英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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ハーケン会戦~王国の守護神~
前書き
今年最後の更新です。
AM10:20――――――
~ハーケン平原~
「グギャアアアアアア……ッ!?」
「ぐあああああ……ッ!?」
「熱い、熱い――――――ッ!!」
「”裁き”だ……これは皇女殿下のお言葉を無視して”大罪”を犯そうとしたエレボニア帝国軍への”女神の裁き”なんだ……!」
「やっぱり皇女殿下のお言葉は正しかったのか……!」
「クッ……火の回りが早過ぎる!先程のガソリンはこの為か……!?」
地上にいるエレボニア帝国軍は炎の海に飲み込まれた事で焼死する者達や戦車のエンジンや砲弾に炎が引火して爆死する者達に加えて動揺する者達も現れた事で大混乱に陥った。
~カレイジャス・ブリッジ~
「何よ……これ……」
「”火炎地獄”……」
「お……祖母……ちゃん……」
「五方向からの最上位クラスの火炎魔法による”火計”……だとしても幾ら何でも火の回りが早過ぎる……!?」
「もしかして、炎が放たれる前に”破壊の女神”率いるメンフィル帝国軍の砲撃ミスが関係しているんじゃない?」
一方その頃ブリッジで炎の海に飲み込まれた地上のエレボニア帝国軍の惨状を目にしたアリサは呆然とし、ガイウスは呆けた表情で呟き、目の前に映るエレボニア帝国軍の惨状を作り出した原因である炎の魔法の一つがローゼリアのものである事にすぐに気づいたエマは悲痛そうな表情を浮かべ、厳しい表情で声を上げたミュラーの疑問にフィーが真剣な表情で推測した。
「あら、中々鋭いわね。メンフィル帝国軍の機工軍団の砲撃……――――――あれは”エレボニア帝国軍を攻撃する為ではなく、エレボニア帝国軍にガソリンを振りまく為に放った砲撃よ”♪」
「ガ、”ガソリン”って何なんですか……!?」
「―――――”ガソリン”とは”危険物”に類される油であり、油の中でも”加熱性が高い油”なのですわ。」
「えとえと……”ガソリン”は主に燃料として使われているんですが、扱いには本当に気を付ける必要があるんです……僅かな量でも引火すれば火災や爆発が起こってしまいますから……」
意味あり気な笑みを浮かべながら答えたレンの説明を聞いて抱いたマキアスの疑問にシャロンが答え、シャロンに続くようにティータが不安そうな表情を浮かべながら説明を捕捉した。
「そ、そんな危険な燃料をエレボニア帝国軍に振りまいてあんな凄まじい炎の魔法を5方向から同時に放ったから……」
「今目の前で起こっている状況――――――”火炎地獄に陥ったエレボニア帝国軍”の惨状という訳か……」
「しかも”破壊の女神”達もさっきまであそこにいなかったのに急に現れたけど、まさかとは思うけど”転位”なの!?」
「―――――いえ、現れた時に霊力の光がなかったことから恐らくだけど、”転位じゃなくて今まで何らかの手段で姿を消していた”のだと思うわ。」
「”姿を消す”……メンフィルが保有しているステルス機能か……」
「間違いなくそうだろうね……カレル離宮で現れた時もそうだけど去る時も”戦艦ごと姿を消して”いたもの……」
シャロンとティータの説明を聞いたエリオットは不安そうな表情を浮かべ、ユーシスは重々しい様子を纏って呟き、混乱している様子のミリアムにセリーヌは静かな表情で指摘し、アンゼリカの推測にトワは辛そうな表情で頷いた。
「あ、あんた達……幾ら”戦争”だからといってこんな”非道”な事が許されると思っているの!?」
「クスクス、”士官学院の教官”の癖に何を寝ぼけたことを言っているのかしら?――――――”火計”なんて遥か昔からある”戦術”の一種として知られている”ありふれた戦術”じゃない。」
