僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
12-⑷
僕は、薄暗い明かりで眼が覚めた。隣に黒い髪の毛があった。そして、柔らかい美鈴の身体が・・。そうだ、僕達は、昨日、結婚したんだ。その時、現実となって実感できた。
そして、美鈴の身体を抱きしめて、髪の毛を分けて、額にキスをしたら、美鈴も眼を覚ましたみたいで
「おはよう 蒼 私も いつの間にか、寝ちゃったみたい」と・・
「ごめん 僕 いつの間にか 寝てしまって・・ 思いっきり 美鈴と 楽しもうと思っていたのにさ」
「ううん 疲れていたから でも、今からでも・・ネ」と、お互い抱き合っていって・・激しく・・
僕達は、新婚旅行は、行けなかった。美鈴のお店のこともあるし、金銭的にも、余裕がなかったのだ。お昼近くまで、ぐたぐたと抱き合っていて、天満宮に結婚の報告をして、新居に帰って行った。いろいろ、買い揃えるものもあるし、片付けをするつもりだった。
帰ると、お父さんは居なかった。初めて、僕は、新居を見て周った。基は、倉庫とはいえ素晴らしく改装してあったのだ。美鈴は、ずーと、べったり僕と手をつないできていた。そして、各部屋の中でチュッとしてきて、こんなに新婚ってベタベタするんかなって思うぐらい。そのうち、お父さんが戻ってきて
「帰ってきたんか 夜になるかと思ってたのに・・ 散歩コースが変わると思ってな その下見に言って居たんだ 二人共、お疲れだろう 今夜は、ワシが特別料理作るから ゆっくりしなさい」
「お父さんこそ 飲み疲れ無い?」
「大丈夫だよ 晋さんが送ってきてくれてな 又、飲んだ 楽しかったよ」
「もう 歳考えてよ まだまだ働いてもらわなきゃぁ駄目なんだから」
「わかっているよ これからも、返していかなきゃな こんな、立派なもの建てたんだから」
それから、店の方にも行くと、堤さんが作業していた。美鈴が駆け寄って
「堤さん すみません こんな日まで」と、美鈴が声を掛けると
「やぁ 帰ってきたのか もっと ゆっくり、しなきゃー 今日中には、何とか恰好つくぜ もうすぐ、オープンできるよ」
「じゃぁ 9月の第2週にするね 再生オープン」
「う 新生じゃあないのか」
「いいえ 復活発展するのよ ナカミチ ずーと」と、美鈴は力強く言っていた。
その日、お父さんが腕によりをかけたと言う料理が並んでいた。自然薯のポタージュ、鯛のポワレ。どれも、おいしかった。
「天然鯛なんだよ。今の時期は紅葉鯛のはしりなんだけど、脂も乗ってきてうまいんだよ。残念ながら、明石のものは、手に入らなかったけどな」と、言っていた。
「いや いや 言っちゃぁ悪いけど、昨日の料理より格段に違いますよ」と、僕は褒めていた。という訳で、今夜も、お父さんに付き合って、美鈴の冷たい視線を横に、そこそこ飲んでしまったのだ。
「今夜は、二人でゆっくり、風呂に入れよ ワシは、昼、銭湯に浸かってきたから、もう、良いから」というお父さんの言葉で、ようやく、切り上げた。僕は、二人でお風呂に浸かるのは、二度目だったのだが、自然とそうなってしまった。
僕が、ゆっくり、湯舟に浸かっていると、後から、美鈴が入ってきた。
「温泉の元 もらったから 入れるね」と、横に入ってきた。
「お父さん 気 使ってくれたんだね あんなこと言って」と、言ってきたが、その時、僕は初めて「ああ そうなんか」と、思った。
そして、美鈴が髪の毛洗うからって言って居たので、先に出て居たのだが、しばらくして、美鈴が部屋に入ってきて、着ていたガウンを脱ぎ捨てると、真っ白なナイトウェァだった。おそらく、昨日も着ていたのだが、不覚にも、僕は、昨日は覚えていなかった。だけど、今は、ちゃんと美鈴の身体が透けて見えていた。そして、抱きしめていって「幸せになろうな」と言葉を掛けていた。美鈴は思いっきり抱き返してきた。
ページ上へ戻る