吸血鬼になったエミヤ
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051話 学園祭編 万有を齎す黄昏の剣 -メルクリウス-
前書き
更新します。
…………うん。ん?
なんだろう?先ほどまで気絶していたのはなんとなく覚えている。
そしてアスナとこのかの二人に看病されていたのもおぼろげながらも覚えているんだけど……。
さっきまで感じていたこう、胸の奥底が締め付けられて背中の翼も相まってとんでもなく苦しくなるような衝動はもうなくなっていた。
私は少し怖い感覚になりながらも目を見開く。
すると、私の眼前には今にも泣きそうな顔をしているタマモが見下ろしていて、
「えっと、おはよう?タマモ」
「し、シホ様~~~!!」
と、いきなり泣き出してしまって抱き着かれてしまう。
いったい、私が気を失っている間に何が起こったのであろうか……。
ふと…………、私は手元に一枚のカードが置かれている事に気づく。
それは、エヴァと仮契約したものとは少し様相が違っている感じがした。
「タマモ、少し落ち着いて。それと、私が意識を失っている間になにがあったの……?」
「ぐすんぐすん……えっと、それはですね」
それで事の成り行きを聞く事になる。
なんでも、あの胸の苦しみはあの時の悪魔が原因だったとの事で……くっ。まだ私を苦しめているつもりなのかあのキチガイ悪魔……。
過去の凄惨な光景を思い出しそうになって頭痛が始まりそうになるけどなんとか耐えて、続きを聞く。
タマモとエヴァが私の精神世界に入り込んで直接悪魔の残滓を叩こうとしたらしいんだけど、なんでも私の精神世界になんとイリヤ!?ともう一人は誰かは分からないけど始祖だというアインツベルン?それに私のもう一つの人格である名無しの吸血鬼の部屋があっただとか。
それでイリヤ達が表に出てこれるように、エヴァが仮契約の仕組みを少しいじって、それでネギ先生と私の承諾なしに仮契約させて、カードが出たと思ったらそのカードがひとりでに動いて悪魔の残滓を切って捨てた、らしい……。ついでに私の悪魔の翼もなんか白色に変色したらしい。
なんか情報量が多いわね……。
とにかく、イリヤが私の中にいることは理解できたけど、なんか気配は感じるんだけど念話の感覚で話しても反応はない。これは……。
と、そこに水着姿のネギ先生が歩いてきた。
「あ、シホさん!やっと目を覚ましたんですね!」
「ネギ先生……その、なんかご迷惑をかけたみたいですみません……」
「いえ!それよりもシホさんが助かったみたいで良かったです!まだなにか違和感はありませんか……?」
「いまのところは……むしろなぜか不思議とすっきりしているんですよね」
「そうですか!それで少ししたら皆さんと一緒に超さんについて対策会議をしたいんですけど、シホさん達も参加してもらっても構いませんか……?」
「いいですよ。でも、なんかいまは疲労からでしょうか足にあまり力が入らないので……タマモ、お願いできる?」
「わかりました♪」
そのまま私はタマモにお姫様抱っこをされながらみんながいるであろうプールの方へと向かう。
すると、
「あ、シホ!もう平気になったの?」
「ええ。ごめんねアスナ。心配かけたみたいで……」
「いいわよ。それより……なんかそう抱っこされているとシホが来たときを思い出すわね」
「確かに……大丈夫。少ししたらまた歩けるようになると思うから」
「うん。よかった」
それで他にもいたみんなに心配の言葉を掛けられるも、それぞれに対応しつつ思った。
「長谷川さんにハルナにも魔法がバレたの……?」
私が知らないところでまたメンバーが増えている事にそう言葉を零した。
まぁ、ハルナに関しては遅からずって感覚だったけど。
それで私はビーチにある椅子に下ろしてもらう。
「まぁ、こんな面白そうなことは他にはないよねー」
「おい。だから私はまだ仲間になったわけじゃ……」
ハルナは能天気そうに笑い、長谷川さんはまだ現状に適応できていない御様子。
魔法バレして巻き込まれた感じかな……?
「そ、それじゃ今から超さんについての作戦会議を始めたいと思います」
ネギ先生がそう言って全員を集めて話し出す。
そういえば、超さんについては私はこれといって情報を会得していないんだよね。
さて、どんなびっくりな話が聴けるのやら……。
まず、超さんは嘘か真かネギ先生の子孫で、しかも火星人だという。
未来からタイムマシンを使ってやってきて現在進行形で歴史の改変を企てて魔法の存在を世界にばらそうとしている、らしい……。
「未来人とか火星人とか……それって嘘じゃないの……?」
「いえ、本人がそう言ってましたし。それに、未来人とか火星人とかいうのなら……その、シホさんで例えるなら……言ってしまっても構いませんか?」
刹那がそう私に問いかけてくる。
なにをとは敢えて聞かない。
私は承諾の意味も込めて無言で頷いた。
「その、シホさんは元は男性であって、しかも異世界人ですから。そういうのもありなのではと」
うん。刹那さぁ、少しは配慮してよ。
特大の爆弾を素直に落とすのも考え物だよ?