「だからといって”程度”ってもんがあるだろうが!?」
「こんな”虐殺”同然のやり方……幾ら貴方達の介入によってエレボニア帝国軍によるリベール侵略を食い止められているリベールと言えども、”黙認”はできないと思うのだけど?」
一方サラは怒りの表情を浮かべて映像端末に映るレンを睨んで声を上げ、サラの指摘に対して小悪魔な笑みを浮かべて返したレンにアッシュは反論し、エレインは厳しい表情で指摘した。
「うふふ、その様子だと今起こっている”火計”がレン達メンフィル・クロスベル連合が考えた”戦術”だと思っているようだけど……”最初に今目の前に起こっている戦術を提案したのはメンフィル・クロスベル連合もそうだけど、ヴァイスラントの関係者でもないわよ”?」
「何……ッ!?連合以外だと一体どの勢力が提案したんだよ!?」
「!…………まさか……カシウスの旦那――――――”リベール王国”か?」
意味あり気な笑みを浮かべて答えたレンの驚愕の答えにクロウは驚いて疑問を口にしている中、察しがついたジンは真剣な表情でレンに問いかけた。
「あ………」
「確かに”稀代の戦術家”である先生なら思いついてもおかしくないわね……」
「ああ。”理”に到ったカシウス卿ならば、連合との戦争によって劣勢な状況に陥ったエレボニアがいずれリベールに侵略する事も先読みしていても不思議ではないな。」
ジンの言葉を聞いて瞬時にカシウスを思い浮かべたアネラスは不安そうな表情を浮かべ、複雑そうな表情を浮かべたシェラザードの言葉にアルゼイド子爵は重々しい様子を纏って同意して答えた。
「大正解♪”今起こっている火計を含めた今回の大規模作戦のほぼ全てを提案したのはリベール王国軍の最高司令官――――――剣聖カシウス・ブライト中将よ♪”」
「な――――――ですが、自らリベールに向かい、シェラザード殿達の協力を取りつけてきた殿下達の話ではリベールはまだ連合の誘いには応じていない上、今までもリベールは連合と同盟を組んだような発表はしていません……!」
「……あのオッサンの事だ。”世間ではリベールは連合とまだ繋がっていないと見せかけていて、裏ではとっくの昔に連合と手を組んでいやがったんだろうな。”」
「そうだな……3年前のクーデターや”リベル=アークの浮上による導力停止現象”――――――”リベールの異変”に対しても、それぞれの出来事が起こる事を予測して様々な対策を予め打っていたカシウスの旦那の事だから、”アルスター襲撃”の件――――――いや、ひょっとしたら”アルスター襲撃が起こる前の時点で連合とエレボニアの戦争にエレボニアがハーメルの惨劇のような冤罪をリベールに押し付けてリベールを戦争に巻き込むことも既に先読みしていた”のかもしれんな。」
笑顔で答えたレンが口にした驚愕の答えにその場にいる全員が血相を変えている中ラウラは絶句した後反論し、ラウラの反論に対して複雑そうな表情を浮かべながら推測を答えたアガットの言葉にジンは複雑そうな表情を浮かべながら同意した。
「ええっ!?待ってください……!確か”アルスター襲撃”が起こったのは1ヶ月前ですよね!?カシウス中将は一体どの時点でエレボニアがリベールに侵略する事を予測していたんですか……!?」
「……恐らくだが”メンフィル・クロスベル連合とエレボニアの関係が完全に戦争状態に陥る事になった出来事”――――――クロスベルを制圧しようとしたルーファス君達率いるエレボニア帝国のクロスベル侵攻軍がメンフィル・クロスベル連合軍によって”返り討ち”にされたあたりなんじゃないかい?」
アガットとジンの話を聞いて驚きの声を上げたセドリックが疑問を口にした後少しの間考え込んでいたオリヴァルト皇子は疲れた表情を浮かべながらレンに問いかけた。
