英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第137話
2月18日――――――
ヴァイスラント新生軍によるオルディス奪還より二日後、アリサ達はローゼリアに指示された場所であるミルサンテ近郊の精霊窟――――――”月霊窟”を訪れていた。
~月霊窟・出入口~
「月霊窟………”特異点”を探していた時にも通りかかったけど……」
「確かに……明らかな”違い”を感じるね。」
「ああ………」
月霊窟を見上げたトワの言葉に答えたアンゼリカの感想に頷いたアッシュは仲間達と共に目に見える程の霊力を纏っている月霊窟を見上げた。
「ロゼがが言っていた霊脈の活性化かな?」
「ええ………そうみたいね。」
「僕もようやく霊気なんかを感じられるようになったが……」
「だが、この霊窟の気配はまだ”抑えられている”ようだな?」
ミリアムの疑問にアリサは静かな表情で頷き、マキアスは戸惑いの表情で呟き、ガイウスは真剣な表情で推測を口にした。
「ええ、代々の巡回魔女が管理してきた唯一の霊窟………私の母も穢れを払いに何度か訪れたと聞いています。」
「その方がエマさんやセリーヌさんから話に聞いた……」
「エマが小さい頃に亡くなったお母さんだよね?」
エマの説明を聞いたセドリックとフィーはエマに視線を向けて声をかけた。
「優秀な巡回魔女だったって聞いてるわね。まあ、アタシが生まれる前だから話くらいしか知らないけど。」
「ふふ、私も小さかったからほとんど覚えていないけど……――――――でも祖母からこの霊窟の話は聞いています。祭壇の”先”にある霊場――――――そこに全てを映す”水鏡”があると。」
セリーヌの話に苦笑しながら同意したエマは月霊窟を見上げながら説明した。
「はは、ドンピシャじゃねえか。」
「するとその祭壇の更に奥に隠された場所が?」
エマの説明を聞いたクロウが苦笑している中ラウラは真剣な表情で訊ねた。
「ええ、たぶん祖母が既に開いて待っていると思います。行ってみましょう、皆さん。」
「ええ、まずは祭壇の所ね。」
「そういえばセリーヌ、人型だったけ?それにならなくていいの?」
エマに先を促されたサラは頷き、フィーはセリーヌにある事を指摘し
「ま、まだいいでしょ!?ロゼから話を聞いてからよ!」
指摘されたセリーヌは表情を引き攣らせながら答えた。
その後アリサ達は月霊窟へと入り奥の祭壇の所まで行くと、そこにはある異変が起こっていた。
~祭壇の間~
「ええっ……!?」
「なんか現れてやがるな……」
祭壇の間に怒った異変―――――祭壇の先に謎の光と紋章を放っている部分を目にしたトワは驚きの声を上げ、アッシュは真剣な表情で呟いた。
「旧校舎の地下や、内戦時の精霊窟で見かけた紋章……」
「”星杯”や”黒の工房”で戦ったアランドール少佐やリーヴェルト少佐の瞳にも同じものが発現していたな……」
「へ~……じゃあボクも発現できるのかな?」
「洒落になっていないぞ……」
エリオットとユーシスの話を聞いて興味ありげな様子で呟いたミリアムの言葉を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて脱力している中マキアスは呆れた表情で指摘した。
「どうやら地精や”巨イナル一”に関わるものみたいだけど……」
「正確には魔女もだったか?」
アリサは紋章と謎の光を見つめながら呟き、クロウはエマに確認した。
「ええ……900年前の決別まで両者が使用していた紋章だそうです。祖母曰く、どういうものか魔女側には伝わっていないそうですが。」
「そのあたりの”真実”も明らかになるのでしょうか……?」
「うむ――――――そのまま進むがよい。」