オブラードに包みなさい。
それで当然、まだ教えていない皆も驚いた顔になっていたし、特にハルナは「はぁ!?」という叫び声を上げる。
「シホって……その、TSしてきたの!?」
「TSって……まぁ、最近になってとある出来事で記憶を思い出すまで私自身、もとは男性だったなんてすっかり忘れていたわけだし……。それに、言い訳にも聞こえるけど今となっては男性としての時の記憶は前世くらいの感覚なのよね。この世界でシホとして過ごした時間があまりにも濃厚すぎて記憶を思い出した後でももう女性に対して興奮とかはこれといってしないし……」
「これは……精神的BⅬ?……それとも、精神的GⅬ?もしくはどっちも?なんだこれは、わたしの開拓したことのない未知の領域!?まだわたしの手の届かない場所があったとは……!しかも異世界人で吸血鬼で清楚系かと思えば薄幸系でしかもしかも凌辱系も追加オプションとは……!なんて敦盛!!くっ殺!!…………ぶつぶつぶつ…………」
と、なにかの燃料でも投下してしまってフルドライブでもしてしまったのかフルスロットルでぶつぶつと言い始めているハルナに対して、
「えっと、どうすればいい……?」
そう聞くが他のみんながハルナのあまりの状態異常っぷりに逆に冷静になったらしく放置をするしかないという結論に至ったらしい。
まぁ話が進まないもんね。
「と、とにかくですね。すべてが嘘でもないと思うんです……それに、超さんからお借りしたこのタイムマシンは、本物です」
そう言ってネギ先生はタイムマシンを取り出して見せてくる。
それに気づいたのかタマモは、
「あー……だからなかなか居場所が特定できずに、しかも話が噛み合わなかったのですね」
と言っている。
なにか心当たりがあったらしい。
それから今の戦力把握も大事だと、ハルナに夕映、そして私の新たな能力の確認もしたいという事でとりあえず私は足に力を込めて立ち上がる。
まだ少しふらつく感じはあるけど日常生活には異常はないだろうし。
それからまずはハルナと夕映が水着の上からアーティファクトを展開していた。
夕映の格好はローブに帽子、箒に分厚い魔法書から見る感じ純粋な魔法使い一式セットって感じかな?
そしてハルナはやはり性格と趣味がもろに影響したのかスケッチブックに汚れ防止のための前掛け、そして羽ペンとおしゃれな帽子いう漫画家みたいな感じだった。
「おっほほー!いーねいーね!!」
「可愛いです!」
と、ネギ先生達からは絶賛されていたが、遠いところで長谷川さんが遠い目をしていた。
思うことはもう私達は慣れたがおこじょであるカモミールが普通に喋っている事に対してか、はたまた自分の常識を現在進行形で壊されるところからくる達観か……。
「そ、それじゃシホさんもお願いしてもいいですか……?」
「いいですけど……その前に、ネギ先生」
「はい?」
「緊急事態だったとはいえ意識がなかった私に承諾もなしにキスをするのは今後はやめてくださいね?英国紳士としても結構アウトですし」
「はうう!? すみません!!」
それで思い出したのか顔を赤くしているネギ先生をよそに私は新たに手に入れたカードを発動する。
「来れ……」
そして出現するのは一本の剣であり、私の格好は『贋作の王』の誰にでもなれるゆえに無色であり服装の変化はないのとは違って、赤原礼装の姿に変わっていた。
「全体的に髪色とかも含めて赤い……」
「確かに赤いね……」
「でもシホに似合っていてカッコいいわね」
「シホ様!とてもお似合いです!これでいちいち戦闘服を用意する手間も省けましたね」
みんながそう話していると、なにやら剣になにかの念のようなものが感じ取れて、ふと四つの色のプレートに目を向けると突然紫と青の結晶が光り出した。
なにごとかと思い、横に水平にしてみたところ、結晶の上にまるでホログラムかのように人の姿が現れる。
そこには……、
『あ! やっと起動した!』
『起動しましたね……』
そこにはミニチュアサイズのイリヤの姿ともう一人、イリヤを大人にしたかのような感じで白いローブを着ている女性が映し出された。
「え?イリヤ……?」
『やっほー! シホ! こうして会うのは久しぶりだね!』
「そ、そうだね……えっと」
私は少し混乱する頭で周りを見回すがみんなも固まっていてイリヤ達に視線が集中していた。
そこに冷静に勤めているのか、
「貴様がイリヤスフィールか?」
『あ、その声はシホの精神世界に入ってきた人?』
「そうだ。私はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。真祖の吸血鬼であり今はシホの主人と言うところか?」
『主人!?ずーるーいー!シホは私の妹なのにー!!』
バタバタと透明のイリヤが暴れている。
小さくてかわいい……。
『イリヤさん、話が進みませんから……』
『あ、うん。始祖様』
始祖様、ね……。
