ハッピークローバー
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第七話 テストの結果はその七
「昔はそうだったのね」
「みたいね、あとプロ野球の選手の獲得にも」
「ヤクザ屋さん絡んでいたみたいね」
「ドラフトがはじまる前は」
昭和四十一年からのことである。
「あの手この手でね」
「チームも選手獲得していたのね」
「阪神だってね」
「何か巨人が色々やってそうね」
「実際にそうだったみたいよ」
邪悪の権化であるこのチームの選手獲得は実に悪辣なものであった、そうして広岡や長嶋それに王に柴田を手に入れていっていた。
「あのチームは」
「阪神以上に」
「何でも長嶋さんなんて」
その中でも特に有名な彼の話をした。
「南海に入りそうだったけれど」
「今のソフトバンクね」
「横槍みたいに入って」
「それで巨人に入れたのね」
「そこで当時の監督だった鶴岡さん激怒して」
そうしてというのだ。
「長嶋さんも慌ててこれまで貰ってたお金返したそうよ」
「そんなことがあったの」
「それでヤクザ屋さんが絡んでるから」
「長嶋さんも危なかったの」
「同じ大学の先輩だった大沢親分があちこちに謝って」
元々鶴岡も彼をつてにしていたらしい。
「そうしてね」
「長嶋さんも助かったの」
「そうみたいよ」
「凄いお話ね」
「それ以降ね、もう大沢さんお亡くなりになったけれど」
それでもというのだ。
「長嶋さんずっと頭上がらなかったそうよ」
「それはそうなるわね」
かな恵もそれはと頷いた。
「やっぱり」
「ヤクザ屋さんに襲われずに済んでね」
「野球も出来て」
「それでね」
「ずっとだったのね」
「大沢さんは色々思うところあったみたいよ」
一華はこの人の立場にもなって話した。
「長嶋さんに対して」
「そうしたことがあったから」
「だからよく長嶋さんのこと聞かれたそうよ」
「このお話が有名だから」
「そうみたい、それで鶴岡さんもう一人選手獲得しようとしていて」
長嶋以外にというのだ。
「それが同じ大学のね」
「あっ、杉浦さん」
理虹が言ってきた。
「杉浦忠さんね」
「そう、あの人をね」
南海の大エースだ、後にこのチームの監督も務めている。
「獲得しようとして」
「それでなのね」
「長嶋さんを巨人に獲られて」
そうなってというのだ。
「鶴岡さん杉浦さんに詰め寄ったそうよ」
「ご本人に」
「長嶋は裏切ったが君はどうなんだって」
「凄い怒ってたのね」
「もうえらい剣幕で詰め寄って」
この逸話は昭和の野球史に残っている。
「どうなのかって聞いて」
「杉浦さん南海に入ったわね」
「そう、杉浦さん僕は南海に行きますってね」
その様にというのだ。
「杉浦さん答えたのよ」
「そうだったのね」
「長嶋さんのことは関係ないって言って」
尚杉浦と長嶋はお互いをスギ、シゲと仇名で呼び合う仲であった。大学時代の絆がそのまま生きていたのだ。
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