「へえ?中々良い所をつくわね。―――――カシウス中将がリベールが連合とエレボニアの戦争に巻き込まれると”確信”したのはルーファス・アルバレア率いるクロスベル侵攻軍が連合軍によって”返り討ち”にされた件を知った時だけど、実は”カシウス中将はそれよりももっと前の時点でエレボニアがリベールに侵略する予測をしていた”そうよ?」
「何ですって!?」
「ク、クロスベル侵攻軍が連合によって”返り討ちにされるよりも前にエレボニアがリベールに侵略する事を予測していた”って、カシウスさんは一体どの時点でエレボニアがリベールに侵略する事を予測していたの……!?」
レンが更に口にした驚愕の事実にその場にいる全員が血相を変えている中サラは驚きの表情で声を上げ、アネラスは信じられない表情で訊ねた。
「―――――前アルバレア公爵が雇った”北の猟兵”達がユミルに隠れていたアルフィン皇女の拉致の為の襲撃をした件――――――要するに今回の戦争勃発となった一番の”きっかけ”である”1度目のユミル襲撃の件を知った時点よ”。」
「馬鹿な……っ!?」
「い、”1度目のユミル襲撃”って事は連合との戦争勃発もしていない所か、”クロスベル帝国”の登場すらもまだだった去年の内戦の最中って事じゃないですか!?」
「その時点ではクロスベルもまだ”帝国ではなく独立国”を名乗っていた頃なのに、カシウス中将は何故その時点で……」
「……多分だけど、もうその時点で内戦が終結しようと、続いていようといずれメンフィルがエレボニアに戦争を仕掛けて劣勢になったエレボニアが一発逆転の為に異世界にあるメンフィルの”本国”と繋がっているリベールにあるメンフィル帝国の大使館を抑える為にエレボニアがリベールに侵略する事を予測したんだと思う。」
「じょ、情報局の情報よりも凄すぎる”先読み”なんですけど……」
レンの答えにユーシスとマキアスは信じられない表情で声を上げ、ガイウスは困惑し、フィーは静かな表情で推測し、ミリアムは表情を引き攣らせながら呟いた。
「クスクス、その話をパパ達から聞かされた時はレンもそうだけど、灰獅子隊の参謀であるルシエルお姉さんも心底驚くと共にカシウス中将に敬意を抱いたわよ?まさに”剣聖以外のもう一つの異名”を顕しているわよね♪」
「カシウス中将の”剣聖以外のもう一つの異名”とは一体……」
「―――――”王国の守護神”。それが”百日戦役”の活躍を称されてついたカシウス先生の”剣聖以外のもう一つの異名”よ。」
「”王国の守護神”………」
「……なるほどね。”百日戦役”の件もそうだけど、祖国を守る為に今回の戦争の件でリベールも”最悪の事態――――――エレボニア帝国軍によって王国が侵略される事態”に陥る事まで予測して既に対策までしていたなんて、まさに”王国の守護神”よね……」
レンの話を聞いて疑問を抱いたセドリックの疑問に静かな表情で答えたシェラザードの答えを聞いたエマは呆け、セリーヌは疲れた表情で呟いた。
「あ、あの……!さっき、レン皇女殿下は”今起こっている火計を含めた今回の大規模作戦のほぼ全てを提案したのはカシウス中将”だと仰りましたけど、”火計”の他にも何かの作戦をカシウス中将は連合に提案したんですか……!?」
「あ……ッ!」
「確かに先程のレン皇女殿下の口ぶりではカシウス中将は”複数の作戦を提案した”ような言い方でしたわね。」
その時ある事に気づいたトワのレンへの問いかけを聞いたアリサは声を上げ、シャロンは真剣な表情で呟いた。
「!おいっ、エレボニア帝国軍の背後に連合軍が突然現れ始めやがったぞ!?」
「クスクス、”第二段階”の始まりね♪」
一方モニターを見つめて何かに気づいたクロウは声を上げ、レンは不敵な笑みを浮かべながら宣言した。