アインツベルンの歴史はそんなに知らないけど、どういう人だろうか。
『皆様、お初にお目にかかります。わたくしはシルビア・アインツベルン……イリヤの、いえ……アインツベルンの始祖と言う立ち位置にあります。もう忘れ去られた肩書ですがね』
そう言ってシルビアさんはみんなに挨拶をしている。
でも、
「ちょっと……アーティファクトって意思を持つものなの?」
アスナの疑問はもっともだね。
私もそこのところ詳しく知りたかった。
『いえ、わたくし達は基本シホさんの中に魂をともにしているだけなのですが、このアーティファクト……真名を『万有を齎す黄昏の剣』……またの名を『メルクリウス』を仲介することでわたくし達の意識を表に出すことが可能になっているのです』
シルビアさんの説明になるほど……と思っていたが、そこでエヴァがわなわなと震えているので何事かな?と思っていると、
「『メルクリウス』だと!?」
「知っているのか、エヴァちゃん!?」
ライデンばりにハルナが問いかける。
「ああ。詳しくはないが伝説級のアーティファクトだと聞く……ああ、茶々丸がいればアーティファクトの詳細を検索できたものを……!」
そういえば、茶々丸がいないよね?
そっか。それじゃどうするか。
そこでふと、
「そういえば、贋作の王の方に夕映とハルナのカードも登録されているけどエヴァがしたの?」
「そうだが……今はこのもどかしさをどうにかしたいものだな……」
「わかった。夕映」
「は、はい……?なんでしょうか?」
「私の予測が正しいのなら……来れ・選択『世界図絵』!」
私の手元に夕映のアーティファクトのコピーが出現する。
そして本を開く。すると自動的に能力の知識が流れてきて、
「やっぱりね……」
「なにがやっぱりなんすか?シホの姉さん」
「夕映のアーティファクトはただの魔法書じゃないわ。その実態は……まほネットにも接続できて所持者の問いに応えてくれる世界中の魔法に関係する知識が閲覧できる『魔法大百科』よ」
「「「「「な、なんだってーーーッ!!?」」」」」
みんなが驚いている間にも私は『万有を齎す黄昏の剣』と『メルクリウス』に関しての情報を取得していく。
「ゲット……今からみんなにもわかるように教えるわね。曰く……」
『アーティファクトとしては最高位のもの。
使い熟せば、凡ゆる属性や天候を操る強大な力を持つもの。
更に、対象の生死や寿命(過去・現在・未来)を視認する事から見通す針(刻の剣)としての側面を持つ。
但し、人類史に於いて真の担い手はおらず、また、担い手となったが本来の一端しか力を行使を出来なかった事から、魔法世界に於いて記録さえ存在しない謎のベールに包まれたアーティファクトである。
故に現在に至るまで担い手を発見出来なかった理由は一人の技量では操作が不可能な代物だからだ。
此の剣は本来、四人の意思で支える存在で、基本的に契約者に対して
一人一つ分のアーティファクトしか担えないのが常識(複数出現型のアーティファクトも存在するが別枠として省略)の筈なのに四人分の意思とは異常である。
しかし、もし一人で四人分の意思を補う事が可能であれば、其れは人を超越した『超克者』という存在である。
真の担い手となるための素質としては、前提として『万有を齎す黄昏の剣』とは異なる、他者のアーティファクトも自身のものとして意のままに操る常識を覆す異常なアーティファクトを所持しているか否かである。
但し、其れ程の異常なアーティファクトなどの存在は、まず、稀少な上に存在が曖昧であり、担い手となるのはまず奇跡だろう。
それを踏まえてさらに『万有を齎す黄昏の剣』を手にするものがいるとすれば……(ここで記述は途切れている)』
「…………らしいわよ?なんか、壮大な話ね……」
読んだ私本人でさえつい意識が朦朧とするような内容だった。
『わーい!シホってすごい存在になったんだね』
イリヤがお気楽に笑っているけど、次の瞬間、
「「「「「はぁーーーッ!?」」」」」
と、普段冷静なものも含めて叫んでいた。
や、私もびっくりしているんだからそんなに睨まないで……。
「つまりだ。私との仮契約はきっかけになってしまったわけか……『贋作の王』……確かに他人のアーティファクトも登録すれば自在に操れることも可能だしな……」
「なんか、壮大すぎて頭が追い付かないわ……」
「わたしでさえそうなんだからアスナが分かるわけないじゃん!」
「シホ殿はすごいでござるな……」
「うむ。戦慄を感じるアル」
「シホさんが仲間内で本当によかったですね……恐ろしいです」
「せやな、せっちゃん……」
「さらっと私のアーティファクトも私以上に操っているのがその証拠ですね……」
「そうだね、ゆえー……」
「どこから突っ込んでいいか分からねー……」
「シホの姉さん……正直に言ってすごすぎっス」
「シホさん、すごい!!」
「シホ様、素敵です!!」
全員が各々に私に対して畏怖の視線を送ってくる。
やめて!
