どちらもあと一歩で
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第二章
「だからな」
「それで大切にするのね」
「当然だろ」
「巨人は何年か使って衰えたらポイでしょ」
千佳はこの現実を話した、巨人の常套手段である。
「だからね」
「巨人は駄目か」
「どうせ丸さんもそうなるわ」
彼もというのだ。
「これまでもそうだったし」
「それが巨人だしな」
「金本さんみたいに大切に扱ってくれないから」
監督にまでなった彼の様にというのだ。
「だからね」
「巨人は嫌いか」
「お兄ちゃんが巨人を嫌うのと同じだけかそれ以上に嫌いよ」
「いつも言ってるけれどな」
「実際にそうよ」
「僕の方が嫌いだろ」
寿は自分でミルクティーをコップに入れて一口飲んでから言った。
「巨人は」
「そうかしら」
「僕も嫌いだからな、それでその巨人が三位でか」
「カープはあと一歩で追い付かなくて」
そうしてとだ、千佳もミルクティーを飲みつつ残念そうに述べた。
「本当にね」
「残念だな」
「今のお兄ちゃんと同じ気持ちよ」
「そうか、しかし僕は阪神ファンだからな」
それでとだ、寿は妹に答えた。
「カープのことはな」
「基本どうでもいいのね」
「残念だとは思うけれどな、ただ来年頑張れ」
こう言うのだった。
「来年な」
「頑張ればいいのね」
「ああ、そうしろ。阪神もな」
「来年頑張るのね」
「クライマックスもあるけれどな」
それでもというのだ。
「優勝出来なかったのは事実だ」
「だから来年ね」
「来年は今年よりも強くなってな」
「優勝するのね」
「カープもそうしろ、そしてな」
「そうしてなのね」
「阪神から優勝を奪ってみせろ」
そうしろというのだった。
「いいな」
「それじゃあね」
「来年お互いに頑張ろうな」
「今年の残念な気持ちを忘れないで」
「当然巨人は倒す」
憎むべきこのチームはというのだ。
「そうしてだ」
「そのうえでなのね」
「ヤクルトは当然でな」
優勝したこのチームの名前も出した。
「そして中日も横浜もでだ」
「カープもっていうのね」
「マツダスタジアムを墓場にしてやる」
「それを言うなら来年の阪神のお墓は甲子園よ」
千佳も負けじと言い返す。
「覚悟しておいてね」
「言ったな」
「何度でも言ってやるわよ」
二人で飲んで食べながら言葉を交えさせた、二人共そうしている間に機嫌が戻った。そうしてだった。
寿も千佳もミルクティーもカントリーマァムもなくなるとそれぞれ言った。
「勉強するか」
「私もね」
「それで寝るか」
「歯磨きは忘れないでね」
兄妹で話した、そうしてそれぞれ席を立った。苦い敗北の味は甘いもので流してそうして先に進むのだった。
どちらもあと一歩で 完
2021・10・28
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