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牧師館のドールハウス

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第二章

「ガウガウ」
「物凄く警戒しているみたいね」
「そうだね、どうしてかな」
「このドールハウスに何かあるのかしら」
「そうなのかな」
「けれどね」
「いいものだから」
「それが安く手に入ったから」
 それでというのだ。
「大事にするわ」
「そうするんだね」
「これからね」
「それじゃあね、しかし」
 ここで夫は愛犬を見てまた言った。
「シナモンはどうしたんだろうね」
「ええ、ずっとドールハウスが入った箱を見て吠えてね」
「威嚇してるけれど」
「何があるのかしら」
「わからないね」
 夫婦で首を傾げさせた、だがそれでもだった。
 由香奈は箱からドールハウスを出した、そのドールハウスは。
 古い館だった、そしてそこには。
 白い服の女や色々な不気味な人形があった、その中で。
 娘の香織幼い頃の母によく似た彼女は首のない男の人形を見て言った。
「何これ」
「最初から頭がないの」
 母は娘にこう答えた。
「このお人形が」
「取れたじゃないの?」
「最初からないのよ」
「そういえばね」
 娘はその人形を見ながらさらに言った、見ればかなり不審なものを見る顔だ。
「取れた感じじゃないわね」
「そうでしょ、首は塞がってるから」 
 見ればもげても取れてもいない。
「そうした感じね」
「それじゃあなのね」
「最初から頭がないのよ」
「そんなお人形あるの?」
 娘は母に怪訝な顔で問うた。
「頭のないお人形なんて」
「お母さんもはじめてよ」
 実際人形好きの彼女が見てもだった。
「こんなお人形は」
「そうよね」
「ええ、けれどね」
 ここで由香奈は香織に言った。
「細かいところまで造られていて雰囲気も出てるでしょ」
「随分怖いけれど」
「そうね、けれど折角買ったから」
「大事にするの」
「他のお人形と同じでね」
「お母さんお人形好きだから」
「そうしていくわ」
 こう言ってだった。
 由香奈はその首のない人形も他の人形もドールハウスもだった。
 いつも大事にしてだった。
 定期的に掃除もした、香織もシナモンも次第に落ち着いてドールハウスも人形達も見ても別に何とも思わなくなった。 
 このドールハウスのセットはすっかり由香奈のコレクションの中でも特に自慢のものになった。だが。
 ある日家に来た友人の恭子黒髪を奇麗にセットしていて明るい顔立ちで肌が奇麗な一五六位の背で由香奈程ではないが胸が目立つ彼女がだった。
 そのドールハウスと人形を見て言った。
「これ凄いわね」
「そうでしょ、不気味な雰囲気だけれどね」
 由香奈は恭子に自慢している笑顔で応えた。
「安かったのよ、四万で」
「全部でなの」
「どういう訳かね、それでネットオークションで買って」
「それでなのね」
「お家の中に飾ってるの」
「そうなのね、ただね」
 恭子は由香奈に話した。 
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