役立たずが家に来て
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第四章
「だからよ」
「その仕返しにだね」
「家にも置いてあげてるのよ」
「だからなんだ」
「そうよ、それならよ」
「ああして暴力を振るってもなんだ」
「いいでしょ、ずっと私に酷いことして置いてやってるんだから」
こう言うのだった。
「有り難いと思わないと駄目よ」
「そう思ってるんだね」
「そうよ、あいつは本当に敵だから」
怒った顔での言葉だった。
「だからよ」
「暴力を振るうんだね」
「あいつが産まれてから高校を卒業して家を出るまでね」
怒りに怨みが加わった、その顔に。
「私があいつと両親に何をされてきたか」
「けれど殴られたのかな」
「言われたけれどそれはなかったわ」
春奈はそこは正直に言った。
「全くね」
「そうだね」
「けれどよ」
「怨みがあるからなんだ」
「あいつにだけは別よ」
暴力を振るうというのだ。
「何があっても許さないから」
「仕返しは続けるんだ」
「そうしていくわ」
「あの、お母さん」
今度は娘が言った。
「今のお母さん凄く怖いから」
「お母さんが?」
「叔母さんを怒ってる時のお母さん鬼みたいよ」
「鬼って。お母さん和香に酷いことしたことないでしょ」
母としてその自覚があって言った。
「コチにもポコにも」
「うん、誰にも優しいよ」
「だったらいいでしょ」
「ううん、怖い」
こう思うとまた言った。
「鬼みたい」
「そんな、和香達は大切にしてるのに」
「僕にもね」
夫も言ってきた。
「そして家族以外の誰にもね」
「だったらいいでしょ」
「よくないよ、今の君はおかしいよ」
妻に悲しい顔で話した。
「妹さんを憎んで嫌い過ぎだよ」
「だからそれは」
「昔酷いことをされたからだね」
「そうよ、十年以上ね。それを思えば」
「当然なんだね」
「そうよ、親は死んだけれど」
それでもというのだ。
「あいつだけ残ったからね」
「それで何も世話しないで鬱病の通院もさせないで」
「そんな必要ないからよ」
治療なぞ考えもしていない、ずっと苦しめと思っているのだ。
「だからよ」
「ああしているんだね」
「そうよ」
「じゃあこれからも」
「あいつだけは許さなくてね」
そうしてというのだ。
「やり返していくわ」
「許さないの?叔母さん」
娘がまた言ってきた。
「ずっと」
「ずっとよ」
「殴って蹴るの」
「そうしていくわ、ご飯もね」
夏樹の分を作ったことはない、勝手に余りもの酷い時は残飯を食べさせるに任せている。散らかせばその時は暴力を振るっている。
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