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商業科に入ると

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第二章

 彼は入学早々女の子に囲まれた、そこには。
「おいおい、米田一華さんにも誘われたのかよ」
「村山登美子ちゃんにもか」
「へえ、高津理虹さんがか」
「村田留奈さんもか」
「うん、ファラ=イカサさんからもね」
 彼女からもとだ、千早は話した。
「そうしてもらったよ」
「もてもてだな」
「まあ俺達もだけれどな」
「商業科とか農業科って女の子の方が多いからな」
「男子の取り合いになるみたいでな」
「実際にそうだしな」
「けれどお前は別格だな、やっぱりな」 
 彼等は今の千早を見て言った。
「その顔じゃあな」
「凄い美形じゃねえか」
「性格はもう皆知ってるしな」
 中学から一緒の面々はだ、彼の穏やかで優しい性格はだ。
「性格悪いと顔がよくでも駄目だからな」
「そんな奴もてないからな」
「一緒にいていいことないしな」
「そうだからな」
「けれどお前の性格でな」
 その穏やかで優しいというのだ。
「それでその顔だとな」
「もてるのも当然だぜ」
「それもな」
「そうなんだ、しかし急にだよ」 
 千早は男子達に応えた。
「もてる様になったよ」
「商業科でな」
「しかもその顔だとだよ」
「それも当然だろ」
「もうな」
「もうお前その髪型のままでいろ」
「そっちの方がいいぜ」
 男子達は彼に言った。
「もてるしな」
「俺達が見てもいけてるしな」
「そうしろよ」
「皆がそう言うなら」
 千早も頷いた、そうしてだった。
 彼を巡って商業科の女の子の間で取り合いになり。
 やがてアルゼンチンから留学に来たアイドル顔負けの同級生が彼と付き合うことになった。その話を聞いて。
 妹の岬、見れば千早そっくりの顔と髪の質でツインテールの彼女は兄に自宅で明るい笑顔で話した。
「お兄ちゃん私そっくりだからよ」
「それでなんだ」
「私顔だけはいいから」
「自分でそう言うんだ」
「性格と頭は悪いのよ」
「成績は普通より上じゃない、それに性格も」
 これもとだ、兄は妹が出してくれた紅茶とお菓子を手にしつつ話した。
「こうしてくれる娘が悪いかな」
「自分で言ってるからいいでしょ」
「そうなんだ」
「そう、それでお兄ちゃんはね」 
 妹も紅茶を飲みつつ話した。
「私そっくりお顔だから」
「二人共お父さん似かな」
「でしょうね、それでね」
「僕達は同じお顔だから」
「もうそのお顔全体が見える様になったらね」
 前髪を短くしてというのだ。
「絶対によ」
「もてるって思ったんだ」
「そう、お兄ちゃんは性格も悪くないし」
 このこともあってというのだ。
「絶対にね」
「大丈夫って思ってたんだ」
「そして実際にでしょ」
 兄に紅茶を飲みつつ話した。
「そうなったでしょ」
「自分でも驚いてるよ」
「お母さんが言ってたわ、人間は宝石だって」
「宝石?」
「磨いたら光のよ」
「ああ、宝石は最初は石だね」
 千早は岬のその言葉に頷いた。 
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