エマの説明を聞いたセドリックが考え込み始めたその時ローゼリアの声がその場に響いた。
「お祖母ちゃん……」
「アンタね……さすがに説明不足すぎでしょ!?」
「なにせ時間がないからの。妾も支度手一杯だったのじゃ。疾く入ってくるがよい。……セリーヌは心の準備をな。」
エマが不安そうな表情で光と紋章を見つめている中文句を言ったセリーヌに対してローゼリアはいつもの調子で答えた。
「よし――――――入るか。」
「ん、オッケ。」
そしてその場にいる全員は少しの間黙り込んだがマキアスとフィーが口を開いて先に進む事を口にし
「ってちょっと!さらっと流さないでよ!?」
セリーヌは疲れた表情で指摘した。
その後アリサ達が光の中へと入っていくとそこは洞窟の中とは思えない広さの場所に転移した。
~月の霊場~
「ここが……」
「月霊窟の奥……ううん、”本体”みたいだね。」
周囲を見回しながら呟いたアンゼリカに続くようにトワは真剣な表情で呟いた。
「ええ、亜空間にある霊的な場……」
「内戦時の精霊窟とはちょっと違うね。」
「ああ……あの”黒の星杯”の方がまだ似ているな。」
トワの推測にエマは頷いて答え、フィーの感想にユーシスは静かな表情で頷いて同意した。
「にゃっ……!?ちょ、何なのよ……ニャアアアアァァァァ……ッ!?」
するとその時自身に何らかの異変を感じ取ったセリーヌが驚きの声を上げるとセリーヌは謎の光に包まれ、その状態にセリーヌが戸惑っていると何とセリーヌは猫の獣人の姿へと変化した!
「ほえええ~っ!セリーヌが変身した~!?」
「そ、その姿がセリーヌちゃんの人の姿……」
「へえ、なんか手品でも見ている感じねぇ。」
「サービスいいじゃねえか、チビクロネコ。」
獣人の姿に変身したセリーヌを見たミリアムは驚きの声を上げ、トワとサラは興味ありげな表情でセリーヌを見つめ、アッシュはセリーヌにからかいの言葉をかけた。
「誰がチビクロよ、プリン頭っ!――――――じゃなくて!アタシの意志と関係なく勝手に……」
アッシュのからかいに対して反論したセリーヌが戸惑いの表情で呟いたその時
「ここは”月の霊場”――――――真実を映し出す聖域じゃからの。」
女性の声がその場に響き渡った後大人の女性の姿をしたローゼリアの幻影がその場に現れた。
「ロゼ……!?」
「お祖母ちゃん、その姿は……」
大人の女性の姿をしたローゼリアの幻影を目にしたセリーヌとエマはそれぞれ驚き
「なんだって……!?」
「それじゃあ、この人が……」
「ローゼリアさんの元の姿か……」
「もしかして、ローゼリアさんがその姿になっているのは今のこの場所と何か関係しているのですか?」
二人の言葉を聞いて目の前の幻影の女性がローゼリアだと知った仲間達がそれぞれ驚いている中マキアスは驚きの声を上げ、アリサは目を丸くしてローゼリアの幻影を見つめ、アンゼリカは静かな表情で呟き、セドリックはローゼリアにある事を訊ねた。
「うむ、霊場の活性化によって元の姿を取り戻しておるのじゃ。そして”真の姿”も……」
「へ……」
「真の姿……?」
セドリックの疑問に答えた後苦笑しながら呟いたローゼリアが口にしたある言葉を耳にしたセリーヌは呆け、エマは戸惑いの表情でローゼリアを見つめたがローゼリアは何も答えずアリサ達に背を向けて説明を始めた。
「―――――最奥にあるのが”水鏡”。代々の巡回魔女が管理した遺物じゃ。皇帝家の”黒の史書”とも連動する帝国の裏の歴史を映し出す神具……”空の女神”達によって帝国全土に張り巡らせられていた霊脈の内帝国東部の霊脈が遮断された事によって、まだ霊脈が遮断されていない帝国西部であるこの地の霊脈に”黄昏”が集中している今ならば全てを垣間見る事ができよう。――――――ただし起動するためには”大いなる試練”が必要になるが。」
