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伴装者番外編

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妹的には……(小日向未来バースデー2021)

 
前書き
未来さんの誕生日ですね!

というわけで、短編でサラッと新キャラを出していくスタイルです。
それではどうぞ、お楽しみください。 

 
「う~ん……どうしようかなぁ……」

加賀美恭一郎は悩んでいた。
恋人である小日向未来の誕生日が、もう3日後まで迫っているというのに、彼女へのプレゼントが決まっていないのである。

「あんまり重たいのは渡せないし……でも女の子が渡されて喜ぶものかぁ……」

悩むこと一週間近く。翔と純からのアドバイスで、当日の予定は決めてあり、残る心配はプレゼントだけである。

翔や純と違い、恭一郎と未来は付き合い始めたばかりだ。
まだまだ未来の事を理解しきれてはいない、と恭一郎は感じていた。

となると、誰かにアドバイスを求めたいところだが……。

(立花さん達には相談できないし……うーん……)

しばらくベッドの上でゴロゴロしながら考えをめぐらせて……やがて、彼はひとつの答えに行き当たる。

彼はスマホである番号に電話をかける。

相手の名前には『加賀美華燐』と表示されていた。

ff

あたしの名前は加賀美華燐(かりん)。ごくごく普通のJK1年。
部活の助っ人に、友達と遊びに行ったりと毎日大忙し。高校生活が楽しくて仕方ない歳頃の、いわゆる陽キャってやつだ。

家族構成は両親とおばあちゃん。あと、都心の高校に通うお兄ちゃん。
音楽系の学校なんだけど、なんでも親友がそっちを志望しているとかで、特に進路が決まっているわけでもなかったお兄はそれに着いて行ったのだ。

向こうで友達もいっぱい出来たらしいし、この前家に戻ってきた時も楽しそうに向こうでの事を語っていた。

正直ちょっと寂しいけど、この歳になってもお兄にベッタリってわけにはいかない。あたしもお兄離れする時が来たのだ。

……と、思っていたのだが。
やっぱりお兄と3日以上会えないのは地味にしんどい。
圧倒的に不足しているのだ。恭にぃニウムが。

写真眺めたり、アプリ通話したり、それで摂取できる分には限界がある。
同じ空間で同じ空気吸ってなきゃ足りないよね。

え?あたしはブラコンなのかって?
否、断じて違う。ブラコンかと言われればブラコンなのかもしれないけど、あたしは一線を弁えたブラコンだ。

自分の兄が好き過ぎるからって、下着を盗んだり、勝手にワイシャツを着たり、スマホを盗み見て異性との付き合いを監視しようとするような品のない輩とは違うのだ。

ただ、お兄のベッドの毛布に包まって暖を取ったり、たまに褒めてもらうついでに頭撫でてもらったり、髪を結ってもらったりするくらい。それで充分チャージできるし。

でも、やっぱり寮生活だと期間がかなり空くから……。
そろそろチャージしたいな~。

そんな事を考えていた時、スマホから突然の着信音。
しかもこの着メロ、お兄からのだー!?

