ヘタリア大帝国
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TURN49 騎士と海賊その六
「どうにかしたいとは思っている」
「左様ですか」
「エイリス軍にはこうしたことはあるだろうか」
「陸軍と海軍の対立はないですが」
一つの軍だからそれはある筈はなかった。
「しかしそれでもです」
「対立はあるか」
「対立がない国家なぞないでしょう」
ネルソンはよくわかっていた。国家、いや組織というものはその内部においても必ず対立があるものだということを。
それでだ。ネルソンも言うのだった。
「武官と文官の対立でしょうか」
「文武のか」
「私も貴族ですが」
エイリス貴族の中でもかなり上位に位置している。
「武官、騎士です」
「騎士ならばか」
「そうです。女王陛下と祖国殿に絶対の忠誠を持っています」
「それがエイリス軍人だな」
「エイリスの武はエイリスの誇りでもあります」
ネルソンはこの自負も見せた。絶対の誇りがそこにあった。
「しかし。戦わない者達はです」
「あの腐敗した貴族達か」
「文官の全てがそうではないですが」
流石に文官の貴族達全てがそうではないというのだ。だが、だった。
「しかしそれでもです」
「エイリスの文官は腐敗しているか」
「己の利を貪り搾取をしているだけです」
「植民地でのことだな」
「そうしてきています。その彼等との対立があります」
「民を搾取jするなぞ言語道断だ」
山下の最も忌み嫌うことの一つだった。彼女の信条は弱きを助け強きを挫くだからだ。そして義を見せせざるは勇なきなのだ。
「断じて許さん」
「だからといって成敗されようというのは」
日本がその山下に注意する。
「平良さんや福原さんもですが」
「やり過ぎだというのだな」
「不正は調べその都度糾弾しています」
それでエイリス貴族の植民地での利権は全て潰してもいっている。
「ですからそうしたことはです」
「慎まねばならないというのだな」
「そうです。さもないと不要な怪我をしてしまいます」
かつての平良がそうなった様にだというのだ。
「ですから絶対にです」
「わかっている。だから今はだ」
「長官が成敗される必要はありません」
厳格で正義感の強い山下への言葉だ。
「くれぐれもお願いします」
「これからもだな」
「はい、その様に」
日本は山下にこう注意もした。そうした話をしながらだった。
一行は帝の御前に出た。勿論伊藤に宇垣も一緒である。
日本妹もいる。日本帝国の主だった面々が集まりその上で帝の御前にいた。
暫くして帝が来た。そしてこう一同に言ってきた。
「皆さん、では今日の会議ですね」
「はい、その議題ですが」
首相であり議長役でもある伊藤が応える。
「ここにエイリス軍の提督を案内させて頂きました」
「そちらの方ですね」
「お初にお目にかかります」
ネルソンは慣れないながらも丁寧な正座から頭を下げてそのうえで帝に挨拶をした。その動きは実に礼儀正しい。
「エイリス軍大将、騎士提督ヴィクトリー=ネルソンです」
「あっ、凄いイケメンですね」
「えっ!?」
ネルソンは帝の今の明るい言葉に思わず声を出した。
「今何と」
「ですから。素晴らしい美男子だと」
「あの、今ここは」
「ああ、帝ちゃんはいつもこうなんだよ」
東郷は帝の御前でもいつもの調子だった。明るく砕けた調子で驚きを隠せないネルソンに言ったのである。
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