私の中に猫がいる 完結
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4-⑵
なずなから連絡をもらつて、美浜に行ってみた。カウンター越しになずなが居て、動いていた。
「すずり いらっしゃい ようこそ 美浜に」と、少し、おどけていた。
「なによ すっかり お店の人ね」
「そうよ 美人ウェイトレス 何にする? ビール ワイン?」
「うーん ワイン」
「真鯛のカルパッチヨ 新鮮よ」と、前菜みたいなものを出してきた。ワインは石積さんが注いできた。
「ねぇ 聞いて 私達 結婚するの 年あけたら」
「えー そんななのー おめでとうと言うべきなのかなぁー 私 ショック」
「うふっ 驚きでしょ 彼 プロポーズしてくれたんだ」
その時、私は、石積さんの方を見たが、微笑みながら調理していた。なずな ずるいって思う気持ちと良かったねと思う気持ちが交差していたのだ。
「すずり 何か食べる?」と、言われて、我に帰って
「うん いつものランプ肉 お塩で」と、言ったのだけど
「今日は、ガーリックソースがいいわ」と言い直していた。
「今ね 週に2.3回は修一のとこに泊って、そこから出勤しているのよ」
「なんなのよ 突然 何で そんなこと、前に言ってくんないのよ」
「だって 押しかけなんだもの すずりには言えなかったんだよー 年明け 早々に彼がマンション借りてくれて、そこに一緒に住むわ」
「あのねぇー 私 びっくりしているのよ」と、ワインのお代わりをした。
お料理を石積さんが出してきたが「どうぞ ごゆっくり」と言ったきりだった。もう、私には興味もないのかなぁーと感じながら、でも、いつものようにおいしいと思っていると
「あのね すずり マンシヨンに移るの、楽しみにしているのよ」と、小声で言ってきた。
「そりゃぁ そうでしょ」
「彼がね 愛してくれるでしょ 今は、親と一緒だから、声も出せないのよ」
「なによ それ 声ださなきゃいけないの?」
「うん そんなことって、私も思っていたんだけど 自然と声出したくなっちゃうんだよね 愛されているんだと思うと」
「なずな 刺激強すぎるわ そんな生々しいの やめてよー」
「あー ごめんね すずりには・・体験談よ」
その時、私は、舜のことを想い出していた。そして、あの旅行の時のことも。私、真っ白で声も出なかったのだ。
家に帰る時、坂道を歩きながら、私は、舜のことを思い出していた。なぜか、今、抱いて欲しいって思っていたのだ。
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