~ハーケン平原~
一方その頃炎の海に包まれたエレボニア帝国軍の背後にステルス装置を切ったメンフィル・クロスベル連合軍、そしてヴァイスラント新生軍が次々と姿を現し始め、その上である空にも”モルテニア”を始めとした連合軍やヴァイスラント新生軍の戦艦や飛空艇、そしてレヴォリューションも次々と姿を現した。
~ガルガンチュア1号機・ブリッジ~
「背後にメンフィル・クロスベル連合軍だと……!?――――――観測は今まで何をやっていた!?」
映像端末に映るメンフィル・クロスベル連合軍を目にしたレリウス中佐は信じられない表情を浮かべて声を上げた後観測を務めている軍人に怒鳴り
「も、申し訳ございません……!ですが今まで何の反応も無く、連合軍が姿を現すと同時に反応が発生したんです……!」
レリウス中佐に怒鳴られた観測を務めている軍人は謝罪した後困惑の表情で答えた。
「そんな言い訳が通じるとでも――――――」
「―――彼をそう責めてやるな、レリウス君。あれも先程の”火計”同様カシウス中将の”策”の内の一つなのじゃろうからな。」
観測を務めている軍人になおも怒鳴ろうとするレリウス中佐にヴァンダイク元帥は重々しい様子を纏って指摘した。
「な―――――”剣聖”の……!?それは一体どういう事ですか……!?」
「恐らく儂らが今まで連合軍の存在を悟れなかったのは、カシウス中将がかつて”リベールの異変”にて”導力停止現象”に対抗できる装置を開発させたように、”この時が来ることに備えて予めZCF―――――ラッセル博士達に姿を消せるかつこちらの観測を誤魔化せるような新型の装置の開発をさせた”のじゃろう。――――――それよりもこのままじゃと連合軍と王国軍による挟み撃ちに遭ってしまう。だが、”火計”の状況に陥っている地上の我が軍の今の状況に連合軍が迫れば、連合軍とて大きな被害は免れんじゃろうから地上の連合軍は今の我が軍に迫ることはせんじゃろう。……地上の戦友達には酷ではあるが、連合軍の”火計”の炎を連合軍に対する”壁”にし、ハーケン門の突破を強行させるのじゃ!”火計”で戦力や士気が落ちているとはいえ、我らの戦力ならば王国軍を押し通る事くらいは可能じゃ!”空”の部隊はハーケン門に急行し、空爆で速攻でハーケン門を陥落させよ!退路を連合軍に抑えられてしまった以上、連合軍が帝国軍に追いつく前に何としてもメンフィル帝国の大使館を抑えなければならぬ!」
「イエス・コマンダー!!」
ヴァンダイク元帥の新たな指示に敬礼で答えたレリウス中佐は通信機を使って指示を出し始めた。
~少し前・カレイジャス・ブリッジ~
「クスクス、ちなみにだけど今までレン達連合軍が姿を消していた事もそうだけど、連合軍の反応がそちらもそうだけどエレボニア帝国軍の観測にもわからなかった理由はカシウス中将の要請を請けたラッセル一家――――――ラッセル博士とエリカ博士共同の開発による新型のステルス装置によるものよ。」
「何ぃ……っ!?」
「お、お祖父ちゃんとお母さんが……!?」
「内戦での最新式の通信妨害装置の件の事を考えるとシュミット博士と同じ”三高弟”の一人であられるラッセル博士とそのご息女であるエリカ博士でしたらそれ程の装置を開発してもおかしくありませんわね。」
「そうだね~。ちなみにカシウス・ブライトはいつ、ラッセル博士達にその装置の開発の要請をしたの~?」
少し前その頃映像端末に映るレンはその場にいる全員にとっての驚愕の事実を説明し、レンの説明を聞いたその場にいる全員が血相を変えている中アガットは驚きの声を上げ、ティータは不安そうな表情で声を上げ、静かな表情で呟いたシャロンの推測に頷いたミリアムはレンに訊ねた。
