イベリス
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第三十二話 夜の会話その十三
「だからね」
「苺じゃなくてもいいのね」
「別にね」
「じゃあ今度無花果のジャム買ってくるわね」
「そうしてくれるのね」
「ええ、咲がいいなら」
それならというのだ。
「今度はそっちを買うわ」
「それじゃあ頂くわね」
「そうしてね」
「ジャムはそのまま食べてもいいし」
咲はこの食べ方も好きである。
「牛乳や紅茶にも合うし」
「ジャムだけでもね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「頂くわ」
「楽しみにしていてね」
「ええ、それとお父さんは」
「もう会社行ったわ」
「最近早くない?」
「忙しいみたいよ、あと転勤が決まりそうよ」
咲にこの話もした。
「これまではわからなかったけれど」
「やっぱり転勤するのね、お父さん」
「それで東京や神奈川じゃない可能性もね」
それもというのだ。
「ありそうよ」
「そうなの」
「だから千葉県だったり」
「埼玉県ね」
「群馬県や栃木県や茨城県はないみたいだけれど」
所謂北関東はというのだ。
「けれどね」
「それでもなのね」
「千葉県や埼玉県もね」
「お父さん埼玉物凄く嫌がってるけれど」
「だからお父さんは生まれも育ちも東京だから」
それでというのだ。
「物凄く東京にこだわりがあってね」
「埼玉県はなの」
「足立区とは隣同士だけれどね」
自分達が住んでいる場所と、というのだ。
「それでもね」
「埼玉県は嫌なの」
「あと千葉県も柏市位ならいいみたいだけれど」
「千葉も広いからね」
「南の方はね」
「館山とかね」
「ああしたところはね」
千葉県のというのだ。
「あまり好きじゃないみたいね」
「そうなのね」
「遠くてね、ただ埼玉県はもう食わず嫌いな感じで」
「行ったこともないのね」
「それでもね」
「埼玉県は嫌なのね」
「本当に行ったことがないみたいよ」
咲の父はというのだ。
「埼玉県にはね」
「そんなに悪いところじゃないでしょ」
「お母さんもそう思うわ、ただ漫画でもね」
「漫画?」
「埼玉県は田舎というか無茶苦茶描かれていたのよ」
この県はというのだ。
「その辺りの草でも食べさせておけとかね」
「その辺りって」
「ギャグ漫画だったけれど」
「いや、ギャグでも凄いでしょ」
咲もその話には唖然となった。
「というか酷いわね」
「けれど東京と埼玉だとね」
「何かと違うの」
「東京は首都よ」
言わずと知れたというのだ。
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