「お、大いなる試練……?」
「煌魔城と同じ理屈ってワケか……」
「重要な儀式の前に必要となる”闘争”による準備段階……」
「どうやら同じ流儀で全て成り立っているようだな。」
ローゼリアの説明を聞いたエリオットが戸惑っている中、察しがついたクロウとトワはそれぞれ静かな表情で呟き、ラウラは考え込みながら答えた。
「フフ――――――ようやくその認識に至ったみたいね?」
すると今度はクロチルダの幻影がその場に現れた。
「ね、姉さん……!?」
「どうしてアンタが……二日前に『急用がある』とか言って別れたばかりでしょ!?」
クロチルダの登場にエマが驚いている中サラは困惑の表情で指摘した。
「ふふ、そもそもその『急用』が婆様の手伝いだったのよ。――――――今回の試練の前座、まずは私が務めさせてもらうわ。サプライズゲストも呼んだからせいぜい愉しんでちょうだい。」
サラの疑問に答えたクロチルダの幻影はその場から姿を消した。
「サプライズゲストですか……」
「ヴィータの事だから、間違いなく俺達も想定していなかった相手を連れてきているだろうな。」
クロチルダの幻影が消えた後セドリックは静かな表情で呟き、クロウは呆れた表情で呟いた。
「コホン、そちらは想定外じゃが存分に役割を果たしてくれよう。――――――それではの。死ぬ気で最奥に辿り着くがよい。」
クロチルダの幻影に続くようにローゼリアの幻影もアリサ達にある事を伝えた後その場から消えた。
「これは……大変な試練になりそうだな。」
「だがこちらもリィンとセレーネを除いたⅦ組全員にトワ会長達――――――誰であれ負けるわけにはいかぬ。」
ローゼリアの幻影が消えた後ガイウスは重々しい様子を纏って呟き、ラウラは真剣な表情で呟いた。
「ああ、その通りだ。俺も、今こそ義務を果たす時だろう。帝国の”表”の歴史の一角を担ってきた四大貴族の末裔の一人として……仲間が決別した道をどう歩むべきか、見極めるためにも。」
「あ………」
「はいっ、力を合わせて”真実”を掴み取りましょう!」
決意の表情で答えたユーシスの言葉を聞いたアリサは呆けた声を出し、セドリックは力強く頷いた。
「Ⅶ組並びに協力者一同、これより”月の霊場”の攻略を開始するよ。――――――みんな、よろしく頼むね!」
「おおっ!!」
そしてトワの号令にその場にいる全員は力強く答えた後”月の霊場”の攻略を開始した!その後アリサ達は行く手を阻む魔獣達を撃破し、仕掛けを解きながら先に進んでいると女性の声がアリサ達を呼び止めた。
「ふふ、来たわね。早速始めるとしましょうか?」
アリサ達を呼び止めた人物―――――クロチルダは自身の得物――――――かつての自身の使い魔であるグリアノスの羽によって作られた扇を構えてアリサ達の行く手を阻んでいた。
「やれやれ……さっそく臨戦態勢かよ。」
「どうやら忙しい最中に来て下さったみたいですね?」
クロチルダを目にしたクロウは溜息を吐き、アリサはクロチルダに訊ねた。
「ええ、婆様も既に貴女達に話しているでしょうけど、次の連合とエレボニアの大規模な戦いの準備に裏の協力者達への対処もしているわ。でも――――――ここの”水鏡”の真実が明らかになるのなら安いものでしょう。かつて巡回魔女でもあった身……イソラさんの遺志でもあるしね。」
「お母さんの……」
「そういやアンタ、結構懐いてたみたいね?」
クロチルダが語った話の内容にあった意外な事実を耳にしたエマは驚き、セリーヌはある事実を思い出した。
「そのイソラさんという方がエマさんの母君……」
