POISON LIPS
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第一章
POISON LIPS
甘いキス、そんなものがあるのか。
俺はこの言葉を聞く度に笑った、毒のキスとかいう言葉にも同じだ。二つの言葉を合わせると甘い毒か。
そんなもの本当にあるなら一度出会ってみたい、俺はそう思いながらこの東京で毎日女の子達と遊んでいる。
仕事はホストで貢がせないけれど遊びはする、時間の許す限り女の子もっと言えば店に来る女の人で気に入った相手とは誰でも遊ぶ。誰かと一緒に寝ない日はないしその中でキスというものも飽きる位経験してきた。
けれど甘いキスだの毒のキスだのそんなものは経験したことがない、中坊の時からそうで高校の三年間もそうだった。高校の時は喧嘩とか暴力はしなかったが女の子と遊んでばかりでそれで先生達から評判は悪かった。
高校を卒業してすぐに新宿のホストクラブに入ってそうしている、貢がせるのには興味がなくて店の成績だけで食ってて。
その代わり女遊びはしている、ホストをして五年も千人は相手にしたか。
そんな俺に店が終わって出る時に声をかけてきた女がいた、今日はこの女かと思って顔を向けるとだった。
別にこれといって目立ったところのない女だった、年齢は三十歳位か。OLが着る様な色気のないグレーのスーツでタイトスカートは膝までだ。黒髪はロングでメイクは薄い。ぱっと見学校の先生みたいだ。
そして実際にその人は俺を見て言って来た。
「谷山君ね」
「いや、俺はヒロトだよ」
俺は笑って店の源氏名で応えた。
「店に来たなら知ってるだろ」
「谷山博人君でしょ」
「って俺のフルネーム知ってるのかよ」
何だと思いながら笑って返した。
「あんた誰だよ。前に付き合ってたか?」
「英語の高橋でわかるかしら」
「英語!?っていうと」
俺はここでわかった、というか思い出した。
「高橋先生か」
「わかったわね」
「あの、何でここに」
俺は口調を変えて先生に聞き返した、そういえばこんな外見だった。高校の頃はまだ新任かそれ位で歳月は経ったけれど雰囲気はそのままだった。それで俺は高校時代のやり取りを思いだしながら先生に聞き返した。
「いるんですか?」
「実は従妹を探してるの」
「先生の従妹さんですか」
「この辺りのお店で働いているらしいけれどね」
「ここって新宿ですからね」
正直やばい店もある、縁のある人だし助けるのも義理だと思って俺は申し出た。
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