戦姫絶唱シンフォギアGX~騎士と学士と伴装者~
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第15節「間奏─学士の来日─」
前書き
タイトル見ての通り、いつもより短いです。
物足りなさを感じた方は、番外編に投稿したハロウィン回で補ってください!
果たして翔くんは無事なのか?どうぞ、お確かめください。
「目を開けてッ!響ッ!お願い、響ッ!」
オートスコアラーの撤退、そして戦闘区域の崩壊が確認された後、響と未来は春谷の車でS.O.N.G.本部へと運ばれた。
気を失った響はストレッチャーに寝かせられ、メディカルルームへと運ばれていく。
響と医療スタッフが視界から消え、足を止めた未来は閉じられた自動扉を見つめる。
「響……」
「大丈夫だ、立花ならきっと……」
「ったりめーだッ!あのバカが……。こんなところで退場するものかよッ!」
「その通りだ……。私たちとて、このまま燻っていられるものか……ッ!」
未来の肩に手を添える翼と、不安を吹き飛ばそうと強気な言葉を投げかけるクリス。
2人の掌は固く握られていた。
特に、翼の拳は僅かに震えてさえいる。
奏はそれを見逃さなかった。
「翼……」
「心配しないで、奏。翔ならきっと大丈夫……だって、翔は私の弟なんだからッ!」
本当なら今すぐにでも、現場へ向かった救護班の元へと向かいたいはずだ。
だが、今向かったところで自分に何か出来るわけでもないのは、翼も理解している。
それよりも今は基地に残り、自分に出来る事をする。先輩としての振る舞いを、彼女は選んだのだ。
「……そうだな。ダンナの弟子で、翼の弟なんだ。きっと帰ってくるさ……きっとね……」
翼の気持ちを無碍には出来ない。奏はそれ以上、何も言わなかった。
「それでクリスちゃん、翼さん。エルフナインちゃんからの提案、どうする?」
純が切り出したタイミングで、弦十郎と了子、そしてエルフナインがやって来た。
翼とクリスは、了子、そしてエルフナインを真っ直ぐに見据えて答える。
「あたしらならやれる。だから、Project IGNITEを進めてくれッ!」
「強化型シンフォギアの完成をッ!」
拳を強く握りながら、口々に述べる2人。
エルフナインは了子に目を向け、そして弦十郎の方に向き合い、問いかけた。
「……よろしいですか、弦十郎さん」
「ああ。これよりProject IGNITEを開始するッ!」
ff
「あれはいったいどういう事だ?」
チフォージュ・シャトーの広間で、ノエルは玉座へと跪いていた。
「申し訳ありません。どうやら調整が甘かったようです。魔剣の力が暴発したものと推察します」
「未調整の武器を暴発させるなど、三下の失態だ。それで計画が破綻したらどうするつもりなんだ?」
「返す言葉もございません……」
先の戦闘での失態を咎められ、頭が上がらないノエル。
ミカ共々巻き込まれかけたガリィも、彼を渋い表情で睨みつけている。
「しかし、計画における不確定要素、天詔琴を排除する事には成功しました」
「そこに関しては褒めて遣わすが、あくまで結果論だ。今後、その魔剣の調整が完璧に終わるまでは、お前の出る幕はない。異論は無いな?」
「いえ……その猶予、無駄にはしません。必ずや応えてみせましょう」
ノエルは腰を上げて一礼すると、研究室へ戻ろうと踵を返す。
四騎士の台座の前を横切るその時、ガリィが訝しむような目で呟いた。
「さっきの醜態、本当にただの暴発なんですかぁ?」
「……何が言いたい?」
「別にどうってこと無いですよ~。ただちょ~っと気になっただけです」
「フン……」
ガリィからの問いかけには答えず、ノエルは広間を出る。
シャトーの廊下をしばらく歩いて、彼は壁にもたれかかった。
(あの時……ダインスレイフの方から流れ込んできたモノは──)
腰のホルダーから抜いたナイフの刀身を、光に照らして眺める。
ダインスレイフの破片と差し替えられた刀身は一筋、妖しい煌めきを放っていた。
ff
「九死。やれやれ、危ないところだった……」
下水道に横たわる青髪の少年を見下ろしながら、ホッと息を吐く。
正直なところ、間に合うかは五分五分だった。なにせ、見つけた時には既に交戦していたし、私が介入する前にビルが崩れてしまったからだ。
それでも何とか間に合った。この少年の生命は、無事に救う事が出来た。
念のため少年の脈を取り、心拍を確認する。
慣れたものだ。まだまだ医者としてやっていけるだろう。
「息はあるが、かなり傷ついているようだ。あの呪いを受けてこの傷で済む辺り、シンフォギアの防御性能はかなりのものらしい」
「……ぅ……ぁ……」
少年が口を開く。
どうやら意識が朦朧としているらしい。
「だ……だれ、だ……?」
至極真っ当な質問が、少年の口から飛び出した。
この傷だと、すぐに気絶してしまうだろう。詳しいことを聞かせるのは、治療の後にしよう。
だが、それはそれとして名乗るのは礼儀だ。
後で改めて自己紹介する必要はあるが、手間とは言えまい。
「私はヴァン・フィリップス・グリム。今はゆっくり眠るといい」
私が名乗り終えたか否か、そのタイミングで少年の意識は闇に落ちていった。
後書き
第一楽章『奇跡の殺戮者』~完~
次回、伴装者GXは──
砕かれたシンフォギア。同時並行で行われるRN式の改良が重なるも、奮闘する了子とエルフナイン。その間、戦力外と通達された切歌と調は、シミュレーションルームで模擬戦に明け暮れる。
消えた弟の身を案ずる翼。寄り添おうとする奏。そして、眠り続ける響。
そんな中、改良型シンフォギアの完成を前にして、各地にオートスコアラー達が現れる。
窮地に陥った装者達の前に現れたのは──。
一方、謎の男ヴァン・フィリップス・グリムに救われた翔は、彼から衝撃的な事実を聞かされていた。
「キャロルは私の弟子なんだ」
果たしてヴァンの目的とは?
そして遂に戦場へと立つキャロルと、パワーアップしたシンフォギアがぶつかり合う!
「イグナイトモジュール、抜剣ッ!!」
響き交わる伴装者GX~騎士と学士と伴装者~
第二楽章『黒き炎のイグニッション』
愛で奏でる旋律が、少女の歌と重なり合う。
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