「えっと……”先代”の巡回魔女がクロチルダさんだから、そのイソラさんという方は”先々代”の巡回魔女というわけですか。」
二人の言葉を聞いたセドリックはエマに視線を向け、トワはクロチルダに確認した。
「ええ――――――魔女としての使命や”相克”についても調べていた人。あの人の影響で私も独自で調べ始め、盟主との邂逅にも至った。ならばこれはあの人やグリアノスへの最後の手向けでしょう。」
「……え……」
「兄上が斬った……」
「エマの母親はともかく、グリアノスまでどうして……!?」
クロチルダが語った話に驚いたエマは呆け、ユーシスは複雑そうな表情でかつての出来事を思い返し、セリーヌは困惑の表情で訊ねた。
「ふふ、ここの水鏡はもう一つ、800年前に役割を果たした。そのあたりはセリーヌ――――――婆様から聞くといいでしょう。私と、この後待ち受けるサプライズゲスト達の試練を乗り越えてね。」
セリーヌの問いかけに対して答えを誤魔化したクロチルダは意味ありげな笑みを浮かべて戦闘態勢に入った。
「くっ……」
「……来ます……!」
「使徒第二柱――――――”蒼の深淵”の全力……!」
「チッ……手加減する気配すらねえか!」
クロチルダの様子を見たセリーヌは唇を噛みしめ、エマは仲間達に警告し、サラとクロウは厳しい表情でクロチルダを睨んだ。
「さあ――――――見せてもらうわ。エマ、セリーヌ、クロウ達も。隠された”真実”に至れるか否かを!」
そしてアリサ達はクロチルダとの戦闘を開始した。かつての蛇の使徒であったクロチルダは強敵ではあったが、内戦での経験に加えて”巨イナル黄昏”関連の出来事で更に成長したアリサ達は協力してクロチルダを戦闘不能に追いやることまでできた。
「ふふ……なかなかね。まあ、貴方達の布陣ならば私一人くらい当然だろうけれど。」
戦闘終了後苦笑しながらアリサ達を評価したクロチルダは魔術を発動し
「姉さん……行くのね?」
クロチルダの様子を見てクロチルダが転位魔術を発動した事を察したエマはクロチルダに訊ねた。
「とにかく忙しくてね。お先に失礼させてもらうわ。それではね――――――あの人と婆様によろしく。それと短い間になるけど、戦争関連以外での邂逅、楽しんできなさい。」
エマの問いかけに答えたクロチルダはアリサ達に微笑んだ後転位魔術でその場から去った。
「はあ……サバサバしちゃって。」
「元より、あそこまで新生軍に肩入れしているのも意外だったが。」
クロチルダが去った後セリーヌは疲れた表情で溜息を吐き、ユーシスは戸惑いの表情で自身の疑問を呟き
「ふふ、多分姉さんは”先”を見ているんでしょう。魔女だけでなく使徒として……そこから外れた視点からも。」
ユーシスの疑問にエマは苦笑しながら答えた。
「そ、それよりもクロチルダさん、去り際に『戦争関連以外での邂逅、楽しんできなさい』って言っていたけど、もしかしてこの後控えている人達って……」
「もしかしなくてもそうだろうね~。」
「フッ、さすがクロチルダさん。心憎い演出をしてくれるじゃないか。」
「いや、どう考えても趣味が悪いだろ……」
「ま、”殲滅天使”と比べればよっぽどマシだと思うよ。」
一方ある事が気になっていたエリオットは不安そうな表情で呟き、ミリアムは呑気な様子で呟き、静かな笑みを浮かべて呟いたアンゼリカにクロウは呆れた表情で指摘し、フィーはジト目で呟いた。その後、再び攻略を再開したアリサ達が先を進み続けているとクロチルダのようにアリサ達を待ち構えていたある人物達がアリサ達に声をかけた。
「ハハ、ここに来れたという事はクロチルダさんを退けられたようだな。」
「フフッ、皆さんでしたら超えられると思っていましたわ。」
「あ、貴方達は……!」
「やっぱりか……」