慌ててスマホを手に、通話ボタンを押す。

「も、もしもし?お兄?」
『華燐、ちょっと相談に乗って欲しいんだけど……』
「相談?」

珍しい。お兄が悩み事とは。
普段は悩んでても、妹のあたしには言おうとしないのに。

『実は、女の子に何をプレゼントすれば喜ばれるのかで悩んでてさ……』
「いきなりどうしたの?もしかして彼女でも出来た?」

冗談半分のつもりだった。
奥手なお兄に、そう簡単に彼女が出来るわけない……と、思っていた自分を一発ひっ叩いておきたい。

『い、いや~……彼女ってわけじゃないんだけど……その、気になる人というか……好きな人、みたいな……』
「……え?」

一瞬の沈黙。あたしは思わず、スマホをポロッと落として叫んだ。

「お……お兄に彼女ぉぉぉぉぉ!?」

まさか、冗談が本当になるなんて……。
この後、お兄に彼女について根掘り葉掘り聞き出した。



「なるほど……」

お兄から、惚れた理由から付き合い始めたきっかけまで全部聞き出した。

お相手の名前は、小日向未来さん。お兄の学校に併合された姉妹校、リディアン音楽院の女子生徒でお兄と同い歳。

出会ったきっかけは半年前、月が吹き飛び、都心にノイズが大量発生したあの事件。
避難シェルターで出会って、それをきっかけに交流するようになったらしい。

それから暫くは友達付き合い、というかお兄がヘタレて告れなかっただけなんだけど、ともかく進展はしない関係が続いている、と。

うーん、お兄らしいのがなんとも……。

「それで、誕生日に合わせて告白するつもりでいるけど、プレゼントが決まらない、と」
『いきなりでごめんな。でも、こんな事聞けるのは華燐くらいしかいないからさ』

あ~……そういう頼られ方されるとな~……。

最初は怪しい女じゃないか、お兄の優しさにつけ込んでくる悪い女じゃないか、なんて疑ってたけど、話聞く限りだと悪い人じゃなさそうなんだよね。

確かにあたしはお兄の事が好きだ。付き合うならお兄か、お兄みたいな人がいい。
でも、お兄が大好きだからこそ、お兄に好きな人が出来たなら全力で応援してあげたい。

あのヘタレなお兄が、ハッキリと「好きな人だ」って言ってるんだ。ここで背中押せないの、なんかみっともないじゃん。

まあ、相手が悪女なら話は別だけど。その場合、そいつはあたしがけちょんけちょんにしてやる。

でも、多分あたしの出る幕はない。
だから、あたしはしゃしゃり出ずに応援するだけに留める事にした。

「その小日向さんって人、好きなものとかある?趣味なんかは?」
『好きなものだと……焼肉、串カツ、寿司……』
「プレゼントには向かないね~……。趣味なら?」
『確か元陸上部で、今はピアノやってるって。あと……あ、寮でルームシェアしてた頃、家事は殆ど担当してたって』
「ピアノに家事かぁ……。あ、ならハンドクリームとかは?そろそろ、手が荒れちゃう時期でしょ?」
『確かに、喜んでくれると思う。でも、どのクリームを選べばいいんだろう?』
「お母さんが使ってるやつ、どこのメーカーのやつか聞いとくから」
『ありがとう、助かるよ』

くぅ~……お兄に頼られるの、存外悪くない。
この感謝の言葉がとても心地いい……。

「わざわざお兄の為に時間割いてあげたんだから、これで告白出来なかったり、フラれたとか言ったら許さないからね~」
『心配どうも。でも、僕は大丈夫だよ。いつまでもヘタレじゃ、小日向さんを守れないからね』
「ナイト、だっけ?お兄の将来の夢」

お兄の夢というか、目標みたいなもの。
物語に出てくる騎士みたいに、勇敢で気高く、優しい男になりたい。そういう意味が込められているらしい。

それに照らせば、確かにヘタレをどうにかしない事には、ナイトには程遠い。
この告白は、お兄にとっても重要な事なんだ。

『ああ。ようやくその覚悟を決める日が来たって事だ』
「ふ~ん。まあ、頑張ってね。応援はしてるから」
『ありがとう。それじゃ、切るよ』
「うん。またね~」

通話が終わり、あたしはスマホを一旦置く。

ベッドに寝転び、天井を見上げて、溜め息を吐いた。

「はぁ……お兄にも、彼女ができる頃かぁ……」

背中を押して送り出したとはいえ、思う所が全くないわけでもない。
お兄も高校生だ。いつかこの日が来るのは目に見えていた。

でも、いざその日が来ちゃうと……やっぱり寂しさとかはある。
ワガママだって、分かってはいるんだけどなぁ……。

「……今度帰ってきたら、思いっきり弄ってやる」

小日向さん、か……。

お兄の好きな人、いい人だといいな……。

なんて、そんな事を考えながら、あたしはベッドから起き上がり、下の階へと降りていった。

ついでに、お母さんにお兄に好きな人が出来たことはバラしたので、後でお兄はお母さんにも根掘り葉掘りされたらしい。 
 

 
後書き
華燐ちゃんのモデルは、某物語シリーズに出てくる火炎姉妹の黄色ジャージの方。イメージCVはキタエリさん。元々、設定自体はあったのですが、本格的に固まったのは恭みく推しの不審者さんとの会話です。
今後は恭一郎くん絡みのエピソードで、ちょいちょい名前や顔が出てくる事になるかと思います。

ちなみに今回、未来さんバースデー回2020の裏話に位置するものとして書いてます。
読み返して色々妄想していただけると幸いです。

改めまして、未来さん!Happybirthday!!
それでは、次回もお楽しみに! 
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