「”アルスター襲撃”の翌日――――――要するにシルフィエッタママ達がⅦ組のみんながいる目の前でアリシア女王達に連合軍との同盟の誘いの為の挨拶をしたその日にラッセル博士の元に訪れて件の装置の開発の要請をしたと聞いているわ。」
「つまりカシウスの旦那は”リベールが連合とエレボニアの戦争に巻き込まれると確信した時点”で、かつての”リベールの異変”のようにその装置が必要と思い、ラッセル博士達に開発を要請したのか……」
「……ですがその話通りだとラッセル博士達のご家族であるティータちゃんが知らない事はおかしいのでは……?」
レンの答えを聞いたジンは真剣な表情で呟き、エレインは複雑そうな表情でティータを見つめながら呟いた。
「そ、その……ツァイス中央工房(ZCF)でのわたしの立場は”見習い技師”ですから、王国軍の最高司令官のカシウスさんが直々に依頼する程の装置の開発となると当然関係者以外は秘匿する事になるでしょうから、お祖父ちゃん達は”見習い技師”のわたしには教えなかったんだと思います……」
「ティータちゃん……」
「それもあるけど、他にも理由があるわ。――――――何せ”カシウス中将がラッセル博士にティータにだけは絶対に漏らさないように念押しした”との事だもの。」
エレインの疑問にティータが複雑そうな表情で答えている中その様子をアネラスは辛そうな表情で見つめ、レンは意味あり気な笑みを浮かべて答えた。
「え…………」
「”カシウスさんがラッセル博士にティータにだけは絶対に漏らさないように念押しした”ってどういう事なの……!?」
レンの答えを聞いたティータが呆けている中シェラザードは信じられない表情でレンに訊ねた。
「そんなの決まっているじゃない。”いずれ今の自分達を助けて欲しいって頼んでくるオリヴァルト皇子の頼みに応じたティータがその装置の情報をオリヴァルト皇子達に教える事によって何らかの形でその情報がエレボニア帝国軍にも漏洩して、今行われている作戦に支障が出てくる恐れも考えられた”からティータにだけは絶対に漏らさないでくれって念押ししたのよ♪」
「ええっ!?」
「な――――――という事はその時点でカシウス中将はオリビエがティータ君にも助けを求めてくると想定していたのか……!?」
「…………ハハ………まさか、私がティータ君達に私達を手伝って欲しい事を頼み、ティータ君達が私の頼みに応じる事まで想定していたなんて、さすがカシウスさんだね………」
レンの説明を聞いたエリオットは驚きの声を上げ、ミュラーは絶句した後信じられない表情で声を上げ、一瞬呆けたオリヴァルト皇子は疲れた表情で呟いた。
「ちなみに姿を消す技術――――――要するにレン達メンフィルが結社から奪った技術に関してはレン達メンフィルがリベールに提供して、リベール――――――ラッセル博士達はその姿を消す機能を改良した上で観測機の反応を誤魔化す機能の装置の開発をしたのだけど……観測機の反応を誤魔化す機能に関してはティータとアガットなら心当たりはあるのだと思うけど?――――――何せ3年前の”クーデター”の件でも実際にその”心当たり”を使ったらしいし。」
「ク、”クーデター”の件でティータちゃんとアガット先輩が……?」
「あ………っ!そ、それってもしかしてお祖父ちゃんが開発した生体感知器の走査を妨害する導力場を発生させる装置……!?」
「情報部の連中に拉致されたラッセルの爺さんを助ける為にレイストン要塞に侵入した時に使ったあの装置か……」
レンの指摘を聞いたアネラスが困惑している中心当たりを思い出したティータは声を上げ、アガットはかつての出来事を思い返しながら呟いた。
「さ、3年前の時点でラッセル博士はそんな装置を開発していたなんて……」
「つー事は俺達もそうだがエレボニア帝国軍の連中の観測機を誤魔化したその機能はその装置の機能を改良したって所か。」