「リィン――――――ッ!セレーネも――――――ッ!」
アリサ達を待ち構えていた人物太刀――――――リィンとセレーネの登場にセドリックは目を見開き、マキアスは苦笑し、アリサは嬉しそうな表情でリィンとセレーネを見つめた。
「その様子だと、お前達がここにいるのはやはりヴィータの仕業か?」
「はい、新生軍を通しての”灰獅子隊”に対する要請としてわたくしとお兄様を指名されたのですわ。」
「姉さんが……」
「はあ………客将の立場の癖に、職権乱用し過ぎでしょう……」
クロウの問いかけにセレーネが答えるとエマは驚き、セリーヌは呆れた表情で溜息を吐いた。
「え……その声はまさか……セリーヌさん?」
「話には聞いていたが、それが君の人型の姿か………ハハ、内戦の時もその姿になって俺達と一緒に戦ってくれたら俺達も少しだけ楽ができたかもしれないな。俺達の元に辿り着けたという事はみんなと一緒にクロチルダさんを退けたる力があるという事にもなるからな。」
「確かにそれはわたしも思った。」
「そーだよね~。あの頃のボク達は今よりももっと戦力が少なかったんだから、一人でも増えたらボク達の戦闘の負担は少しはマシになったよね~。」
「ア、アハハ……」
「ぐっ………――――――ああもう!今はそんなことを気にしている場合じゃないでしょうが!それよりもアンタ達こそ、あの女が出した職権乱用同様の要請を請ける暇があったわよね。アンタ達の方がヴィータよりも忙しいんじゃないの?」
セリーヌの声を聞いて初対面の人型の姿になったセリーヌがセリーヌである事に気づいたセレーネは驚き、リィンは静かな表情で呟いた後苦笑し、リィンの指摘に同意したフィーはジト目で、ミリアムは不満げな様子でセリーヌに視線を向け、その様子にエマが苦笑している中唸り声を上げたセリーヌは声を上げた後疲れた表情でリィン達に問いかけた。
「次の”作戦内容”も決まって、後は”遂行”の時が来る事を待っているだけだから、今回の要請を請ける事にしたんだ。”報酬”としてクロチルダさんが君達がここで知る事になるであろう”真実”を教えてくれるそうだからな。」
「次の”作戦”というのはまさか……」
「……連合とエレボニアの大規模な戦い、もしくは決戦か。」
「その内容を教えなさいと言っても、どうせ”軍事機密”とか言って教えるつもりはないんでしょう?」
リィンの答えを聞いたその場にいる全員が血相を変えている中ガイウスとユーシスは真剣な表情を浮かべ、サラは真剣な表情で問いかけた。
「ええ。教官もご存じのように今の俺は灰獅子隊の軍団長――――――メンフィル帝国軍に所属している将校に一人ですから、”メンフィルと協力関係を結んでいる勢力でもない人達”にこの戦争の行く末が決まる重要な作戦内容を漏洩する訳にはいきませんので。」
「リィン君………」
「チッ、融通の利かねぇ英雄サマだぜ。――――――で?周りに他の連中がいない所を見るとテメェら二人が俺達の次の相手か?」
リィンの答えを聞いたトワが辛そうな表情を浮かべている中、アッシュは舌打ちをした後リィンに問いかけた。
「そうだ――――――と言いたい所だが………」
「―――――君達の相手は二人の代わりに私が務めさせてもらう事になっているのさ。」
そしてアッシュの問いかけにリィンが答えかけたその時、リィン達の背後から声が聞こえた後リィン達の背後から現れたシズナがアリサ達と対峙した。
「貴女は一体……」
「一体いつから、リィン達の背後に……今まで一切気配が感じ取れなかったが……」
「あたしも全然感じ取れなかったわ……見た感じ、リィン達とそれ程変わらない年齢から察するにアンタは黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)の出身で新たに灰獅子隊に所属する事になった部隊長と言った所かしら?」
