FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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重なる思惑
前書き
二パターンの結末を用意してましたが、時間がかかる方の展開にする予定なので結構話数を使うかもしれません|ョω・`)アクマデヨテイデス
ウェンディside
国王を捉えるために先に城へと乗り込んでいるシリルたちを助けるために街の中をかけていく私たち。彼が予想していた通り、部下の大半を私たちが出てくる地下通路の出口に配置していたようで、大きな戦闘もなく城の敷地内へと潜入できました。
「あの子の言っていた通りの流れね」
「どこがバリーザウィッチの部屋だ?」
ジェリーさんとミハエルさんがそう言います。私は耳を済ませ周囲の音を聞き取ることに集中し、シリルがどこにいるかを把握しようとしました。
「向こうから音がします!!こっちです!!」
「あ!!ウェンディ!!」
微かに爆発音が聞こえ、その方向へと向かって走り出します。今戦闘をしているのは間違いなくシリルたちしかいない。そうなればこの音の先に彼らがいることは確実なはず・・・
そう思い走っていくと、大きな窓がつけられた部屋からシリルとユウキさんの後ろ姿が目に入りました。
「ホントにいた!!」
「あそこか!!」
後から来たジェリーさんとミハエルさんもそれに気が付いたみたいです。上階に姿が見えますが、あそこならシャルルとセシリーに運んでもらえば助けに行くことができる。そう思っていたら・・・
突然、シリルが仲間であるはずのユウキさんを窓の外へと突き落としました。
「「「「「え・・・」」」」」
目を疑うような光景。しかし、ユウキさんは確実に地面へと向かって落下しており、それが現実であることが突き付けられる。
「「「ユウキ(さん)!!」」」
慌てて彼を助けようと走り出します。そんな私たちの目に写ったシリルの身体には、黒い模様が浮かび上がっていました。
「まさか・・・」
以前植え付けられた滅悪魔法。それが再び彼を蝕んでいると思い、私は不安で足が止まってしまいました。
シリルside
「シリル!!テメェ!!」
地上に向かって落ちていくユウキさん。彼は怒りで血走った目でこちらを見上げていました。
「やっぱりそうか。こうなることはわかっていたよ」
その様子を見ていたバリーザウィッチは嬉しそうに笑みを浮かべている。俺はそんな彼の方に向かって向き直った。
「こうなること?」
「君が私に付いて来てくれることだ。そのために彼を突き落としたのだろう?」
そう言いながらこちらへと手を差し出してくるバリーザウィッチ。俺はその手を・・・
「何勘違いしてるんですか?」
取ることはなく、はたき落とした。
「え?」
この答えに意味がわからないといった表情を浮かべながら叩かれた右手を押さえている青年。
「俺はお前に付いていくつもりはさらさらない」
こいつの言う通り、皆さんを守るために彼に付いていくのもありだろう。しかし、その言葉が本当なのかわからない。それに、ウェンディを置いていくようなことをできるわけがない。
「何を言っているんだい?それじゃあなんで彼を突き落としたんだ?」
俺がユウキさんを突き落とした理由がわからないバリーザウィッチはますます困惑の顔をしている。
「やっぱり思っていた通りだ」
「何?」
「お前の未来予知・・・完璧ではないんだろ?」
そう言った瞬間、彼の目が大きく見開いたのがわかった。それはこの考えが正解だということを物語っていると考えていいだろう。
「なぜそう思うんだい?」
「ユウキさんたちの話を聞いておかしいと思ってたんだ。なんで攻めてくる時は対処するのに、わざわざその反乱分子を逃がしているのかってね」
「君がここに来るまでわざと逃がしていた・・・とは思えなかったのかな?」
「残念だけどそれは考えられなかったね。あなたが天使だとは思ってなかったし。ただ、もしわかっててもそうは思わなかったと思うよ」
「それはなぜ?」
恐らくこれは彼が納得するために問いかけてきているのだと理解できた。取り繕うと焦る様子も見えなければ、こちらの考えを否定するために問いかけている雰囲気ではない。それはたぶん・・・俺が天使の子だからというのもあるのだろうが。
「俺がこの国に来るタイミングで指示を出しておけば、捉えることは簡単だったはず。だが、それをしなかったということは俺がここにやってくることはわかっていなかったということ。
あなたの未来予知は情報量が多くなればなるほど得られる情報が限られてしまう・・・一部分だけしか見えないものなんだろ?」
「・・・」
バリーザウィッチは何も答えない。それが肯定であるということは、言うまでもないのだろう。
「確かに君の言う通りだ。もっとも、この世界の事象については・・・という制限があるがね」