レン達の話を聞いたアリサは信じられない表情で呟き、アッシュは厳しい表情を浮かべながら推測を口にした。
「あの……アリシア女王陛下達――――――リベールの王家の方々はいつから、エレボニア帝国軍によるリベール侵攻は避けられない事をご存じだったのでしょうか?慈悲深い事で有名なアリシア女王陛下がいくらリベールを守る為とはいえ、こんな”虐殺”のようなやり方には賛同せず、カシウス中将に可能な限り他の方法を考えるように指示すると思われるのですが……」
「……確かにセドリックの言う通り、アリシア女王陛下もそうだがクローディア王太女殿下の性格も考えるとこのような惨状を作り出す事は決して望まないだろうね。」
その時ある事が気になっていたセドリックは複雑そうな表情を浮かべながらレンに訊ね、セドリックの疑問にオリヴァルト皇子は静かな表情で同意した。
「二人がカシウス中将から今回の戦争の件でエレボニアがリベールに侵略する事は避けられず、それを防ぐ為にカシウス中将が二人に黙って連合の関係者達と連絡を取り合って今行われている作戦について進めている事を教えられたのはオリヴァルト皇子達がティータ達の協力を得る為に再びリベールに訪れている間と聞いているわ。」
「そ、そんな……っ!?そんなにも前からご存じだったのに、どうして女王陛下達は殿下にその件を教えなかったんですか……!?」
レンの答えを聞いたマキアスは信じられない表情で声を上げた後レンに問いかけた。
「教える訳ないでしょう?幾ら二人にとって例えリベールを侵略するつもりでいるエレボニアの皇族の一員であるオリヴァルト皇子は信頼できる相手とはいえ、二人は”リベールの現女王とその跡継ぎ”でもあるのよ?”王とは国家の、国民達の為に時には”非情”にならなければならない”のだから、例えその方法が後世に”虐殺”と罵られようとも、王国を、そして王国の民達を守る事ができるのならば、”どちらを優先すべき”かは迷う訳にはいかないのよ?――――――ましてや”リベールは13年前の百日戦役によって多くの罪なき国民達がエレボニア帝国軍に虐殺されたという経験”もしているものねぇ?」
「”百日戦役のの二の舞を踏まない為”にも、女王陛下達もカシウス中将の忠告によって相当前からこうなる事のお覚悟をされていたという事ですか……」
「そしてお二人にとって優先すべき事柄は”お二人にとって信頼できるお相手であるオリヴァルト殿下の何としても戦争を止めて双方の被害を可能な限り抑えるという想いよりも、自国を守る事を優先したという事か”……」
「そ、それは………」
「「「………………」」」
「チッ………」
二人の疑問に静かな表情で答えたレンは意味あり気な笑みを浮かべて指摘し、レンの指摘を聞いたアルゼイド子爵とアンゼリカは重々しい様子を纏って推測を口にし、二人の話を聞いたアリサは辛そうな表情を浮かべてリベールの協力者達――――――それぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいるシェラザード、アネラス、ティータ、そして当時の出来事を思い返して舌打ちをして厳しい表情を浮かべているアガットに視線を向けた。
「ハハ……シェラ君達もだが、Ⅶ組のみんなもその件で私を気にする必要はないよ。――――――パント臨時大使との会談後のアリシア女王陛下達との謁見に同席した”当事者”であるⅦ組のみんなも私のアリシア女王陛下達への”望み”と”考え”を聞いたはずだ。”私達の事は気にせず、リベールにとって最良の判断をして欲しい事”を。………そして、私を含めたエレボニア帝国はリベール王国に散々お世話になっておきながら、その”恩”を”仇”で返すような余りにも道理に反する愚かな国家に堕ちるくらいならば、いっそ滅亡した方が世の為、人の為である事もね。」