シズナの登場にセドリックが困惑している中、ラウラは警戒した様子でシズナを睨み、サラは厳しい表情でシズナに問いかけた。
「不正解。年齢と最近灰獅子隊に所属する事になった事に関しては否定しないけど、私は君達やステラ達のようにリィンの元クラスメイトでもなければ、メンフィル帝国軍に所属している軍人でもないよ。――――――君達にわかりやすい言葉で私を示すとしたら、灰獅子隊――――――いや、”リィン自身に協力する裏の協力者”と言った所かな?」
「”リィン自身に協力する裏の協力者”………」
「フム……”裏”という言葉を使った事かしら、もしかして”君が所属している組織”は”裏”の勢力なのかい?」
シズナの答えを聞いたアリサが呆けている中、アンゼリカは真剣な表情で問いかけた。
「まあ、そんな所かな。それで君達も気になっているであろうリィン達の代わりに私が君達の相手を務める事に関してだが……単純な話だ。”次の作戦”の際にリィン達を妨害してくるであろう君達を阻む相手に私は担当しない事になっているから、リィンとセレーネに頼んでここで君達の相手を務めさせてもらう事にしたのさ。”次の作戦”が成功すれば、もう君達とリィン達がやり合う事もないだろうからね。」
「つ、”次の作戦が成功すれば、もう僕達がリィン達とやり合う事はない”って……!」
「やはり私達の想定していた通り、お祖母ちゃんも参加する事になるという”次の戦い”はこの戦争の雌雄を決する大規模な戦いに成るという事ですね……」
「シ、シズナさん。さすがに今の言葉はアリサさん達に対して教えすぎだと思うのですが……」
シズナの話を聞いてある事を察したアリサ達がそれぞれ血相を変えている中エリオットは信じられない表情を浮かべ、エマは真剣な表情で推測を口にし、その様子を見ていたセレーネは冷や汗をかいてシズナに指摘した。
「フフ、別にこのくらいはいいじゃないか。そもそも”やはり”という言葉を使っていた事から察するに、彼らも”次の戦い”がこの戦争にとって最も重要な戦いである事は察していたようだからね。」
セレーネの指摘に対してシズナは軽く流し
「……それで何故貴女はわざわざ自分からリィン達の代わりを申し出たのだ?」
「それは勿論君達の実力に興味があるからさ。――――――私の可愛い”弟弟子”と共にエレボニアの内戦を終結に導き、そしてこの戦争でも”第三の勢力”として活動している君達の実力にね。」
「何ですって!?」
「”弟弟子”――――――まさかリィンの事か……!?」
「リィンを”弟弟子”って呼んだって事は……」
「……”八葉一刀流”の者か。」
ガイウスの問いかけに答えたシズナの口から出た驚愕の答えにアリサ達がそれぞれ血相を変えている中サラは驚きの表情で声を上げ、ラウラは目を見開いて呟き、フィーとユーシスは真剣な表情でシズナを見つめた。
「フム……紫電、蒼の騎士、”飛燕紅児”の教え子、猟兵王殿の愛し子、”光の剣匠”の娘は”そこそこ”、後は”贄”とやらに選ばれた皇太子と皇帝銃撃犯、それとノルドからの留学生がギリギリって所かな。」
「へ………」
「え、えっと、シズナさん。今挙げた方々はサラ教官達を示すようですけど、一体何の為にサラ教官達の事を口にされたのですか……?」
「!………………………………」
アリサ達を見回して静かな表情で呟いたシズナの言葉を聞いたアリサが呆けている中セレーネは困惑の表情でシズナに訊ね、察しがついたリィンは複雑そうな表情を浮かべた。
「ふふ、その様子だとリィンは私の考えている事に気づいたようだね。――――――気づいていたのならば彼らに答えてあげたらどうだい、”真実にして彼らにとっては屈辱的な事実”を。」