シャルルが未来予知をもっとも発動したのはエドラスに行った時。彼女もその時はウェンディやナツさんたちを道案内するために無意識に発動していた未来予知を使っていたけど、あの時が一番鮮明にビジョンが見えているようだった。そして彼のこの言葉・・・もしかしたら自分がいる世界以外の未来は多くの干渉を避けるために見えづらくしているのかもしれない。だけど、今はそんなことはどうでもいい。
「そんな欠陥があると思ったから、俺は爆弾を使い人も分散させ、できる限り情報量を増やした。それがうまくいったみたいでよかったよ」
「確かにそれについては素直に脱帽するよ。ただ、君は私の能力を回避できていないんじゃないかな?」
「何?」
「だってそうだろ?私は君が彼を突き落とすビジョンを得た。だからここで待ち、現にそれが起きている。そこから先の未来は見るに値しないだろ?」
どうやら彼はここまでの未来予知をしていたらしい。それがあったから、俺たちがここまで攻めて来れるようにと部下たちを全員出払っていたんだ。だけど、それを聞いて俺は思わず笑ってしまった。
「なるほど。確かに俺はユウキさんを突き落とした。でもそれは奥の手のために必要なことなんだ」
「奥の手?」
俺の狙いがいまだに見えないことで眉間にシワを寄せるバリーザウィッチ。しかし、その顔はすぐに弛緩した。
「その奥の手が何かはわからないが、この高さから落ちたら彼は助からないぞ?それが君のやり方なのかい?」
「確かに普通に落ちたら助からないですね。でも・・・
こっちにはまだ頼れる仲間がいますから」
そのタイミングで地上から黒い風が舞い上がる。それは城の中にいた俺たちからでもわかるほどの突風で、落下していたユウキさんを守るように地上へとゆっくり下ろしてくれる。
「天神の舞!!」
横目で見た地上には思っていた通り、赤紫色の髪を二つに纏めた少女がいる。彼女の魔法により、ユウキさんは無事に地上へと降りることができたのだ。
「あれは・・・分断されていた・・・!!」
シェリアの姿を見たことで彼は後ろからの殺気に気が付いたようで慌てて振り向く。そこにいたのは黒い冷気を右手に纏わせた金髪の青年。
「永久凍土!!」
「ぐっ!!」
無警戒だったところからの攻撃にガードをするのが手一杯だった彼は地面を削りながら転がっていく。しかし、すぐに体勢を立て直し落下は免れていた。
「私にダメージを与えられる人間・・・なるほど、こいつが噂の・・・」
本来なら致命傷になりかねないほどの威力を秘めているはずのレオンの永久凍土を受けたにも関わらず目立った外傷がない。それだけでこいつの実力が本物であることが理解できる。
「やっぱり来てたんだな、シリル」
「そっちもね。絶対来ると思ってたよ」
横に立ちながらニヤリと笑ってみせるレオン。それに釣られて俺も笑ってしまった。
「「お前ならすぐに城に乗り込むと思ってたよ」」
ユウキさんの攻撃によって離ればなれになってしまった俺たちだったが、それはそこまで気にするようなことだとは思わなかった。なぜなら俺たちが受けてきた依頼は同じもの。つまり、やるべきことが同じなのだから、今後取る行動も似たようなものになることは容易に想像できた。
だから俺たちは手早く準備を済ませ、城へと乗り込んだ。変に時間をかけてしまうとレオンたちとタイミングがずれる可能性が高くなる。その誤差をできるだけ無くすために素早く城へと乗り込んだのだ。
そして極め付きはユウキさんの突き落とし。これは本当にピンチになったら使おうと思っていたのだが、レオンの攻撃は威力がある分周りへと被害も出やすい。そこまで強くないユウキさんだと巻き込まれかねないのと、こちらに注意を向けさせるために利用させてもらった・・・たぶんめっちゃ怒ってそうだけど。
「さて、それじゃあとっととこいつを倒して帰るとするか」
「だね」
あとで何か言われるのは必須だろう。だけど、こいつを倒せば全て丸く収まる。俺たちは魔力を高め、バリーザウィッチへと向き直る。
「やれやれ・・・まさかこんなことになるとは・・・」
相対するバリーザウィッチはゆっくりと立ち上がると、ダメージを受けた右腕を振るい感覚を確かめている。それが済むと、こちらを向き、ニヤリと笑みを浮かべた。
「まぁ問題ない。時間はかかるが、私は使命を果たせばいいだけなのだから」
一変した状況にも関わらずなおも見せる余裕の表情。その不気味さに俺たちの背中に冷たいものが流れた。
後書き
いかがだったでしょうか?
シリルがひたすら滅悪魔法に取り込まれそうになっているというミスリードをしつつ実は冷静さを失うことなく戦略を進めていたという展開です。
結論、ウェンディがただの心配性なことが印象付けられただけになりましたが。
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