「オリビエ………」
疲れた表情で肩を落とした後悲しそうな表情で語るオリヴァルト皇子の様子をミュラーは複雑そうな表情で見つめた。
”王”とは国家の、国民達の為に時には”非情”にならなければなりません。そしてその為には自らの手を血で染めるべき時もありますわ。
「『王とは国家の、国民達の為に時には非情になられければならなく、そしてその為には自らの手を血で染めるべき時もある』……か。」
「その言葉は確か以前エリンの郷でメサイアが言っていた………」
「貴族――――――いや、”王の義務”か。アリシア女王陛下達はその”王の義務”を果たす為にもオリヴァルト殿下達にも、リベールがエレボニア帝国との戦争に予め備えていた事も黙っていたという事か……」
その時ふとかつてのメサイアの発言を思い返したユーシスは複雑そうな表情で呟き、ユーシスの言葉を聞いたガイウスは静かな表情で呟き、ラウラは重々しい様子を纏って呟いた。
「へえ?さすがヴァイスお兄さんの娘ね。――――――ま、そうは言っても最後の最後までその方法を取る事をしたくなかった二人はメンフィル・クロスベル連合軍にせめて”リベールに侵攻するエレボニア帝国軍に真実を教えてリベール侵略を思い止まる説得をする要請”をして、その要請を請けた連合軍はせっかく、リベール侵攻軍に”最後のチャンス”を与えてあげたのに、案の定エレボニア帝国軍はその”最後のチャンス”を無視して今の状況に陥ったって事よ♪」
「”最後のチャンス”………という事はアルフィンのさっきのエレボニア帝国軍への呼びかけはアリシア女王陛下達の要請によるものだったんですか……」
「……なるほどな。帝位継承者の一人にして、内戦で活躍したアルフィン皇女殿下は連合側として戦争に参加している事を女王陛下達もご存知だったから、そのアルフィン皇女殿下の説得ならばエレボニア帝国軍も耳を貸すかもしれないという”希望”を抱いて連合にそのような要請をしたのだろうな、アリシア女王陛下達は……」
「はい……ですが、その”希望”は………」
ユーシス達の会話を聞いて興味ありげな表情を浮かべたレンは説明を続け、レンの説明を聞いて察しがついたセドリックは辛そうな表情で呟き、重々しい様子を纏って呟いたジンの言葉に頷いたエレインは辛そうな表情を浮かべて炎の海にのみ込まれているエレボニア帝国軍を見つめた。
「……あんた達は……――――――いえ、リィンは今行われてこの”虐殺”の内容をいつ知ったのよ!?”月の霊場”でのリィンの口ぶりから察するに、あの時点でリィン達はこの”虐殺”について知っていたんでしょう!?」
するとその時ある事が気になっていたサラは怒りの表情でレンに問いかけた。
次の作戦”は今までアリサ達が介入してきた”戦場”とは比較にならない”酷な戦場”になるだろうから、アリサ達は介入しない方がいい。
「あ………」
「確かに”月の霊場”での去り際のアイツの忠告を考えると、アイツも王国と連合が裏で繋がっていた事もそうだけど、今行われている軍事作戦についても知っていたでしょうね。」
サラのレンへの問いかけを聞いて”月の霊場”での出来事を思い返したエマは呆けた表情で声を出し、セリーヌは目を細めて推測を口にした。
「うふふ、レン達が連合”本陣”からその作戦を知らされて、この作戦に関する要請を出されたのはオルディス制圧の二日後よ。――――――さて、こうやって話している間にさすがのエレボニア帝国軍もそろそろ動き始めるのじゃないかしら?」
「!見て、エレボニア帝国軍が進軍の再開を……!」
サラの疑問に小悪魔な笑みを浮かべたレンが答えると同時にエレボニア帝国軍が進軍を再開した事に気づいたトワは声を上げた。
「炎に飲み込まれた仲間達を見捨ててまで、リベールへの侵略を優先するのかよ……!?」