「”真実にして俺らにとっては屈辱的な事実”だと?」
「意味がわかんないよ~!リィン、そのシズナ?って人は一体何を言っているのか説明してよ~。」
リィンの様子に気づいて意味ありげな笑みを浮かべたシズナの言葉を聞いたクロウは眉を顰め、ミリアムは疲れた表情で声を上げた後リィンに答えを要求した。
「………彼女――――――”シズナが攻勢に出た時にシズナの攻勢に耐えられる人物”を分析したんだと思う、シズナは。勿論それは”一対一の話ではなく、シズナが君達全員とやり合う状況を想定した上での分析だ。”」
「正解♪」
「ハア………っ!?」
「ぼ、”僕達全員を相手にすることを想定した上での分析”って……そ、それじゃあ今名前を挙げらなかった僕達って一体……」
静かな表情で答えたリィンの答えを聞いたアリサ達がそれぞれ驚いている中シズナは笑顔で肯定し、セリーヌは困惑の表情で声を上げ、エリオットは信じられない表情を浮かべた後不安そうな表情を浮かべてシズナを見つめた。
「それは当然”私が攻勢に出れば間違いなく、耐える事もできずに沈む”――――――要するに”命と命をやり合う本物の実戦ならば瞬殺される程の論外の弱さの戦力”って意味だよ。」
「ぼ、僕達が”論外”の弱さの戦力だって!?これでも今まで結社の執行者や高ランクの猟兵達とやり合ってみんなで協力して全員無事に生き残ってきたんだぞ!?」
「フン、随分と俺達の事を見くびっているようだが、名乗りすらもまだしていない貴様は一体何様のつもりだ。」
意味ありげな笑みを浮かべたシズナが口にしたが驚愕の答えを聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中マキアスとユーシスは怒りの表情でシズナを睨んだ。
「ああ、そういえばまだ名乗っていなかったね。――――――侍衆”斑鳩”の副長を務めるシズナ・レム・ミスルギだよ。”黒神一刀流”が使い手にして、私の事を知る人達からは”白銀の剣聖”とも呼ばれているよ。」
「”剣聖”ですって!?」
「しかも”八葉一刀流”ではなく、”黒神一刀流”だと……?」
「リィン君やアネラスさんと同じ”八葉一刀流”の剣士ではないのに、どうしてリィン君の事を”弟弟子”と呼んで……」
「そ、それに”斑鳩”の”副長”と仰いましたけど、”斑鳩”とは一体……」
「わたしも”斑鳩”なんて名前の”団”は聞いたことがないけど”副長”を名乗ったことから察するに多分どこかの猟兵団か傭兵団に所属している人だろうね。」
シズナの名乗りを聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中サラは信じられない表情で声を上げ、ラウラは真剣な表情でシズナを見つめ、トワとエマは戸惑いの表情で呟き、フィーは警戒の表情でシズナを睨んだ。
「ハッ、”剣聖”とやらだろうが、相手は所詮一人でしかもオレ達と大して変わらない年齢の小娘なんだから、どうせ実力も同じ”剣聖”とやらのシュバルツァーの姉の方の妹と大して変わらないだろうから、フクロにしちまえばいいだけだろうが。」
「……エリゼの実力を舐めているアッシュの発言も見逃せないが………かつてのⅦ組の一員として、アリサ達に協力している君や殿下もそうだがアリサ達にも忠告しておく。シズナの実力は同じ”剣聖”のエリゼを遥かに上回っている。今の君達”紅き翼”の戦力で彼女に対抗できる戦力は恐らく”エレボニア最高の剣士”と称されている”光の剣匠”――――――”アルゼイド子爵閣下のみ”だ。だから、彼女を甘く見ていると冗談抜きで”痛い目に遭う”事になる。」