私はそんなすごい存在じゃないから!
『…………ですが、まだシホさんは真の担い手にはなっていません』
というシルビアさんのそんな言葉で現実に戻される。
「聞こうか」
エヴァの言葉で全員がまた聞く耳を立てる。
『先ほどシホさんが読んだ通りの内容だとしたら、わたくし、イリヤ、そしてシホさん……まだ三人分しかないのです。そしてプレートを見てもらえれば分かる通り、一か所だけ黒に染まっていてマークが浮かび上がっていません。
もうわたくしが言っている事は分かりますね……?』
「つまり……私がこの剣の真の担い手になるためには現在は封印されている私のもう一つの心であり、過去の残酷な経験から産み落とされてしまった私の闇……名無しと対面して説得し協力しないといけないわけね」
『そうなります。しかし、それは現状とても可能な状態ではありません。おそらく封印が解けたが最後、彼女はシホさんを確実に乗っ取りに来るでしょう』
それで静まり返る場……。
私の過去を知っているものなら容易ではないと思うのは当然のことで……。
「つまり、今は不完全でも現状維持が妥当な感じなのね」
『そうなりますね……ですがご安心ください。わたくし達も協力いたしますので』
『そうだよシホ。お姉ちゃんに任せて!』
「ありがとね……」
『それに、少し触った程度ですが……シホさん。プレートを回転させてみてください。あ、わたくしのは青の結晶です。イリヤさんのは紫の結晶……それを剣の先端に合わせるようにすれば魂が置き換わります』
「こ、こう……?」
私はプレートを回して試しにイリヤの青の結晶に合わせてみると、急に私の意識が引っ込む感覚を味わい、次の瞬間には、
『あれ!?私、小さくなったの!?』
一瞬の間に私はスペードの赤い結晶の上に透明に浮かんでいた。
つまり、
「あ!私自由に動ける!」
そう。驚くことにイリヤが実体を持ってその場にいたのだ。
ご丁寧に身長も死ぬ前のイリヤのままであり、赤原礼装もイリヤに合わせて子供サイズに変換されていて銀色の髪が赤によく映える。
「シホ様!?それにイリヤさん!?」
タマモは武闘会まで一緒にいたこの世界のイリヤを思い出してか、ペタペタとイリヤを触っていた。
「くすぐったいわよ~」
「す、すみません……しかしアーティファクトにここまでの権限もあるのは異常なのではないですか?魂の置換で姿形まで変わるだなんて……膨大な神秘です」
「それゆえの伝説級か……恐れ入るな本気で」
エヴァも舌を巻くほどだから相当だろうな。
「確認できたことだし、戻るねシホ」
それでイリヤが私の結晶を先端に合わせると、また一瞬で私の意識が表に出ていく感覚を味わい、みんなと同じサイズに戻っていた。
「ごめん…………すごすぎてちょっとふて寝していいかな?」
私の言葉に、
「まだ対策会議中ですよー!」
と、ネギ先生に泣きつかれてしまった……。
それで頭痛も発生して頭がパンクしそうなのを耐えながらも超さんについての話し合いが再開されたのだけど、私も含めてみんなはしばらくどこかぼーっとしていたのが印象的だった。
後書き
チートなアーティファクトぉ!!
しかしまだ真の担い手にはさせません。
説得フラグを消化しない限りただの担い手です。
そして次回は未来編に入りますかね。
シホは残るべきか一緒にいかすべきか……。
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