「……リベール侵攻に失敗すれば、”エレボニア帝国の敗北が確実になる”と理解しているヴァンダイク学院長――――――いや、元帥閣下にとっても苦渋の判断なのだろう。」
「どうせ今のエレボニア帝国軍の動きもテメェらの掌の上なんだろうがっ!?」
進軍を再開している様子のエレボニア帝国軍を見たクロウは厳しい表情で声を上げ、ミュラーは重々しい様子を纏って推測し、アッシュは怒りの表情でレンに指摘し
「あら、中々鋭いわね。――――――ちょうどいい機会だから、その目に改めて刻みなさい。――――――”闇夜の眷属”の中でも”最強”を誇る”魔神”の”理不尽かつ圧倒的な力”を。」
アッシュの指摘に肯定したレンは不敵な笑みを浮かべて宣言した。
~ハーケン平原・上空~
「ん、わかった。――――――リウイお兄ちゃんからの連絡。手筈通り敵軍の旗艦以外の戦艦を”破壊しろ”だって。」
一方その頃ベルフェゴールとプリネの使い魔の一人にしてソロモン72柱の魔神の一柱――――――アムドシアスと共に平原の空高くに浮かんでいるエヴリーヌはリウイとの通信を終えた後二人に伝えた。
「了解。旗艦以外の戦艦は3隻だから、一人一隻ずつでいいでしょう?――――――私は右の方を落とすからアムドシアスは左の方を任せるわ。」
「全く、敵軍に”力”を思い知らせる等ハイシェラならば喜々とやるだろうに、何故我が……」
エヴリーヌの言葉を聞いたベルフェゴールとアムドシアスはそれぞれ全身に膨大な魔力を収束し
「くふっ、それじゃあエヴリーヌは先頭の船だね♪あんな”大物”を落とすのは久しぶりだから、思いっきり行くよ♪」
エヴリーヌは弓に番えた魔力に膨大な魔力を収束し始め、そしてそれぞれ魔力を収束し終えた魔神達は旗艦以外のガルガンチュア目掛けて魔術やクラフトを放った!
「純粋なる輝きよ、今こそ愚か者達に滅びの鐘を鳴らせ!――――ルン=アウエラ!!」
ベルフェゴールが発動した最高位の純粋属性魔術は一隻のガルガンチュアの中心部分で閃光が埋め尽くした後轟音と共に超越した大爆発を起こし、爆心地であるガルガンチュアは一瞬で爆散して木端微塵になり、更に爆発はその周囲を滞空していたエレボニア帝国軍の空挺部隊も巻き込んでいくつかの飛空艇を破壊した。
「古の時代より存在せし雷よ、我が美しき魔力の呼びかけに応え、今こそ鳴り響け!リーフ=ファセト!!」
アムドシアスが発動した最高位の電撃属性魔術はベルフェゴールが攻撃したガルガンチュアとは正反対の位置にいるガルガンチュアの頭上から凄まじい雷が雨のように降り注ぎ、更には莫大な雷エネルギーによる連鎖爆発を起こし、それらをまともに受けたガルガンチュアは機体の様々な場所から次々と爆発を起こしながら最後は戦艦の無数の箇所が爆発によって砕け散り、また周囲を滞空していたエレボニア帝国軍の飛空艇のいくつかも破壊した。
「死ね――――――アン・セルヴォッ!!」
エヴリーヌが放った莫大な魔力を込められた魔力の矢は先頭を進むガルガンチェア目掛けて襲い掛かった。魔神の莫大な魔力が込められた矢はガルガンチェアに近づく間に矢に収束されている魔力が開放される事でどんどん大きさを増して最後はレボリューションやカレイジャス等と言った”巡洋艦”クラスの大きさの巨大な矢となり、巨大な矢はガルガンチェアの中心部分を易々と貫いてガルガンチェアを豪快に真っ二つにし、真っ二つになったガルガンチェアは爆発を起こしながら空の藻屑となり、ガルガンチェアが起こした爆発に巻き込まれた周囲のエレボニア帝国軍の飛空艇も空の藻屑となった――――――!
後書き
それでは皆さん、よいお年を。
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