「な――――」
「ええっ!?」
「紅き翼(私達)の中で彼女に対抗できる戦力が”子爵閣下のみ”って……!」
「う、嘘だろう……!?」
鼻を鳴らして指摘したアッシュの言葉に顔に青筋を立てたリィンは静かな表情でアリサ達を見回して忠告し、リィンの忠告を聞いた仲間達が驚きの表情を浮かべている中ラウラは絶句し、エリオットは驚きの声を上げ、アリサとマキアスは信じられない表情でシズナを見つめ
「フフ、私の可愛い弟弟子の忠告を信じるか信じないかは君達の勝手だけど………――――――リィンや私達、君達の双方の時間はそれぞれにとって貴重なんだから雑談はそのくらいにして、そろそろ手合わせをしてくれないかな?あっ、勿論そちらは全員で構わないよ。」
見つめられたシズナは苦笑した後気を取り直して大太刀を構えてアリサ達にとって驚愕の提案をした。
「……ッ!」
「やはりリィンの得物と同じ――――――いや、リィンの得物よりも更に一回り大きい……!?」
「し、しかもあの得物の輝きって、確かセティさん達に強化してもらったオルディーネ達の得物と同じ……!」
シズナが無意識にさらけ出す気迫に圧されたエマは息をのみ、ある事に気づいたガイウスは真剣な表情で、アリサは困惑の表情で声を上げ
「ご名答。私の可愛い弟弟子の腕前を確かめる為に出会い頭にやり合った際に”この子”より更に優れている材質でできている得物を使っているリィンに折られちゃってね。で、その件に責任を感じたリィンに音に聞く”匠王”の娘達を紹介してもらって、修理のついでに強化もしてもらったんだ。」
「ええっ!?リィンが!?」
「ったく、ただでさえヤバ過ぎる使い手のようなのに、得物までパワーアップさせるとか余計な事をするんじゃねぇよ、リィン!」
シズナの答えを聞いたエリオットは驚き、クロウは疲れた表情で声を上げた後リィンを睨んだ。
「いや、シズナは俺達”灰獅子隊”の”裏の協力者”なんだから、当然の事をしただけなんだが…………―――――それよりも今のシズナの話を聞いてもう察しているとは思うが、俺がシズナの太刀を折る事ができたのはあくまで俺の太刀がアイドス――――――”女神自身の加護が宿っている太刀”だから、折る事ができただけで、剣士としての実力はシズナの方が俺よりも上だ。――――――当然”神気合一”をした状態の俺よりも。」
「ハアッ!?」
「あの状態のリィン君よりも上とはね………やれやれ、どうやら冗談抜きで全員で挑まないと不味過ぎる相手のようだね。」
「エニグマリンクオン!みんな、決して連携を絶やさず全力で攻めるよ!」
クロウの文句に対して疲れた表情で答えた後表情を引き締めて答えたリィンの話を聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中セリーヌは驚きの声を上げ、アンゼリカは疲れた表情で溜息を吐き、トワは号令をかけ
「おおっ!!」
トワの号令に力強く答えたアリサ達はシズナとの戦闘を開始した――――――
後書き
という訳でⅦ組、月霊窟でのオリジナルイベント戦はリィン&セレーネ戦のはずがまさかのシズナ戦です(酷っ!)現在私は黎は終章に入った所です。なお、5章での共闘勢力は当然斑鳩を選びましたwwクロガネも強かったですが、シズナのもはやチートとしか思えない強さには笑いましたw特にフィールドアタックのチャージアタックで問答無用で雑魚を切り裂いていく姿はまさに”剣聖”でしたよ。(2週目する際に結社を選ぶのが勿体ないくらい(ぇ))というかシズナがリィンの”あの技”をパクった事にも噴きましたがww
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