したかったことをして
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第三章
「これがふわりだな」
「そうね」
「妹達が寂しいと思ってるとな」
「すぐに自分のおもちゃ貸してあげるのね」
「それで遊ばせて傍で見守る」
「凄く賢くていい娘ね」
「名犬だよな」
まさにとだ、洋介は両親に話した。
「ふわりって」
「ああ、こんないい娘がいるか」
「本当にそうよね」
「ドリトル先生が言っておられた」
文太は妻と息子に話した。
「妹が生まれたら泣き出したらママに教えておむつ持って来ておもちゃを貸してあげると考えていたってな」
「まあ、もうなの」
「祈里ちゃん生まれる前にな」
こう妻に話した。
「そうだったんだ」
「そこまで賢くていい娘なのね」
「それでこいつは今な」
ふわりを見つつさらに話した。
「その願い、したかったことをな」
「しているのね」
「そういうことだ」
「そうなのね」
「ふわりにとってもいいことだな」
「妹さん達と再会出来て」
「下の娘とは初対面だけれどな」
里菜とはというのだ。
「それでもな」
「再会出来てよかったわね」
「この娘達も馬鹿親共から救われてな」
育児放棄をする様な親失格な連中からというのだ。
「そしてな」
「そうしてよね」
「ふわりも再会出来た」
「いいこと尽くめね」
「結果としてな、じゃあ今度の休日のふわりの散歩はな」
文太は笑って話した。
「祈里ちゃんと里菜ちゃんもな」
「一緒ね」
「親戚からベビーカーを二台借りてな」
「そのうえでね」
「姉妹仲良くな」
「お散歩させてあげるのね」
「そうしてやろうな」
妻に笑顔のまま話した。
「絶対にな」
「そうしましょう」
「俺その日仕事だけれど頼むな」
洋介はふわりと赤ん坊達を見ながら温かい目で両親に言った。
「ふわりと赤ちゃん達のことを」
「ああ、任せろ」
「この娘達に最高のお散歩をプレゼントするわ」
「そうしてくれよ、じゃあふわり今度の休日楽しみにしてろよ」
「ワンッ」
ふわりは座ったまま一声鳴いて応えた、そうして二人が寝るまでその傍にずっといた。二人が寝ると洋介が手渡したおもちゃのぬいぐるみを咥えて自分のケージに入って休んだ。一家はそんな彼女をずっと温かい目で見ていた。
したかったことをして 完
2021・10・24
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