もう昔のこと
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第三章
自衛隊で勤務しつつ日本を見ていた、すると日本は復興から高度成長に入った、すると車も大量生産される様になり。
子供が三人出来てその子供達が大きくなってきたところで妻に言われた。
「あなた自衛隊で車の免許持ってるわよね」
「トラックも乗れる」
山谷はローンで買った家の中で妻に答えた、自衛隊の仕事柄単身赴任もあるが思い切って手に入れたのだ。
「それがどうしたんだ」
「だったら車買わない?」
「車?何言ってるんだ」
「最近買う人多いのよ」
「おい、テレビ買って冷蔵庫も洗濯機もで」
妻に驚いた顔で言った。
「そして家だってな」
「買ったわね」
「もう充分だろ」
「だから最近ね」
「車持ってる家が増えてるのか」
「そうなのよ、あなただって街で見てるでしょ」
「そういえばどんどん増えていってるな」
彼も街を歩いた時のことを思った、言われてみればだ。
「最近な」
「オリンピックももうすぐで」
「そうなっているな」
「だからね」
「おい、金がないだろ」
夫は妻にこのことからあらためて言った。
「流石に」
「だからお金がまた溜まってねローンでね」
「買うか」
「自衛官も公務員だからお給料決まってるしローンも組みやすいでしょ」
「ああ」
その通りだとだ、夫は妻に今度は率直な声で答えた。
「だから家もローンだしな」
「それで車もね」
「高いだろ」
「お家よりもずっと安いわよ」
「そうなのか」
「だからね。ローンでね」
妻は夫に是非にという口調で誘う様にして言った。
「買いましょう」
「そんなに必要か」
「そうなるわ。色々お外に出る時だってあるでしょ」
「そうか?」
「きっとそうよ。だから買いましょう」
「そこまで言うならな」
山谷も遂に頷いた、そうしてだった。
車をローンで買うことになった、そして家に来たその車を見てだった。山谷は妻に深く考える顔で言った。横で子供達が車が来た喜びで大はしゃぎしている。
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