下馬評を覆し
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第八章
オリックスに逆転された、これにオリックス側は歓喜した。そしてヤクルトファン達は苦い顔になった。ナイン達も暗くなりかけたが。
一人だけ違っていた、高津は冷静にこう言った。
「絶対大丈夫だ」
「逆転されても」
「それでもですか」
「やれますか」
「そうだ、まだ三回もあるんだ」
高津はイニングの話をした。
「それなら充分だ」
「逆転出来ますか」
「やらましたが」
「それでもですか」
「そうだ、これ位で動じることはない」
腕を組み冷静な顔で言った、そしてだった。
この言葉は現実のものになった、逆転された直後の七回裏のことだった。
ツーアウトランナー一塁、ここでバッターボックスにはD=サンタナが入った。オリックス側はそのサンタナを見て鼻で笑った。
「これまでノーヒットだしな」
「今回も打たないな」
「あの程度の奴でオリックスのピッチャーが打てるか」
「うちのピッチャーは最強だぞ」
「あんな奴が打てるか」
彼等はサンタナを頭から馬鹿にしていた。オリックスのピッチャーを打てる力なぞ彼にはない、だからこれまでノーヒットなのだと嘲笑っていた、そのうえでバッターボックスの彼を観て七回はこれで終わりだと確信していたが。
サンタナは黙ってバットを一閃させた、すると。
ボールは彼等の目の前でヤクルトファン達がいる一塁側の目の前を通りライトスタンドに入った、これにはヤクルト側の誰もが歓喜した。
「逆転だ!」
「シリーズ初ヒットがホームランだ!」
「サンタナよくやった!」
「これは大きいぞ!」
誇らしげな笑顔でダイアモンドを回るサンタナに拍手した、これにはヤクルトナインも喜びを爆発させた。
そして八回は無事に抑えてだった。
九回高津は誰もが驚く行動に出た、何と。
第一試合でワンアウトも取れず試合を壊してしまったマクガフをマウンドに送った、これには多くのヤクルトファンは心配する顔になりオリックスファンは今度は彼を嘲笑った。
「また打たれるな」
「鴨が葱をしょってきたな」
「これで二勝だ」
「七回はどうなるかと思ったけれどな」
「うちの勝ちは貰ったな」
「よかったよかった」
「高津の謎采配に感謝しないとな」
彼等はまだ試合が終わっていないのに勝ったと思っていた、そのうえで。
拍手さえせん程だった、特に先頭打者の若月とやらがヒットで出塁した時はヤクルトファンの間に嫌な空気が漂った。
「またか」
「第一戦でもそうだったしな」
「またワンアウトも取れないで負けとか止めてくれよ」
「頼むから抑えてくれ」
「普段そうしてくれてるんだからな」
「シリーズでもそうしてくれ」
サヨナラもう一度と勝負が決まる前から思い込んでいるオリックス側とは正反対に彼等は不安に押し潰されそうになっていた。
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