歪んだ世界の中で
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最終話 再会その六
「貴方が一途だったからです」
「一途だからですか」
「はい、だからです」
これまでもそうでありだ。今もだというのだ。
「ただひたすら。あの娘のことを考えておられましたね」
「はい」
その通りだとだ。希望も答える。
「本当にそのことだけを考えていました」
「そうでしたね」
「他のことは考えていられませんでした」
そこまでだった。それは確かだった。
「何とかして千春ちゃんを助けたいと思っていました」
「そのうえで、ですね」
「また会って」
そしてだというのだ。
「ずっと一緒にいたいと思っています」
「これからもですね」
「はい、そのことばかり考えています」
この言葉は現在だけでなく過去と未来も含んでいた。
「本当に」
「そう思って毎日ですね」
「千春ちゃんのことを考えていました」
「だからです。これまでの間は」
「あっという間だったんですね」
「はい」
その通りだとだ。姫は希望に答えた。
「だからです。そして夢を適えるには」
「それには」
「瞬く間であるべきなのです」
つまりだ。一途であるべきだというのだ。
「貴方はそれができているのです」
「そうなんですか」
「そうです。では」
「はい、もう少しですね」
「もう少しであの娘が戻って来ます。その間」
どうするかもだ。姫は希望に話した。
「御身体にも。これまで通り」
「気をつけてですね」
「貴方はご自身の身体のことも気をつけていましたね」
「一日もでしたから」
欠かせない、それ故にだった。このことも千春のことを考えてだったのだ。己の身体を気遣うことも。
「ですから」
「そうですね。だからです。最後の最後まで」
「僕の身体も大切にして」
「それであの娘のところに行って下さい」
「そうします」
希望は頷いた。そうしてだった。
春休みの間もだった。毎日千春のところに行った。願いが適うのは間近であるということにさらに希望を見てだ。
希望は春休みを過ごした。その最後の日だ。
千春のところから帰って山を下りたところでだ。携帯が鳴った。それに出るとだ。
真人からだった。彼は携帯からこう希望に言ってきた。
「今から帰りですか」
「うん、そうだよ」
その通りだとだ。希望も答える。
「今から家に帰るけれど」
「それならです」
「あっ、友井君の家に行って」
「はい、飲みませんか」
「いいね。じゃあね」
希望は真人の言葉に笑顔で応えてだ。そのうえでこう返した。
「あては僕が買って来るから」
「チューハイですから」
「チューハイなんだ」
「はい、缶のですけれど」
「それなら胡桃とかピーナツでいいかな」
「そうですね。それがいいですね」
真人は希望の言葉に笑顔で応えた。
「じゃあ僕の家で」
「うん、飲もう」
こうした話をしてだ。実際にだった。
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