだ。
「そしてです」
「何とかですね」
「九死に一生を得て」
そうしてというのだ。
「そのうえで」
「ローマを出られ」
「フランスに渡りそちらで」
「ナポレオンとしてだね」
「考えが合わず」
皇帝となった彼と、というのだ。
「私は今でも共和制を尊んでいるので」
「だからですね」
「彼とそりが合わなくなり」
「そうして合衆国に来られましたね」
「左様です、この国はまだ生まれたばかりですが」
それでもとだ、カヴァラドゥッシはアメリカ人の彼に話した。
「必ず素晴らしい国になります」
「そうなる様にです」
男もカヴァラドゥッシに答えた。
「日々働いています」
「左様ですね、そして私の英語は」
これはというのだ。
「この通りどうしても」
「ローマ訛りが強いと」
「自覚しています」
このことはというのだ。
「やはり」
「そうなのですか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「そのことはご了承下さい」
「わかりました、ではそのことは」
男もカヴァラドゥッシのその言葉に頷いて述べた。
「覚えておきます、ただ」
「ただとは」
「閣下はローマに生まれ育って」
そしてとだ、今度は男の方から言ってきた。
「それも代々でしたね」
「はい、それこそ古来からで」
「それからですか」
「ローマが劫略された時は」
神聖ローマ帝国皇帝とローマ教皇の対立の際神聖ローマ帝国軍の傭兵達がローマに雪崩れ込んだうえでのことだ。
「危うくです」
「その時にですか」
「命を失いそうになりましたが」
「ご先祖が」
「何とかです」
その危機に対してというのだ。
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