イベリス
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第三十三話 葛飾のアイスクリームその三
「三原さんも広岡さんも森さんも巨人出た人だし」
「関係ないと思ってるのね」
「三原さんは巨人の中の内輪揉めで出たそうだけれど」
監督から総監督という名誉職となりすることがなくなりあえて西鉄に移ってそこで監督として働きたかったという。
「あの人は」
「三原さんはそうなの」
「あの人も個性強かったから」
「そんな人だったの」
「魔術師っていう位奇抜な采配でね」
その采配の絶妙で有名であった。
「勝負師で滅茶苦茶怖かったそうなの」
「怖い人だったの」
「そうみたいよ」
「そうなの」
「戦前の監督さんはね」
その頃の人はというのだ。
「正確に言うと戦争前に選手で戦後監督やった人はね」
「川上さんもそうよね」
「そう、あの人も軍隊にいたしね」
「今のお話通りに」
「三原さんもライバルだった水原茂さんも」
「戦前選手で」
「戦争に行ってね」
そうしてというのだ。
「戦後監督になったのよ」
「そうだったのね」
「三原さんはビルマ、ミャンマーに行って」
そちらの戦線にというのだ。
「死線を彷徨って水原さんはシベリアに抑留されていたの」
「ビルマもシベリアも」
「どっちも有名でしょ」
「かなり死んだのよね」
「二人はそれぞれそうした場所にいたの」
「大変だったのね」
「川上さんは結局内地から出なかったみたいだけれど」
そして戦闘を経験しなかったという、軍に召集されていてもそうして終戦を迎えた人も存在するのだ。
「お二人はそうでお二人と並び称される鶴岡一人さんは」
「その人はどんな人?」
「南海の監督だったのよ」
「今のソフトバンクね」
「ええ、ちなみに水原さんも巨人の監督だったのよ」
愛はこの人の話をあらためてした。
「後で東映今の日本ハムや中日の監督にもなるの」
「水原さんも巨人出たのね」
「後でね、三原さんは西鉄から大洋今の横浜と近鉄、ヤクルトの監督もされたわ」
「お二人共色々ね」
「それでこの人達は戦争も経験して」
そしてというのだ。
「士官としても頑張って」
「死線も彷徨って」
「戦前の野球もかなり壮絶だったらしいし」
少ない選手で連日死闘を展開していた、令和の野球とは全く違っていたという。
「その中を生き抜いてきた人達だから」
「凄みが違ったの」
「監督になっても昔はドラフトもなかったから」
選手獲得の為のこの制度もというのだ。
「裏金や密約は普通でね」
「かなり危ない世界だったの」
「それでヤクザ屋さんも関わっていて」
「ヤクザ屋さんって」
「ヤクザの大親分さん相手にサシで臆せず話せる」
「それって凄くない!?」
咲は愛の今の話に思わず目を見開いて言った。
「ヤクザ屋さんのしかも大親分さんもって」
「それが昔の野球でね」
「監督さんのお仕事だったの」
「グラウンドのことだけじゃなくてね」
「選手のそうしたこともしていて」
「色々裏もあってそれを全部仕切っていたから」
それでというのだ。
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