八条学園騒動記
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第六百三十八話 酒が進むその三
「最早な」
「問題じゃなかったわね」
「そうだった」
そこまでの繁栄だったというのだ。
「そしてその中にはな」
「お酒もあったわね」
「色々なご馳走にな」
「そんな中だから」
「色々珍味もあった」
食事の方の話もした。
「そしてな」
「本来コーランでは食べたら駄目っていうような」
「そうしたものもな」
「食べていたのね」
「そうだったかも知れない」
繁栄を極めたその中でというのだ。
「ハールーン=アル=ラシードは違ったと思うが」
「あの人は」
「何分真面目な人だった」
性格はそうであった、ただし何分短気なところもありすぐに人を死刑にしたという。その為処刑人のマスルールが常に傍に控えていた。
「だからな」
「イスラムの教えは守っていたの」
「当時としては桁外れの贅沢をしたが」
それでもというのだ。
「しかしな」
「それでもなのね」
「信仰に対しては真面目だった」
「考えてみたらカリフだし」
アッラーの代理人である。
「今はいないけれどね」
「オスマン=トルコがなくなってからな」
「トルコ皇帝がスルタンでね」
「カリフでもあったからな」
これをスルタン=カリフ制という、オスマン=トルコではアッラーの代理人のカリフと世俗の領主スルタンを兼ねた者が皇帝であったのだ。これにより聖俗両方の権威を手にしその権威で以て統治を行っていたのだ。
「そのトルコ皇帝がいなくなってな」
「ずっとカリフはいないわね」
「サハラが統一されてだ」
そうなってというのだ。
「皇帝が即位するとな」
「カリフも復活するわね」
「そうなる」
「そうよね、そしてそのカリフだったから」
「あの人もな」
ハールーン=アル=ラシードもというのだ。
「こと信仰においてはな」
「真面目だったのね」
「そもそもイスラムで贅沢は悪ではない」
ギルバートは強い声で語った。
「お金を儲けても錬金術で若し金を生み出してもな」
「悪いことじゃないのね」
「一向にな」
「だから錬金術も発達したのね」
「禁じられるどころかだ」
かつての欧州の様にだ。
「むしろ奨励されてな」
「大々的に行われていたわね」
「だから理系も発展した」
そちらの学問もというのだ。
「そうなった」
「そうよね」
「そうなったからな」
だからだというのだ。
「本当にな」
「贅沢をしてもよくて」
「問題なかった、質素な金持ちはだ」
イスラムでそれはというと。
「かえっておかしい」
「そうなるのね」
「贅沢をしてもいい」
「問題は喜捨ね」
「施しをすればな」
それでというのだ。
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